USソーシャルセリング業界が活性化。ボディショップがリブランディングする好機とは?

cafeglobe / 2020年10月12日 8時0分

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2017年、ナチュラ・アンド・コー(Natura & Co.)は11億USドル(約1,160億円)でロレアル(L'Oréal)からザ・ボディショップ(The Body Shop)を買収、それ以来ボディショップは企業理念の原点に立ち返ろうとしている。

かつて一世を風靡したイギリスの老舗ブランド、ザ・ボディショップは、1976年、アニータ・ロディック氏(Anita Roddick)氏が夫の単身赴任中に娘たちと自分の生計を支える手段として設立。同社は当時、自然由来でかつクルエルティ・フリーなどエシカルな原材料を使うことを優先した初の企業のひとつだった。ロレアルのポートフォリオブランドだった2006年から2017年までは製品のプロモーションに重点を置いていたが、設立44年目にして理念の根底にあった社会活動という原点、そしてストーリーテリングを再び強く打ち出している。

最近では「ソーシャルセリングやマルチレベルマーケティング・ビジネス(個人が見込み客を見つけて販売につなげること。日本ではネットワークビジネスなどの名称で認知されているこのビジネスモデルは、アメリカではメジャーであると言える)」事業のザ・ボディショップ・アット・ホーム(The Body Shop At Home)が、設立者ロディック氏によってすでに実証された戦略を取り入れている。

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新型コロナの影響でソーシャルセリングが再び活発化

ザ・ボディショップ・アット・ホームは1994年からイギリスやオーストラリアなどで展開してきたが、アメリカでは2008年の不況時に一度は撤退している。しかし新型コロナウイルスの流行により、美容関連のソーシャルセリングの動きがアメリカで活発化している。

そのひとつであるビューティカウンター(Beautycounter)は、3月にはコンサルタントの登録者数が倍増。またステラ・アンド・ドット(Stella & Dot)──同名のファッションブランドのほか、スキンケアブランドのエヴァー(Ever)やアクセサリーブランドのキープ(Keep)を運営している──も「販売員の契約が急増した」と創業者でCEOのジェシカ・ヘリン(Jessica Herrin)氏が述べている。

ビューティカウンターには約5万人、ステラ・アンド・ドットには約3万人のコンサルタントが在籍しており、ヘリン氏とビューティカウンターCEOのグレッグ・レンフルー(Gregg Renfrew)氏は、ニュー・エイボン(New Avon)と同じくパンデミックが引き起こした雇用の喪失や解雇が要因だとしている。

イギリスとオーストラリアでは、ザ・ボディショップ・アット・ホームのコンサルタントは2万7,000人にまで成長、そして今年6月以降、同ブランドのアメリカでの存在感は再びじわじわと高まりつつある。現地プログラムや顧客へのEメールでのマーケティングを通じて、ザ・ボディショップ・アット・ホームのアメリカ国内での販売員の数は、およそ90日で6,000人以上にまで飛躍した。

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コティら大手も苦戦。明暗分かれる

「ザ・ボディショップやアニータの歴史を振り返ると、特にアニータはビジネスには世界をよくする力があるということを確信していました」と話すのは、アメリカにおけるザ・ボディショップ・アット・ホームのトップを務める、ミシェル・ジョーンズ(Michelle Jones)氏だ。

「アニータが顧客へのダイレクトな販売チャネルを開拓した当時、コンサルタントたちは単に小売店を介して販売するよりも早くブランドを拡大し、より大きな影響力を持つことができました。新型コロナウイルスのせいで多くの人々が生活費を稼ぐ手段を見つけようとしているため、ザ・ボディショップ・アット・ホームはここ数か月で急成長しています。それが、私たちがアメリカでこのプログラムを展開したかった理由です」(ジョーンズ氏)

彼女は、ソーシャルセリングチャネルはロレアルにとって優先事項ではなかったと話す。他の美容関連企業もこの事業には苦戦しており、たとえばコティ(Coty)は2019年8月にユニーク(Younique)の株式の60%を売却している。

