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【インタビュー】思春期“あるある”エピソードはどうやって集めた? 監督&プロデューサーが明かす『インサイド・ヘッド2』ができるまで

cinemacafe.net / 2024年8月3日 12時0分

『アナと雪の女王2』を抜き去り、アニメーション映画歴代No.1のヒット作となったディズニー&ピクサーの最新作『インサイド・ヘッド2』


人間の頭の中の“感情たち”の奮闘ぶりを描き、第88回アカデミー賞最優秀長編アニメ映画賞に輝いた『インサイド・ヘッド』(2015年)の続編となる本作では、主人公・ライリーが思春期を迎えたことにより、頭の中の感情のコントロールルームにも新たな複雑な感情たちが登場する。


前作で監督を務めた天才ピート・ドクター(本作ではエグゼクティブ・プロデューサーを務める)からバトンを受け取り、本作で初めて長編映画監督を務めたケルシー・マン、プロデューサーのマーク・ニールセンが、いかにして世界中の人々の心を掴んだこの大ヒット作が完成に至ったのかを語ってくれた。


「等身大の13歳の視点」
今のティーンエイジャーの意見を参考に


――本作では思春期を迎えた主人公・ライリーの姿が描かれていますが、マン監督はこれまでも「自分を受け入れ、愛すること」が本作のテーマであるとおっしゃっていました。


マン監督:その通りです。この映画は10代になると出てくる感情を描いていますが、私自身が10代の頃、どうだったか? と思い返した時にすぐに浮かんできたのが、当時抱いていた「自分は(いまのままでは)充分じゃない」という気持ちでした。10代というのは、自分の評価がすごく厳しくなる時期であり、自分のことを外側から見るようになる年代でもあると思います。


また他人が自分をどう見ているのか? ということもすごく気になるようにもなりますよね。それまでは、周りの人に面倒を見てもらっていたけど、自分で自分のことをしなくてはいけなくなり、大人になっていく中で、社会に自分がフィットしているのかが気になってきます。人間は社会的動物なので「周りにフィットしていないと生きていけない」という気持ちになり、「自分は社会にフィットしているのか?」「どう思われているのか?」と心配になるわけですね。


でも、それが行き過ぎると、自分に厳しくなり過ぎてしまいます。そうしたことがこの映画に出てきますが、もう少し自分に対して優しくして、自分を受け入れようということをこの映画は語っています。


ケルシー・マン監督

――今回の物語に関して、どのようなプロセスを経てこのようなストーリーになったのでしょうか? 初期段階からの変遷なども含めて教えてください。


マン監督:曲がりくねった道を進み、時に引き返したりもしながら、エピソードを削ったり、加えたり、より良い物語にするために様々な紆余曲折を経て、ここまで来ました。


ニールセン氏:最初のバージョンではライリーはアイスホッケーをやっていなくて、単に友達のグループとのやり取りがあるだけだったんですけど、それを見て「やっぱりアイスホッケーがないと寂しいよね?」という話になったんです。


マン監督:そうだったね。10代になると、いろんなプレッシャーを感じて大変になってくるけど、そのプレッシャーをSchool Talent Show(日本で言う学芸会のような催し)で感じるのはどうだろうか? とも考えたんですけど「でも、ライリーはもともとアイスホッケー選手だったよね?」と。


小さい頃からスポーツをやっていると、いろんな仲間ができるけど、10代になると、そうした仲間の存在を越えてチームをつくるということも起こるので、そういう物語もいいかもしれないという話になりました。


ニールセン氏:この映画はすごく複雑な構成になっていて、ライリーの頭の中と外といろんな世界が描かれています。ある時点で、あまりにも材料が多すぎるから、もう少し少なくした方がいいんじゃないか? という話になり、映画の中に出てくる“信念の泉”のエピソードを5回目のスクリーニングの段階で削ったんです。でも「やっぱりあった方がいい」となって、6回目のスクリーニングでもう一度、復活させました。そんなことの繰り返しでしたね。


――劇中で描かれるライリーの言動は、いわば“思春期あるある”であり、多くの観客が「私もこうだった」と感じると思います。具体的なエピソードはどうやって集めたんでしょうか?


