【就活時事#2】働き方改革関連法が成立!“定額働かせ放題”と批判された「高プロ」の本質は?

キャリマガ / 2018年7月13日 12時3分

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就職活動の面接対策に役立つ「就活時事」シリーズ第2弾は、最近話題となっている「働き方改革関連法」についてです。

「働き方改革関連法」の3つの柱とは

安倍政権が今国会での最重要課題として位置づけてきた「働き方改革関連法」が、6月29日の参議院本会議で可決・成立しました。
この法律で目指した3つの柱は、(1)長時間労働の是正、(2)多様で柔軟な働き方、(3)不合理な待遇差の禁止です。

この中でもっとも注目されたのは、推進派と反対派が厳しく対立した(2)に関連する「高度プロフェッショナル制度(以下、高プロ)」でした。「高プロ」反対派からは“定額働かせ放題”になりかねないという強い反発があったものの、2019年4月からの導入が決定しています。

メディアでも大々的に報じられた「働き方改革」、そして「高プロ」の本質はどういったものなのでしょうか。厚生労働省の柔軟な働き方に関する検討会の委員を務める弁護士の荒井太一さんに詳細を伺いました。

耐用年数を迎えつつある日本型雇用

そもそも、なぜいま「働き方改革」が推進されているのか。荒井弁護士は、その背景を「日本型雇用の限界」にあると見ています。

「日本型雇用は、正社員に対しては長期雇用を保証する代わりに、職務も勤務地も限定しないのが大きな特徴です。しかし、減少する労働人口やビジネス環境の劇的に変化によって、日本型雇用は耐用年数を迎えつつある。これを時代に合わせて是正するのが働き方改革の本質です」(荒井弁護士)

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「これまで日本の雇用慣行は、画一的な働き方をする正社員を中心に設計されていました。今回の「働き方改革」や、今回の法改正は、その前提を変えるものです。在宅勤務や兼業・副業の解禁、高度プロフェッショナル制度、同一労働同一賃金の実現に取り組むのは、雇用形態にかかわらないより自由な働き方への移行を目指すため。これは労働市場を動かすグランドデザインの変更であり、スマホやPCに例えれば、“OS”の入れ替えに相当する大きな変化と言えるでしょう」

ここで改めて、働き方改革関連法案を審議した推進派と反対派、それぞれの意見を整理してみましょう。

推進派:不公平・不公正を是正し、人材の流動化と産業の変化に対応する

日本の会社は、従業員を簡単に解雇しないことについて暗黙の保証をしています。その一方、業務の変動に対応するため、労働者はあいまいな業務範囲とそれにともなう長時間労働、異動、転勤命令などを受け入れてきました。

そして昨今の日本企業は、長引く景気低迷から脱却しはじめたとはいえ、多くの企業は雇用調整を利かせやすい非正規雇用の契約社員やアルバイトで労働力不足を補っています。というのも、企業にとって簡単に解雇できない正社員を増やすことは、将来の不景気の際に深刻なリスクを抱えるからです。非正規雇用の存在によって、正社員の雇用が守られているのではないか、という厳しい指摘もあります。

働き方改革がもたらす新しい“OS”の導入によって、雇用形態による不公正・不平等を是正し、人材の流動化と産業構造に対する変化への対応を試みること。これが政府や推進派の立場です。

反対派:正社員の雇用を守り、契約社員やアルバイトの待遇向上を

働き方改革法案の反対派は、正社員の雇用を守りつつ、契約社員やアルバイトの待遇向上を訴えました。非正規雇用の待遇改善を理由に、正社員の立場を相対的に弱める法案には応じられないという立場を貫き、政府や企業が労働者を守るための時間的・金銭的コストをさらに負うべきだと主張しています。

特に、反対派が“定額働かせ放題制度”と揶揄してきた「高プロ」制度は、両派の考え方の違いを明確に示しています。

「高プロ」はどう議論された?

高度プロフェッショナル制度とは、「一定の条件を満たした労働者に適用され、労働時間、休日、深夜の割増賃金の適用除外となる制度」です。

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政府や推進派は、高収入を得る代わりに時間にとらわれず働きたいという労働者は一定数存在しているのに、法律でそれを阻むのはおかしいと主張します。

反対派は、そもそも政府が主張する「自立した労働者」が本当に存在するのか、仮にいたとしても、将来的に年収上限などの条件が緩和され、多くの労働者が不利益を被るのではないかと、政府案に疑いの目を向けています。

「高プロ制度が実現すれば、これまでの労働法が前提においていた『使用者の意向に逆らえない弱い労働者像』とは一線を画す新しい労働者像の存在を認めることになります。労働三法が成立した当時は、『上司の指示を仰ぐことも時間拘束もなく高度な専門業務を遂行し、高い収入を得る労働者像』は想定されていませんでした。こうした働き方を認めるというのは、歴史的に見ても非常に大きな変化です。それだけに対立も大きくなっているのです」

自分事として考えることで理解が深まる

労働者の価値観は、一つに集約できるものではありません。多様な働き方が模索されている中、残業代の有無や雇用形態にばかりに目を奪われてしまっているのではないか、と荒井弁護士は懸念します。

「まずは、従来のルールではカバーしきれない新しい労働環境、価値観が育まれていることを知るべきです。もちろん反対派が指摘する懸念も理解できます。しかし高プロは、適用条件も具体的かつ厳格に定められています。過度に心配し制度そのものを全て否定する必要はないのではないでしょうか」

荒井弁護士は今回の法改正を機に、今後5年、10年かけて変わっていくと思われる働き方やキャリア構築のあり方に目を向けるべきだと主張します。

「これまで日本の労使関係は決して対等ではなく、むしろ“親分と子分”のような関係でした。働き方関連法成立に象徴される働き方改革は、そうしたパターナリズム【※】から脱却し、対等な関係を築く第一歩になる可能性があります。労働者には、自ら考えて行動することがより一層求められるようになるでしょう」
【※】強い立場にある者が、弱い立場にある者の利益のためとして、本人の意志は問わず干渉すること

つまりそれは、キャリアを自ら決定する強い意志とそれを実現するための実行力、会社と対等に渡り合う交渉力が求められることを意味します。具体的には、外資系企業で行われている職務の詳細を事前に明示する「ジョブ・ディスクリプション(職務記述書)」の締結が、日本でも当たり前になるかもしれません。

「会社の言いなりになるのではなく、自分の意志で自らの進むべきキャリアを決めるには、労働者側も覚悟が必要です。もし報酬に見合うパフォーマンスが出せなければ、別のキャリアを選ばなければならないこともあるでしょう。働き方関連法は、これまで想定されてこなかった新しい働き方を規定するものです。自分が目指したい働き方と照らし合わせていけば、自ずとニュースの理解も深まります。大事なのは表層的な現象に目を奪われず、その背後にある事実や本質に目を向けること。就職活動する学生の皆さんには、当事者として見識を深めてほしいですね」

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取材・執筆:武田敏則、編集:鬼頭佳代(ノオト)

参考

厚生労働省「働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律案の概要」(2018.07.10)

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サービス残業のクチコミ・掲示板 - みん就(みんなの就職活動日記)

お話を伺った方:荒井太一さん

森・濱田松本法律事務所 弁護士
厚生労働省労働基準局において労働基準行政に関わった初めての弁護士。事業会社における勤務経験から企業の現場にも熟知しており、労働関係法規に関する法律相談やビジネスに寄り添ったアドバイスを行う。2017年からは、厚生労働省の柔軟な働き方に関する検討会の委員も務める。

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