当選議員には胡蝶蘭 落選議員は段ボール箱の運び出し 衆院選後の“永田町のお引越し”で見えた自民党の大敗【大石邦彦が聞く】
CBCテレビ / 2024年11月16日 13時32分
衆院選で自民党大惨敗のニュースが全国を駆け巡ってから僅か3日後。私は国会議事堂の近くにある国会議員の議員宿舎で一人の前国会議員と待ち合わせをしていた。「もう仕事がないので…いつでもどうぞ」と取材時間にも制限はなかった。
愛知1区で自民党から立候補した熊田裕通前衆院議員。2012年の衆院選で自民党が民主党から政権を奪還した時に初当選した、いわゆる安倍チルドレンの一人だった。その後、小選挙区で3回当選し、地盤を守ってきたが、今回は日本保守党から出馬した前の名古屋市長、河村たかし氏に敗れた。
公示直後、「自分は派手好きなので、河村氏の立候補で全国的にも注目されてむしろ嬉しい」そう語っていた熊田氏。決して強がりではなくホンネだと感じたが、まだその時は裏金問題による大逆風と選挙モンスターの異名を持つ河村氏の底力を甘く見ていたのかもしれない。
がらんとした議員宿舎 休む間もなく引っ越し準備
議員宿舎に入ると、部屋は片付けが終わっていてがらんとしていた。落選が決まった後、支援者らに挨拶回りをし、休む間もなく引っ越しの準備を始めたという。
「国会の会期中もあまり泊まりませんでしたね」
懐かしそうに、それでいて寂しそうに語っていた。熊田氏のマイカーにはすでに荷物が積み込まれていたが、4期12年もの間、住み続けていた割には荷物は少なかった。地元にこまめに帰り、国政報告をしていたからだという。
石破総理の期待感の薄さが逆風か
議事堂のすぐ隣に位置している議員会館に行ってみると、他にも引っ越しの準備をしている前自民党議員がいた。議員会館とは衆参の国会議員の東京事務所などがある拠点で、取材などでもお馴染みの場所だ。
今回大躍進した国民民主党の新人候補 丹野みどり氏に敗れた、77歳の前議員八木哲也氏。この人も安倍チルドレンの一人だ。総裁選では石破氏を推し総裁に引き上げたが、皮肉にもその石破総理への期待感の薄さも逆風となった。
引っ越しの段ボールに…お祝いの胡蝶蘭
この衆院選は、裏金とは無縁の議員でも、有権者に容赦なく切り捨てられた。言ってみれば、12年間続いた自民党政治にNOが突きつけられたのだ。
この日、この議員会館から運び出される数多くの段ボール箱を見た。それは、自民党がいかに惨敗したかを物語っていた。議員会館の裏口からは、落選議員が地元に帰る為、引っ越し業者のトラックが行き来していたが、一方で当選議員に贈られる胡蝶蘭を積んだ業者の出入りが多かった。
衆院選の明暗が残酷すぎるほど際立っているように私の目には映った。同時に安倍政治の終焉を見ているような印象も抱いた。
愛知県で2012年に誕生した安倍チルドレンは10人。そのうち、今回の衆院選後まで残っているのは僅か2人。本人が総理でなくなっても、本人が亡くなっても継続していた安倍一強時代は、議員の数からも完全に終焉を迎えたと言っていいだろう。
選挙に勝たないと保証されぬ身分…
衆院選後の恒例行事、永田町のお引越し。ここまで大規模なのは、民主党政権交代により、自民党が下野した時以来という。引っ越しと言えば聞こえはいいが、要は追い出されるのだ。
選挙で勝たないと保証されない身分、しかし勝てば約2200万円の歳費に、使途を公開しなくてもよい調査研究広報滞在費(旧文通費)は年間1200万円など、お金の面だけでも懐事情は一変する。
しかし、これだけの大金があっても政治の世界では足りないらしく、だからこそ裏金問題は起きたのだ。
その裏金問題とは無縁だった熊田前衆院議員。しかし、有権者の厳しい審判が下った。自民党はなぜ負けたのか?ストレートに聞いた。
“国民の感覚との大きな乖離”
「国民の感覚とズレてしまっていたんでしょうね」
選挙戦の終盤で明らかになった2000万円の問題がダメ押しだったと振り返った。裏金問題で公認されなかった候補の党支部に、党本部から2000万円が振り込まれていたこと自体が、国民の感覚との大きな乖離だというのだ。
熊田さんは再起を目指し、浪人生活を送るという。名古屋にある自宅のローンも残っている中、議員としての収入ゼロの暮らしでは、この物価高の影響は確実にこたえるはずだ。庶民感覚を思い出しながら、次の衆院選に備える熊田さん。自民党に愛想を尽かしたようにも見えた熊田さんだったが、もう一度自民党の国会議員として戻ってくるという。
11月11日。私は再び国会へ出向いた。衆院選で当選した議員が特別国会に登庁するからだ。初々しい新人、激戦を勝ち抜いて戻ってきたベテランらが集った。
少数与党と多数派の野党という、絶妙なバランスの国会。有権者が国会議員を試すように突きつけた難問をどう解くのか?今こそ国会議員の資質が問われている。
取材:CBCテレビ解説委員 大石邦彦
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