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北野武監督「暴力もお笑いも感情を揺さぶるもの」ヴェネチアで世界初上映『Broken Rage』を語る

cinemacafe.net / 2024年9月8日 14時45分

北野武監督と浅野忠信、大森南朋が、第81回ヴェネチア国際映画祭アウト・オブ・コンペティション部門(特別招待作品)にてイタリア現地時間9月 6 日(金)に世界初上映されたAmazon Original映画『Broken Rage』の公式記者会見とレッドカーペット、公式上映に参加した。


北野武が監督・脚本、ビートたけしとして自ら主演を務める本作は、北野監督の構想をもとに、「暴力映画におけるお笑い」をテーマに制作。


前半では、警察とヤクザの間で板ばさみなった殺し屋が生き残りをかけて奮闘する、裏社会を舞台に繰り広げられる骨太のクライムアクション。一方、後半は、同じ物語でありながら、前半と同じ物語をなぞるコメディタッチのセルフパロディとなっている。


「映画の<間>じゃなくてインターネットの<間>になった」


世界初上映に先立って行われた公式記者会見とレッドカーペットには、北野監督、浅野忠信、大森南朋が登場。


世界中から100名以上の報道関係者が詰めかけ満員となった公式記者会見で、北野監督は「劇場の人向けではなくTV画面で観る人向けていままでやってみたかったことをテストでやってみた。気楽に撮ってみたら、まさかこんな(ヴェネチアに来る)ことになるとは。もっと真剣にやるべきだったな」と作品が生まれた経緯を“北野節”を交じえて語り、会場を沸かせた。


62分の尺の中で2部構成となっている本作について、「実際にインターネットをみたりして意外に規制が外れて『よくこんな悪口が言えるな』と楽しくみているが、スピード感に飲まれているのか、(本作の編集にあたり)映画の<間>じゃなくてインターネットの<間>になった」と、実験的な作品になったことを明かす。


北野監督の新たな挑戦を感じられる中でも、「暴力もお笑いも感情を揺さぶるもの。人に対する衝撃という意味では、お笑いも暴力である。暴力的なものなのか、愛なのか、日常的なものなのか、観る人によって違うのは映画や絵画などのアート。人が気付いていないことを、これが暴力だ、これが愛だとピックアップするのが大事なんだと思う」とコメント。


スタンダップコメディアンからキャリアを始め、お笑いの頂点に立ちながら、世界有数の映画監督としていまなお活躍する北野監督だからこその観点で<暴力におけるお笑い>というテーマについて熱弁した。


浅野忠信&大森南朋は「映画界を引っ張っていく日本の役者」


また、浅野は北野監督との仕事について「武さんのような、違うところで活躍されていた方が映画に来て、まっすぐな目で我々に向き合ってくださるっている気がするんですよね。そうすると他の映画監督とは全然違う要求をされるので、役に対して応えていく作業を現場でしていかないと北野監督が認めてくれないということがわかったので、役に対する取り組み方が変わったなと」と明かす。


「前作の『首』にしても今回の(Broken Rage)にしても常に新しいことにチャレンジしている姿勢も含めて俳優として学ぶことが多かった」と続けると、大森は北野組の撮影現場について、「武さんの横にずっといることが出来て、浅野君と一緒にお芝居できて、撮影の日々は本当に毎日楽しかったです」とふり返る。


「(後半のパロディパートの撮影では)生意気ながらも『武さんにもちょっと笑ってほしい』という気持ちで撮影に挑んだんですけど、なかなか出来なくて苦労しました」と話した。


北野監督の新たな挑戦に応えた役者、浅野・大森について監督は、「この二人は、おれが将来すごく期待している人たちなんで、すごく一生懸命にやっていただいて、いずれは映画界を引っ張っていく日本の役者さんだと思ってますんで、みなさんも心に留めておいてください」と現場の海外メディアに向けて話すと、会場からは拍手が。


記者会見終了後には、北野監督が記者たちからサイン攻めにあうシーンもあり、その後行われたレッドカーペットでも記者たちからの熱烈なキタノコールに迎えられた。


北野監督、スタンディングオベーションを6分で自ら制止


公式上映が行われたメイン会場のSALA GRANDEには、北野監督の新作を待ちわびたファンが世界中からヴェネチアに集結、1,032席が埋め尽くされた。上映中は笑いと拍手の渦が起き、世界中のファンが歓喜。


上映後、熱狂に包まれた観客からは惜しみない拍手と歓声が送られ、スタンディングオベーションが6分を過ぎたところで北野監督は照れくさそうにそれを制止。世界初上映を終えた浅野は「お客さんにものすごくウケていたのでホッとしましたし、監督も喜んでいらっしゃいました。僕が日本の試写会で見た時に感じた『おもしろい!』という感覚が正しかったことが確認できてよかったです」とコメント。


大森は「イタリアのファンの方は北野監督の世界観をよくご存じなのだと思いますが、こんなにも愛と喜びを持ってこの映画と向き合っていただけるんだと思い、非常にうれしかったです」とそれぞれ喜びを語った。


初上映後の北野武監督のコメント


ヴェネチア国際映画祭には何度も来ているけど、今回は、その中でもトップ3に入る程反応が良かった。『HANA-BI』の時よりもスタンディングオベーションはこっちのほうが長くて、面積とか体積で言えば、今回のが一番良かったなと思います。『Broken Rage』はあまりにも映画らしくない、冒険した作品なので「大丈夫かな?」と思ったけど、反応がすごく良かった。


ヴェネチア国際映画祭は、映画では無名だった武にグランプリをくれたので、自分たちが育てたという感覚を持ってくれてるんじゃない? ヴェネチアでグランプリを獲っても、あまり進化のないことをやっていたらファンに飽きられちゃうから、またチャレンジしてるところを見せないと。1本1本、ヴェネチアのファンがこの映画を見たらどう思うか?ということも意識しながら作ってます。


Amazon Original映画『Broken Rage』は2025年、Prime Videoにて世界配信予定。


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