これって医療行為?ヘルパーができる事・できない事

けあZine / 2014年12月19日 7時0分

介護現場で「これって、医療行為?」と対応に悩む事はないだろうか?前回の「ヘルパーができる事・できない事の説明はどう対応する?」でも少し触れたが、身体介護の中でも医療行為に関係する内容についてヘルパーができる行為かどうか、その線引きは難しい。今回は介護職が行う事のできる「医療行為でないもの」について考える。

緩和されたヘルパーの医療行為とその範囲

 平成17年に厚生労働省から、医療行為についての通知が出された。「医師法第17条及び保険師助産師看護師法第31条の解釈について(通知)」を要約して紹介する。

介護職が行う事のできる「医療行為でない行為」

水銀体温計・電子体温計による腋下の体温測定、耳式電子体温計による外耳道での体温測定

自動血圧測定器による血圧測定

新生児以外で入院治療の不要な者へのパルスオキシメータ装着(注1)

軽微な切り傷、擦り傷、やけど等について専門的な判断や技術を必要としない処置(汚物で汚れたガーゼの交換を含む)

軟膏の塗布(褥瘡の処置を除く)

湿布の貼付

点眼薬の点眼

一包化された内服薬内服(舌下錠の使用も含む)

座薬の挿入

鼻腔粘膜への薬剤噴射の介助



 ただし、5〜10については、事前に本人又は家族からの具体的な依頼に基づき、医師の処方・薬剤師の指導を受け、看護師の指導を遵守した医薬品を使用し介助する事。

医師法、歯科医師法、保険師助産師看護師法、の規制対象となる行為

爪を切る事、爪やすりによるやすりがけ爪と周囲に異常がなく、かつ糖尿病等の疾患に伴う専門的な管理が必要でない場合

歯ブラシや綿棒、又は巻き綿子などによる歯、口腔粘膜、舌に付着した汚れの除去

耳垢の除去(耳垢塞栓の除去を除く)

ストマ装着のパウチにたまった排泄物の廃棄(肌に装着したパウチの取り替えを除く)

自己導尿の補助としてのカテーテルの準備、体位の保持

市販のディスポーザブルグリセリン浣腸器を用いた浣腸(注2)



(平成17年厚生労働省「医師法第17条及び保健師助産師看護師法第31条の解釈について」通知より作成)

注1:「パルスオキシメータ」は動脈血酸素飽和度(サチュレーション)を図る測定器のこと。洗濯バサミの様な機器を指先に挟んで測定する
注2:「ディスポーザブルグリセリン浣腸器」とは、使い捨てで挿入部の長さが5?6センチメートル程度、グリセリン量は成人で40グラム程度の物





 ヘルパーがこの通知を正しく理解し、介助する際に、ケアプランの位置づけと方法を確認することが当然必要となる。しかし、ケアマネジャーによっては、線引きが難しい部分を「グレーな部分」として、ケアプランに明記しようとしない場合があり、それが問題だ。

これは果たして医療行為なのか?

 実際に担当者会議の席で訪問看護師から相談があった。

 「全身清拭の際に、胃ろう部分の周りを清拭して、アズノール(軟膏)塗布の後、ガーゼを当てるかティッシュをこより状にして巻く事は、ヘルパーさんに出来ますか?」

 ケアマネジャーの意見は、(1)胃ろう部分の対応は家族にお願いする、(2)ヘルパー事業所の対応が可能なら、軟膏塗布のグレー(曖昧)な部分は、保湿クリームを塗る感覚として対応する、のどちらかだった。私はその場での判断を保留にして、上司と検討した。

 先ほど紹介した医療行為の解釈から判断すると、軟膏塗布は医療行為ではないとされるが、胃ろうに慣れていないヘルパーが対応するとなると、リスクもある。胃ろう周囲の皮膚が問題のない程度の炎症(赤み)なのか、看護師から直接指示を聞く機会がないヘルパーには、判断が難しい面もある。

 今回の場合は、ヘルパーのサービス中に家族が滞在しているケースであったため、胃ろう部分の対応は家族に対応していただくほうが良いと判断した。

 家族が対応できない場合であれば、ケアプランにきちんと位置づけたうえで、ヘルパーが対応する必要もあると思う。

 もう一つ判断に迷うケースに、軽度の褥瘡部分の対応がある。

 「褥瘡の処置は医療行為」とされ、発赤や表皮剥離の状態であれば訪問看護師が軟膏塗布の処置をしている。週に1回しか訪問看護のサービスが入っていないケースでは、1日2回のヘルパーによるオムツ交換の際に、軟膏塗布の依頼がある。独居のため、他に介助者はいない。

 利用者宅の申し送りノートには、医師や看護師から発赤の部位や軟膏の種類が書かれており、塗布の指示がされている事も多い。

 軽度の褥瘡(発赤・表皮剥離程度)の周りをぬるま湯で洗浄し、水気を拭き取り、軟膏を塗布する。このような対応を行っているヘルパー事業所も少なくないのではないだろうか。

何が医療行為でないか明確にしたうえで支援に入りたい

 ケアプランには、「皮膚状態の観察」と位置づけられており、もちろん「軟膏塗布介助」までの内容は明記されない。しかし、実際の介護サービスでは軟膏の塗布介助も実施しており、ケアプランの内容とは一部異なっている。

 こういった場合は、まず、ケアマネジャーと相談し、医師・看護師の指示を確認してもらう事が必要だ。

 褥瘡の早期回復には清潔保持が重要なため、介護職が医療行為ではない褥瘡部周囲のケアを行う提案をする医師もいる。

医療行為に当たらない具体的な方法の例

あらかじめオムツにワセリンや軟膏を塗っておき、オムツをあてる

褥瘡用の保護パッドを交換する(ガーゼ類の一種として汚染したガーゼの交換と同様の考え)

褥瘡部保護のためのラップを交換する(医師、本人、家族との同意によるケアが重要)



 この方法をヘルパーが行うかどうか、賛否両論あるかと思うが、ケアプランと一致しないグレー部分の介助を続けるより、きちんと明確にしておくほうが安全だと考える。

大事なのは、医師や看護師からの最新の指示を共有すること

 ただし、申し送りノートによる、看護師からの指示には注意が必要だ。

 医師から軟膏塗布の指示が出ていても、看護師の判断で一部外用薬の変更が可能なため、薬の変更指示は申し送りノートで済まされる事も多い。

「どの部位に、どんな状態の時に、どの外用薬を塗布するのか?」きちんと申し送りノートの指示を確認しておかないと、一週間前の古い指示のまま対応してしまう事もあるだろう。

 また、看護師も「医療行為に該当するか」が判らないまま、ヘルパーに対応を指示している場合もあるため、サービス提供責任者やケアマネジャーが知らないうちに、ヘルパーが医療行為をしてしまう事にもなりかねない。

 それを防ぐには、各担当のヘルパーが申し送りノートで指示を受け、最新の情報をサービス提供責任者と情報を共有しておく事が重要となる。外用薬の介助がある方に対し、最新の指示をどうやって把握しておくのかが、今後の課題となっている。

 在宅医療・在宅介護が整備されていく中で、それぞれの専門職が正しく制度と役割を理解し、チームとなって連携を図る事が望まれている。

 その方法の一つとして、介護職が「医療行為に当たらない介助」を安全に実施できるよう、十分なコミュニケーションを元に具体的な介助方法を見出す事が必要ではないだろうか。

けあZine

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