発禁小説を映画化『フィリップ』は「戦争のトラウマに苦しむ男性についての映画」監督が語る
cinemacafe.net / 2024年6月22日 17時0分
発禁処分となった、ポーランド人作家レオポルド・ティルマンドの実体験に基づく自伝的小説を基にした映画『フィリップ』が6月21日(金)より公開。この度、監督のミハウ・クフィェチンスキが製作理由について語るインタビューコメントが到着した。
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1961年にポーランドで発刊後、すぐ発禁処分にとなった原作を、戦時中から80年以上たったいま、改めて映画化した理由について、監督は「本作の時代背景である<第二次大戦>は、この映画の時代設定や舞台装置にすぎません」という。
「本当に重要なのは、物語の時代設定に関係なく普遍的な、主人公を悩ませる精神的・道徳的問題」であり、「フィリップは建築家になる夢がありましたが、戦争の運命によりホテルのウエイターになりました。この点において彼は現代のウクライナやシリア、パレスチナ、アフガニスタンからの難民の境遇と共通している」と語る。
いつの時代も、戦争によって人生を狂わされるのは、普通の人々であるという数十年経っても変わらない、世界共通の事実を描きたかったと明かし、「これは戦争映画では無い」「戦争によって孤独で疎外されたトラウマに苦しむ男性についての映画を描きたかった」と監督は述べる。
劇中、自身の容姿を武器に様々な女性を誘惑するも、恋愛に翻弄される様相も見せるフィリップ。だが「これは恋愛映画でもありません」「これは愛の欠如、愛の必要性、愛へのあこがれについての映画です」とも監督は説明する。
「フィリップは恋に落ちようと必死に努力しますが、戦争によって起こる友人たちの理不尽な死によってその感情を深めていくことができません。今は恋をしている場合ではない、彼は自分が目指していた感情を自ら破壊することを決意するのです」という。
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その心の隙間を埋めるように、ナチスの女性たちを次々と誘惑し捨てていく主人公フィリップの冷酷でシニカルで反社会、物議を醸すフィリップの行動についても「すべて壊れやすく繊細なフィリップの性格を隠すための仮面」であると断言。
「人の嫌悪感を呼ぶように見えるかもしれません」だが「フィリップは自分の内なる悪魔を克服するために、他の方法で行動することはできません。現代だったらフィリップはおそらく心理療法士の下に通い詰めているでしょうね」と、いつの時代も一番の犠牲者となる普通の人間たちの心へ思いを馳せた。
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ミハウ・クフィェチンスキ監督は、1990年代よりテレビプロデューサー兼演出家としてキャリアを重ね、21世紀に入って以降はポーランドの巨匠アンジェイ・ワイダ監督作品のプロデューサーとして、後期代表作である『カティンの森』『ワレサ 連帯の男』、そして遺作『残像』まで製作をつとめあげた。
ナチス支配下のドイツを舞台に官能的な要素を加えて本作を映画化した大きな理由のひとつとして、「ポーランドで愛する人を亡くしたユダヤ人の主人公は、そのような状況下で何を感じるでしょうか? 私は(原作者)ティルマンドの本を心理的で緻密な映画にし、トラウマから感情が凍り付いた男の孤独を研究することに決めました」と明かしている。
『フィリップ』は6月21日(金)より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、アップリンク吉祥寺ほか全国にて公開。
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