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「お父さんが治してやる」娘のためにゼロから“国産カテーテル”の開発に 世界で17万人もの命を救った医療器具の知られざる秘話とは

CBCテレビ / 2024年6月29日 5時2分

CBC

心臓の大動脈内で風船のように膨らんだり縮んだりして、心臓の動きを補助する医療器具「IABPバルーンカテーテル」。今や心筋梗塞の治療に欠かせないバルーンカテーテルですが、日本人に合う国産のものが出来るまでには、ある家族のドラマがありました。

“娘の命を救いたい” その一心で医療器具の開発へ

2024年6月14日(金)から公開されている映画「ディア・ファミリー」は、生まれつき心臓に障害のある娘を救うため、ゼロから医療器具の開発に取り組んだ父と家族の実話を描いています。

主人公のモデルは、愛知県春日井市の医療機器メーカー「東海メディカルプロダクツ」の筒井宣政会長。筒井さんの次女・佳美さんは生まれつき心臓に障害があり、当時の医学では手術が出来ないため、9歳で余命宣告を受けました。

「お父さんが治してやる」娘の命を救いたい

 (東海メディカルプロダクツ・筒井宣政会長)
「娘に『もう手術はやれないそうだから、死ぬまでそのままにしておきなさい』とは言えない。できるかできないかはともかく、お父さんが治してやると」

当時プラスチック製品を作る会社を経営していた筒井さんは、娘の命を救いたい一心で、自ら「人工心臓」の開発に乗り出しました。8年の時間をかけて実用化まであと少しにこぎ着けますが、大きな壁にぶつかります。

(東海メディカルプロダクツ・筒井宣政会長)
「そこまでで8億円を使った。(ここから動物実験などで)2000億円必要と言われても、家を売ることぐらいしかできない」

結局、筒井さんは人工心臓の開発を、断念せざるをえませんでした。しかし、人工心臓開発で培った技術をいかし、新しく心臓用のバルーンカテーテルの開発を始めます。当時は欧米人の体格に合わせた大きな物しかなく、日本人に使う際に医療事故も起きていました。

(東海メディカルプロダクツ・筒井宣政会長)
「うちの子の心臓は救えないのは、分かっていた。でも、ここまで10年やってきて、やめるのも。これを改善して作れば、絶対に生きていたのにという人が大勢いる。そういう人を救いたいというのもあった」

国産初のバルーンカテーテルが完成 「また、1人の命を助けることができたのね」

1989年、2年をかけて開発した国産初の「IABPバルーンカテーテル」が完成。佳美さんも完成を喜んでくれたといいます。

(東海メディカルプロダクツ・筒井宣政会長)
「『十分やってくれたから、私のことはもういい』と。私は経営者だから『(「IABPカテーテルを)一本使ってもらったよ。売れたよ』と言うが、あの子は全然違う。『また、1人の命を助けることができたのね』と言う。人の命をすごく大事にしていたから」

1991年、父親が開発したIABPバルーンカテーテルの成功を見届け、佳美さんは23歳で亡くなりました。娘の命を救おうとする努力の末に生み出されたカテーテルは、これまでに世界で約17万人の命を救っています。

5月29日。名古屋市内で映画「ディア・ファミリー」の公開記念イベントが行われ、筒井さんを演じた主演の大泉洋さんが作品について語りました。

(筒井さんを演じた大泉洋さん)
「大切な娘を失った家族の話ではなく、亡くなっていく娘との新しい約束『自分の命はいいから、技術を多くの人のために使ってほしい』という夢を叶えるために頑張った家族の話」

新たな医療機器の開発も 娘との約束は続く

東海メディカルプロダクツは、今も新たな医療機器の開発を続けています。2023年11月に開発した新製品「オプティマルワイヤー」は、脳に繋がる頸動脈がコレステロールの塊で狭くなる「頸動脈狭窄症」の治療に使う医療器具です。頸動脈を広げる際に、コレステロールの破片や血栓などが脳に入らないようするために使われます。

(愛知医科大学病院・宮地茂特命教授)
「風船のカテーテルはもともと外国メーカーが作っていたが、3年前に突然生産をやめた。バルーンといえば、東海メディカルプロダクツが素晴らしい技術を持っているので、ぜひやっていただけないかと(開発を依頼した)」

通常5年以上かかるといわれる医療機器の開発ですが、東海メディカルプロダクツはオプティマルワイヤーを約2年半で製品化しました。

(愛知医科大学病院・宮地茂特命教授)
「日本人の体に合うデザインにしてある。1個1個に信頼がおけるのが、東海メディカルプロダクツの強み」

筒井さんは2018年、医療機器の開発を目指す企業への支援のため、3000万円の基金を設立しました。そこにも、亡くなった佳美さんへの思いが。

(東海メディカルプロダクツ・筒井宣政会長)
「みんなで命を助け合わないといけない。佳美と一緒で、自分のことだけでなく、日本の人の命を助けること、ひいては世界の人を助けることを、医療としてやるべき。『もう少し生きたい』と言っていた。内心はもっと生きたかったんですよ、あの子は。佳美とは『みなさんのためになることなら、自分のことはいい』と約束した。佳美との約束は継続してやっている。多分、喜んでくれていると思う」

CBCテレビ「チャント!」6月17日放送より

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