トレードオフする自立支援とレスパイトケア

けあZine / 2015年1月5日 7時0分

介護保険は自立を支援する制度であり、介護する家族を社会的に支えていく制度ですが、時々その2つの目的がトレードオフになってしまうことがあります。

適切な介助で、常時オムツ使用からトイレに行けるまでに

 利用者のAさんは娘さんと二人暮らし。デイサービスを利用していましたが、一時体調を崩し、寝たきりに近い状態となって褥瘡を形成してしまいました。ショートステイを利用して褥瘡を完治させ、自宅復帰したあと、デイサービスの利用を再開しました。

 常時オムツ使用でしたが、体調を崩す前のようにトイレに行けるようにと、週2回のデイサービスでトイレ介助を始めました。

 その甲斐あって、紙パッドへの排尿は減り、尿意を訴えられたときには、介助でトイレに行けるようになり、立ち上がりや移乗動作も徐々に自分の力でできるようになりました。

自立度は上がったが、結果家族の介護負担が増大してしまう皮肉さ

 しかし、ここで困ったことがおきます。自宅ではオムツ使用でしたが、トイレに行きたいと言うようになったのです。しかし自宅では娘さん1人で介助するにはかなり負担が大きいのです。また体が動くようになって、夜中にベッドから降りたりすることもでてきました。自分ではベッドに上がることは出来ないため、ここでも娘さんの介護負担は増えてしまいます。

 このようなことは施設であれば、必要な支援として自立に向けて進めていけるのですが、自宅の場合では、介護負担の増大によって家族が消耗し、結果的に在宅生活が難しくなっていくということが起きます。あちらを立てればこちらが立たずのトレードオフになってしまいます。

利用者と家族双方に向き合わねばならない現場の、正解の見えない悩ましさ

 こんなとき、どうすればいいんでしょうか?

 たぶん、マニュアルのように「こんなときはこう」というようなものはないんだろうな、と思います。個別の事例として、自立に向けた支援を継続していくことで発生するメリットとデメリット、家族の介護力にどこまで頼れるかなどを天秤にかけ、利用者さん本人とご家族とケアマネジャー等の専門的見地からの予後予測などを共有して、合意形成を図っていくしかないのだと思います。

 しかし、在宅で介護を頑張っている家族を目の前にして、さらなる介護負担を強いるのは気が引けますね。反対に、「もうちょっと頑張ってくださいよ」っていう場合もあるとは思いますが……。

 利用者と家族のどちらかだけを向いていけるような制度なら多少は楽だと思いますが、利用者とも家族とも向き合っていかなければならない。これが介護保険制度で働く現場職員たちの苦悩のひとつであると思います。

けあZine

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