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【インタビュー】黒島結菜が明かす、難役への挑戦を可能にした「現場への信頼」

cinemacafe.net / 2024年9月5日 7時45分

獄中結婚をモチーフに、元ヤンキーの児童相談員と死刑囚との運命的な出会いを描いた人気漫画を原作に、堤幸彦監督が映像化した同名映画『夏目アラタの結婚』。人生の中のミステリーとサスペンス、人間のグロテスクな一面とそこから垣間見える感情の煌めき、人が人と繋がることの尊さを描いた異色のボーイ・ミーツ・ガール物語だ。


本作で黒島結菜は最後まで本性が見定められない不気味な死刑囚・品川ピエロこと品川真珠を熱演。可憐さやはつらつとした表情が印象的な役を多く演じてきた彼女が、共演の柳楽優弥を相手に、予想をはるかに上回る怪演で新境地を切り開き、またひとつ代表作を手にしている。


難役は現場を信頼してのチャレンジ


――原作のエッセンスが凝縮された見事な映像化作品でした。そもそも、俳優として本作に出演したい、品川真珠を演じてみたいと思った理由はどこにあったのでしょうか。


原作を読んだときに、これは難しい役だなと実は迷ったんです。でも主演が柳楽さんで、監督が堤さんだったこともあって出演を決めました。堤監督とはもう何度もご一緒していますし、柳楽さんとは八年ぶりの共演で、是非もう一度一緒にお仕事してみたいとずっと思っていました。お二人がいてくださるなら、難しい役だけれども現場を信頼してチャレンジしてみようという気持ちでお受けしました。


――この難しい役にチャレンジするにあたり、どのようにアプローチしたのでしょう。


原作を読んでいても、脚本を読んでいても、本性が全く見えない、何を考えているか全く分からないキャラクターだったので、彼女を理解するのがとても難しかったですね。ただ、監督が、目線はここ、顎を引いて、手はここで、このセリフの時に寄って行ってとか、かなり細かく動きの演出をつけてくださったので、動きがあることで真珠の考えていること、気持ちの流れがすごく分かりやすくなった気がします。


そうやって撮影しながら、少しずつ積み上げていきました。彼女の言い分に対して共感まではできなくても、ちょっと分かるなという気持ちも生まれて。すべては純粋さから来ていたのかなと思います。だから、彼女の言動のすべてを悪だと言うことはできないと感じるように。本当に素直に人と向き合っていた結果の言動かもしれない、そんなふうには思うから。だから、ただの邪悪な殺人犯という印象は最初から持たなかったですね。


――捉えどころのなかった真珠という人物像を、原作や脚本を読み進め、彼女の言動をなぞっていくことで、彼女のピュアな部分を強く感じ取るようになっていったんですね。


だから、最初の方でアラタを翻弄するシーンが結構あるんですが、そこに気持ちを持って行くほうが難しかったです。とにかく全編通してお芝居している時は必死で、撮影後は毎日ヘロヘロ。どっと疲れていたんですけど、全部終わって思い返すとすごく楽しかったです。



原作へのリスペクトを感じる映像づくり


――今回の現場で印象に残っていることはありますか?


監督はすごく朝早く現場に入られるんですけれど、監督が一人で面会室に入って、一人でセリフを言って、アクリル板を叩いたりして、その日にやるシーンを確認しているんです。それを見てとても信頼できる方だと改めて思いました。


監督がすごく考えてやっているというのを肌で感じたので、その思いに応えたいという思いがずっとありました。でも、とにかく演出のレベルがすごく高いんですよ。片眉だけ上げてと言われたりして、『ええ』と思って。一応頑張ってやってみたんですけれども、できなくて。


撮影後、監督のところに行って『大丈夫でしたか』って言ったら、『うん、努力は認める』と言われて『すみません』という感じだったんですけれど(笑)。すごく鍛えられました。柳楽さんは上手いんですよね、片眉だけ上げるとか。さすがだなあと思って。


