立憲・枝野氏に聞いた「選択的夫婦別姓」を実現するための3つの方法
cafeglobe / 2020年12月30日 20時0分
政治と多様性を、選択的夫婦別姓から考える——。再開した夫婦別姓の議論と、自民党内の様子を前編・中編で取り上げてきた。最終回は野党の見方、言い分だ。
北条政子は「源」姓を名乗る必要がなかった
立憲民主党の枝野幸男代表は、これまで何度も、夫婦別姓法案を野党として国会に提出した際の提案者となってきた。彼の目に自民党の夫婦別姓議論はどう映っているのか。また、野党としてどう夫婦別姓の問題に対応してきたのか。彼の話から見えてくるのは足元のリアル政治、リアル選挙の姿だ。
枝野氏は一貫して「多様性ある政治」を掲げている。そんな彼にとって、選択的夫婦別姓は当たり前のことで、「こんなことで議論をしているなんて意味がわからない」となる(ちなみに枝野氏は夫婦そろって「枝野」姓であり、選択的夫婦別姓が実現しても、そのままだそうだ)。
「夫婦が同姓になったのは、たかだか明治以来の150年にすぎないですよね。たとえば鎌倉時代、源頼朝と結婚した北条政子は、北条政子のままだった(笑)。別姓にすると家庭がばらばらになるというけれど、事実婚の家庭と法律婚の家庭の離婚率を比べてみたらどうでしょう。あるいは、戸籍が崩壊するといいますが、日本の戸籍制度によらない国際結婚をしたら、戸籍制度は崩壊するのでしょうか」。要するに「反対派は理屈じゃないんです。感情なんです。だから嫌なものは嫌、そういう人たちの考えを変えようと思っても無駄だと思う」
選択的夫婦別姓が実現するためには
自民党では、久々に選択的夫婦別姓の議論が行われたばかりだ。若手男性や女性議員などが賛成の声を挙げ始めている。それに対しても、枝野氏は冷めた見方だ。
「自民党内に構造変化が起きているとは思いません。周期的な流行りのように、別姓の議論がおこって党内でわーわーやっても、結局、反対論が勝って沈静化する。その繰り返しだと思う。今回もそれだけの話ではないですか」
反対派が考えを変えることはない。であるならば、選択的夫婦別姓が自民党で了承され、ひいては国会で法が改正されることはないのだろうか。
「選択的夫婦別姓が実現するためには、以下の3つしかないと思います。一つは政権交代をして我々が政権につくこと、二つ目は自民党の賛成派がこちらに合流して多数をとること、これも政権交代につながりますね。三つ目は(法案への賛否を党で統一する)党議拘束を自民党が外すことです。もし三番目の選択肢を自民党がとったら、国会で多数になるのは賛成派でしょう」
実は非常にセンシティブなテーマ
立憲民主党は、結党時の2017年総選挙のマニフェストにも、選択的夫婦別姓の実現を盛り込んでいる。
だが、枝野氏は、選択的夫婦別姓は選挙の争点にはならないという。2019年の参院選の際、争点にしようとしたが、選挙戦を進めるうちに「これは票にならない」と感じ、方針を変えたという。なぜか。
「選択的夫婦別姓が実現してもいいと思っている層は、少数の切実に願っている人と、あとはまあ認めるという、ふわっとした人たちからなる。後者は、投票先を決める基準にはしないんです。逆に選挙の争点にして訴え始めると、なんとなく選択的夫婦別姓が嫌だと感じている人たちを刺激してしまって、逆効果になりかねないんです」
参院選の候補者には、弁護士として選択的夫婦別姓の問題にも取り組んできた打越さく良氏もいた。枝野氏は打越氏に「できるだけその話はしないでほしい」と言ったという。「票にはならないテーマです。選択的夫婦別姓のことを積極的に言って、なんとなく嫌だなと思わせてしまう人たちがいるから、と言いました」
実は、枝野氏は自らの選挙でも、選択的夫婦別姓の話はほとんどしたことがないという。
「公約には入れていますし、隠すことはありませんが、不特定多数の無党派層の前でこちらから積極的に話をすることはないですね。やはり、それだけ微妙で難しいテーマなんです。国政でずっと実現しないくらいですから。今は、私は党の代表ですから、選択的夫婦別姓について躊躇なく発言しますが、自分の選挙だけを考えたらこんなに積極的に言わないです。推進派は、実はきついんです」
なるほど。理屈が通っている、というだけでは通用しないのが政治の世界。選挙で当選しなければ話も始まらない。選択的夫婦別姓というのは非常に繊細で微妙なテーマというわけだ。きわめて政治的な問題ともいえる。
わたしたちにできることは?
ならば、選択的夫婦別姓を実現したいと考えている一般の人たちは、どうすればいいのだろう。
「反対の議員たちの落選運動をしたらどうでしょうか。この人たちは選択的夫婦別姓に反対している人たちなんですよ、と声を挙げる。すでに、反対派の支持団体は、賛成派に対して似たようなことをしているのではないですか。生産的ではないんですが、これはしょうがないと思います」
少数派の立場で選択的夫婦別姓を推進してきた枝野氏こそが、リアル政治・選挙の怖さや厳しさ、繊細さを実感しているのかもしれない。
多様性ある政治を実現するには、リアル選挙の洗礼を受けねばならない。2021年は必ず衆院選が行われる。選択的夫婦別姓が争点になる可能性は低いかもしれないが、選択的夫婦別姓を願う人々は(反対する人々も)、自分たちのできることを考えてみたらどうだろう。
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