ジョナサン・グレイザー監督が“本編に込めた希望”明かす『関心領域』特別映像
cinemacafe.net / 2024年5月31日 17時0分
絶賛公開中の話題作『関心領域』より特別映像が解禁された。
イギリスの作家マーティン・エイミスの同名小説を原案に、『アンダー・ザ・スキン 種の捕食』(13)のジョナサン・グレイザー監督が10年もの歳月をかけて映画化した本作。日本でも5月24日より公開を迎え、好調なスタートを切った。
アウシュビッツ収容所の隣に住んでいた同所所長のルドルフ・ヘスとその家族が壁の反対側で行われている行為から目を逸らし幸せに暮らす画のみを写し、銃声、人の叫び声などの音や気配でのみ壁の向こう側にあるアウシュビッツ収容所の恐怖が伝わる作品となっている。
そんな本作よりこの度解禁されたのは、製作者自らが本作について解説する特別映像。映画を観た人はもちろん、まだ観ていない人も楽しめる映像となっている。
映像の前半で語られるのは、撮影場所について。アウシュビッツ強制収容所所長ルドルフ・ヘス一家の物語を描くため、実際にアウシュビッツの隣で撮影を行ったというチーム。ジョナサン・グレイザー監督は「可能な限り真実に近づくことが大切だったからアウシュビッツの隣で撮影した」とリアルを追求したと語る。
アカデミー賞音響賞を獲得したサウンド・デザイナーのジョニー・バーンは、「暴力は映像では描写せずに、すべて音で表現するようにした。壁の向こう側では虐殺が行われてる。そんな空間に響き渡る音を忠実に再現するために、徹底的に調べて音作りをした」と製作の裏側をふり返る。
そして話は、劇中にサーモグラフィの映像として登場する、林檎を土に埋めていた謎の少女に及ぶ。この少女には実在のモデルがおり、アレクサンドラ・ビストロン・コロジエイジチェックという人物。アレクサンドラは監督がポーランドでリサーチを重ねている時に出会った当時90歳の女性。12歳の時に彼女はポーランドのレジスタンスの一員として、度々収容者にこっそりと食事を与えていたという。
その話を聞き、監督はアレクサンドラの物語を書くことを決意(照明を使わないと決めていたため、夜でも人の形を撮影できるサーモカメラで撮影され、彼女を単なる人間ではなく“エネルギー”として描いた、ということを別のインタビューで話している)。
アレクサンドラは映画の完成前に亡くなったが、アカデミー賞のスピーチでジョナサン・グレイザー監督は彼女に感謝の言葉を贈った。家、ピアノ、ワンピースまで、全てアレクサンドラの私物を借りて撮影したシーンで奏でる音楽は、実際にアウシュビッツの収容者であったヨセフ・ウルフが1943年に書いた「sunbeam」という楽曲。本編では黄色い日本語字幕で歌詞がでるのでその内容を注意深く読んでみてほしい。
映像の最後に監督は「私たちに似た人間でも、簡単に残虐な行為に及ぶ恐ろしさを伝えている。そんな中アレクサンドラは人間にも善意が残ってると示してくれた。そんな彼女の存在に救われたような気がした」と物語の唯一の希望の光として描いたアレクサンドラの姿に、平和への願いを込めたことを明かしている。
『関心領域』は全国にて公開中。
『関心領域』© Two Wolves Films Limited, Extreme Emotions BIS Limited, Soft Money LLC and Channel Four Television Corporation 2023. All Rights Reserved.
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