――黒島さんも、柳楽さんも表情が、とても豊かで、良い意味ですごく漫画っぽかったですね。原作キャラクターのイメージそのものという感じでした。


監督が柳楽さんのことを“顔面芸術”って言っていました。私も堤さんの演出に応えられるよう、必死に取り組みました。


――本作ではワンシーンがとても長い場面も多く、お2人のやりとりは本作の見どころですね。


一日の撮影が2シーンだけということもありましたね。特に拘置所の面会室とか裁判のシーンとか。堤監督は今回、長いシーンを一連で撮っていらして、裁判のシーンなどは特に、最初から最後までやってみようという感じでした。やはりワンシーンを一連で撮れたのは、わかりやすく現場が進んでいくので有り難かったですね。


――裁判のシーンのあの臨場感というのは、皆さんの緊張感が反映されていたんですね。


そうですね。それと寄りのシーンがすごく多かったんです。こんなに寄るんだ、こんなにカメラ近かったこと今まであったかなというぐらい(笑)。どこを見たらいいんだろうと。


あと、臭いを嗅ぐシーンが多かったのですが、あらためて考えてしまうと意外と難しくて。監督が息遣いを大切にされていたので、別で音だけ録音することもありました。この作品ならではだと思います。


――原作への敬意も感じつつ、映像でなければできない表現を見事に使った作品だと感じました。黒島さんから見て、ここは映像作品『夏目アラタの結婚』ならではの面白さだとどんなところで感じましたか。


カット割りもそうだし、音楽もそうですね。音楽は昔のものも使われていたし、物語の疾走感や、その時のムードを後押しする、とても素敵な演出で、これも映像ならでは。漫画で、真珠が面会室のガラスを割る、壁と天井がぎゅっと迫ってくるなど、キャラクターの心理状態を表わすシーンがありましたが、それがちゃんと映像で表現されたところも凄いと思いました。原作へのリスペクトをすごく感じる映像づくりだと感じます。



観た方が自分なりにジャンルを見つける作品


――完成版を観てどう思われましたか?


自分で演じたものなのに、自分じゃないような感じもするし、すごく不思議な感覚を覚えました(笑)。確かに自分で演じたんだけれども、当時のことをあまり詳しく思い出せないというか、覚えてないというか。本当に必死すぎたんですね。


――グロテスクな表現で人間の闇の部分を描きつつ、その中から人間の強さや美しさ自由さのようなものが描かれていた気がします。狂気的な演技に気持ちを持っていくのが大変だったとのことですが、どのような心構えで演じていらしたのでしょうか。


原作にもあるアラタの「寂しいから一緒に生きてほしいってだけなんだ」というセリフが印象に残って。誰かを好きになるのって、すごくシンプルなことでいいのかなという思いが頭の片隅にありました。だから、ただこの人と向き合う、ちゃんと人と人として会話する、そういう部分を意識していました。


アラタに向き合う気持ちを常に心のどこかに持っていれば、言葉や態度で彼を翻弄したり、嘘を言ったり、言葉がめちゃくちゃでも、成立すると信じて演じていました。


――アラタを翻弄するのも彼と向き合いたいがための、真珠なりの多彩なアプローチであると捉えていらしたということですね。


そうですね。でも、全く知らない死刑囚の真珠に、いきなり結婚しようなんて、アラタはよくあの一言が言えたなと思いますね。普通に覚悟がいりますよね。怖いし。獄中結婚するなんてアラタはすごいなと思いました。でも、2人にしかわからないことがいっぱいあるでしょうね。


――様々な要素が入り交じった本作はジャンルを特定できない作品という印象があります。黒島さんなら、本作をどのように表現しますか?


難しいですよね。私もこの映画を何て表現したらいいのかわからなくて。新ジャンルっていうジャンルです(笑)。サスペンス要素あり、エンタメ要素あり、恋愛要素もある。ある人がサスペンスとホラーとラブストーリーの造語で、“サホストーリー”って言っていて、それは確かに新ジャンルに聞こえるけれど、ただ覚えられない(笑)。観た方それぞれが自分なりにジャンルを見つけていただく、そんな作品だと思います。


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