「これでダメなら、それまでです」ドラゴンズ 石川昂弥の変化と覚悟【若狭敬一の竜党取材】
CBCテレビ / 2025年1月18日 6時0分
1月上旬、石川昂弥に話を聞くことができた。私は彼に変化を感じた。
毎年、シーズンの目標としてホームランの数を口にしてきたが、今年はそれを封印した。 (筆:CBCテレビアナウンサー 若狭敬一)
「30本と言っても、今まで20本も打っていないですし、結果も出ていませんから。まずは1シーズン出ることです。数字は後から付いてくると思っています」
口調は落ち着いていたが、言葉には力強さがあった。では、1シーズン出るために何をするべきか。その問いには即答だった。
「打つこと。僕に求められていることはバッティングです」
好不調の差については、明確に自己分析できている。
「差し込まれたと思っても、打球がライトのヒットゾーンに飛んでいる時は好調ですね。技術的には右の股関節に体重が乗って、ボールを打ちに行くけど、下半身はどっしり残っていて、体が開かず、バットが内から出ていて、芯で捉えることが多い状態です」
一方、不調時はどうか。
増える“不調脱却”の引き出し
「好調が続くと、どんどんインコースに投げられるんです。すると、無意識に体が開いて、右肩が先に出てきて、バットが外から出る。体重も右の股関節に乗り切らず、体が前に出されます」
不調から抜け出すにはどうするべきか。その引き出しが増えていた。
「右の太ももにゴムを巻いて、後ろに引っ張ってもらいながらのティーバッティングですね。去年、二軍に落ちた時に内山さん(内山靖允S&C)のアドバイスで取り入れました」
「あとは右の股関節に体重が乗る形を作って、メディシンボールを投げる。これは塚本さん(塚本洋S&C)のアイデアです。繰り返していくうちに徐々に良い感覚を取り戻せました」
不調時は“体にフォーカス”
不調の原因は技術にあると思う。しかし、構えや足の上げ方、スイング軌道などそのまま技術の修正のみに注力すると、かえってドツボにハマることがあると言う。
技術的な狂いは、体の不具合が原因であることが多いからだ。
「大島(洋平)さんに指摘されました。大島さんは調子が悪くなると、まず体にフォーカスするんです。例えば、お尻の筋肉が硬くなっているとか、背中が張っているとか。そこを治療したり、逆に刺激を与えたりしています。僕の場合は右足が弱ってくると、おかしくなってくる。だから、右足にゴムを巻いたり、股関節に体重を乗せる練習をしたりしたんです」
「細川さんのバッドを握ったときに『これだ』と」
バットは去年の途中から変えていた。
「2本目のホームラン(2024年8月8日DeNA戦)を打つ前くらいですね。開幕からしっくり来なくて、変えたいと思っていた頃、たまたま細川(成也)さんのバットを握らせてもらった時に『これだ!』と思いました。トップバランスで少し細め。長さは34インチで、重さは890グラム。材質は柔らかめのイエローバーチから硬いメイプルにしました。最初は違和感がありましたが、すぐに慣れました」
井上一樹監督には石川昂弥をサードに戻す構想がある。本人もウエルカムだ。
「サードを守りたいですし、守れると思っています。左膝は全く問題ありません」
「これでダメなら、それまでです」2025年の覚悟
期待の大きい選手だけに多くの指導者が多くのアドバイスを送り、石川昂も多くの打ち方を試してきた。その全てが糧になっている。
何度も何度も試行錯誤した結果、今は幼い頃から体に染み込んだ最も打ちやすい感覚を信じたいと言う。変化を感じた石川昂だったが、これだけは変えない覚悟だ。
「早くボールのラインにバットの軌道を入れる感覚、バットにボールを乗せる感覚。この2つだけは貫きたいですね。これでダメなら、それまでです」
一番変わっていたのは目の色だった。未来の大砲と言われ続けた男がついに真の大砲になる。
2025年がそんな年であって欲しい。
【CBCテレビ アナウンサー 若狭敬一】
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