当時コティのCEOだったピエール・ロビー(Pierre Laubies)氏は「(このビジネスモデルの)弱点は比較的明白です。他の多くのマルチレベルマーケティング・ビジネスと同じように、古典的なビジネスモデルでやってきましたが、今はもう我々はすでにそのフェーズを脱したのです」と語っている。

一方でナチュラ・アンド・コーは、昨年のエイボン・プロダクツ(Avon Products)の買収で証明されたように、ソーシャルセリング・モデルを特に重視している。

アメリカでは、ザ・ボディショップは100店舗以上を展開し、自社サイトやアルタ(Ulta)などを通じた販売も行っている。ジョーンズ氏いわく、アメリカでのザ・ボディショップ・アット・ホームの立ち上げはパンデミック前にすでに計画されていたが、リテール環境がいまだ不安定なために加速したという。

さらに、イギリスとオーストラリアのザ・ボディショップ・アット・ホーム事業をみれば、このプログラムがブランドにとって十分機能すると証明されている。イギリスでは新規コンサルタントの数が前年比51%増、売上高は前年比80%増。オーストラリアではコンサルタントが135%増、売上高は前年比61%増となっているのだ。

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デジタルツールの活用が成功の鍵

ジョーンズ氏は、ザ・ボディショップ・アット・ホームを、口コミ、フェイスブックやインスタグラム、またTikTokなどあらゆるSNSを通じて、ザ・ボディショップそのものをリブランディングする好機だと捉えている。このプログラムでは、コンサルタントは79USドル(約8400円)を支払って12個の同社の製品を販売し、売れた全アイテムの20〜35%の歩合を得ることができる。

また、ユーザーと顧客の双方がシームレスな取引ができるよう、コンサルタントにはブランドと提携したEコマースサイトが与えられるだけでなく、動画やソーシャルメディアのツールなども提供している。2020年の第2四半期の決算で、ナチュラ・アンド・コーはザ・ボディショップのオンライン販売が前年同期比230%増となったと報告、デジタルがプログラムの成功の鍵を握っていると強調した。

マルチレベルマーケティング会社「ニュースキン(Nu Skin)」の社長であるライアン・ナピアスキー(Ryan Napierski)氏も、同意見を述べている。

「こうした取引は成長しています。我々のインフルエンサーは、当社のデジタル資産を活用して顧客を獲得することで生産性をさらに高め、俯瞰してみると欧米全体で収益が伸びています。インターネットを通じて単発・短期の仕事を請け負うギグエコノミーが牽引役になっているとも言えるのではないでしょうか。

またこれまで以上に多くの人々が別の収入源を探すようになってきているため、我々のマイクロインフルエンサーになれるチャンスには魅力があります。人々が小売店と肩を並べる、あるいは実質上の小売店と同じようになれるのです」(ライアン・ナピアスキー氏)

ザ・ボディショップ・アット・ホームで販売されている商品は、ブランドのトップ25のベストセラーであり、既に認知度はある。しかし、その品揃えはアルタが提供する同ブランドの商品とは重複していない。さらにザ・ボディショップ・アット・ホームは独自に、ホリデーシーズン用のアドベントカレンダーを含む限定アイテムのローンチを計画している。それによってオムニチャネルビジネスの両サイドを確実に守ることができる、とジョーンズ氏は言う。

「これは人々にザ・ボディショップを知ってもらうための方法のひとつです。国内の多くの人の間では私たちは認知度が低く、仮に知っている人がいたとしても、それはその人が昔、ザ・ボディショップのお店があった街に住んでいたことがあるとか、あるいは空港で弊社のボディバターを売っているのを見た、といったところでしょう。

私たちはもうずいぶん前にそのビジネスモデルからは手を引いていますが、Eコマースとソーシャルセリングこそが『私たちはビジネスをしているんだ!』と言える場所だと考えています」(ジョーンズ氏)

原文[Inside The Body Shop’s social-selling play for the U.S.]

PRIYA RAO(翻訳:Maya Kishida)

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