マン監督:いろんな経験のエピソードが必要で、まずは自分たちの経験を基に考えました。10代の頃って忘れがたい思い出がたくさんありますよね。もちろん、私たちだけでなく、いろんなスタッフからも話を聞きました。ストーリーチームの半数は女性でしたが、彼女たちも自分たちが学生の頃のことを思い出しながら、物語をつくっていきました。


とはいえ、私たちはもう13歳ではないですし、僕もマークもティーンエイジャーの子を持つ父親ではあるんですけど、やっぱりいまの等身大の13歳の視点がほしいということになりました。


マーク・ニールセンプロデューサー

ニールセン氏:そこで実際に13歳から16歳の女の子たち9人を集めて、制作期間の3年にわたって、スクリーニングに参加してもらったんです。ZOOMミーティングで、スクリーニングを観てどうだったか? 共感できたか? ライリーと周囲の女の子たちの関係性を自分の周りにもあるものとして感じたか? そういうことをリサーチしました。


私たちは、彼女たちを“ライリーのクルー”と名付けたんですが、リアリティを追求する上で、彼女たちによるフィードバックは非常に重要なものとなりました。



多くの人に響く作品は「努力して、もがいてつくる…」


――本作に限らず、多くの人を魅了し、感動させる作品をつくる上で大切にしていることはどんなことですか?


マン監督:私の映像作家として仕事は「観客の感情を呼び起こすこと」だと思っています。僕自身、映画を見に行った時、映画から呼び起こされる感情に自分を浸らせるんですが、そこであまり感じるものがないという場合は、その映画があまりうまく機能していないということですし、最悪の場合、退屈してしまうこともあります。


自分が映画をつくる時、観る人のどんな感情を呼び起こしたいのか? ということを考えるようにしています。


ある意味で、私は(『インサイド・ヘッド』の感情たちのように)みなさんの頭の中にある感情の制御装置を操作しようとしているわけですね。もちろん、良い方向にね(笑)。


――言葉も文化も違う世界中の人たちに届く作品を制作するというのは、決して簡単なことではなく、大変な苦労もあるかと思います。


ニールセン氏:YES(笑)。ピクサーの作品は、平均して4年もの苦難の期間を経て制作され、完成に至るわけですけど、つくっている自分たち、そして観客の方々にも共鳴する作品をつくろうとすれば、それだけの時間が必要になります。


そのために何度も何度もつくり直すんですけど、最初の段階の話は……。


マン監督:ひどいものだよね(笑)?


ニールセン氏:そうだね(笑)。そこから、練っては壊して、また練って…というのを繰り返して、最終的に自分たちも観客のみなさんも共感できるものをつくり上げていくんですけど、そのためには時間もかかるし、才能あふれる多くのピクサーのスタッフ陣と協力体制をもって進めていくわけです。


努力して、もがいて、誰しもが人間としての根っこの部分で響くものをつくる――と同時に楽しく、娯楽的で、でも意味がある作品にしていくのです。


――日本のアニメーション作品に対して、どのような印象をお持ちですか? お気に入り日本の作品などがあれば教えてください。


マン監督:日本のアニメは大好きですし、17歳の息子は、いつも私の知らなかったアニメをいろいろと教えてくれるんです。「呪術廻戦」や「ヴィンランド・サガ」は息子から教えてもらったんだけど、大好きです。もちろん、宮崎駿監督によるジブリ作品も毎回素晴らしいですね。


ニールセン氏:ジブリとピクサーは長年にわたって良い関係を保ってきましたし、宮崎さんがピクサーのスタジオを訪れて、作品を上映し、Q&Aセッションをしたこともありました。


マン監督:この『インサイド・ヘッド2』のプロモーションツアーの最終到着地が日本だということは最高だし、この後、バカンスに入るんだけど、今回は家族も一緒に来ていて、仕事が終わったらアニメショップを巡っていろいろ収集するつもりです!


アメリカではアニメと言うと、どうしても“子ども向け”の作品だと受け取られがちなんですけど、日本では子どもが楽しめるだけでなく、大人にも真面目に受け取ってもらえて、非常に複雑なことを扱っていると思います。それはまた、ピクサーがやろうとしていることでもあります。私たちは、子どもだけでなくあらゆる人たちに作品を楽しんでもらいたいと思っています。


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