【インタビュー】高橋文哉、田中圭からも学んだ“座長の在り方”「あのときの意味を再認識」
cinemacafe.net / 2024年9月20日 7時45分
高橋文哉と田中圭が、4年ぶりに再共演を果たした。「ブラッシュアップライフ」の水野格監督がオリジナル脚本を書き下ろした映画『あの人が消えた』だ。高橋は担当先のマンションで巻き起こる事件から住人を救おうとする配送業者・丸子を、田中はお調子者に見えて、丸子を何かと気にかける先輩・荒川に扮している。
初共演時、座長としての背中を見せた田中と、座長として迎え入れる立場にまで成長した高橋。「経験」をテーマに、それぞれの想いを語っていただいた。
作品が重なる際の役への向き合い方
――高橋さんと田中さんの初共演は2019年のドラマ「先生を消す方程式」ですね。教師と生徒という役柄でした。
高橋:僕が初めて学生役を演じたのが「先生を消す方程式」でした。それも相まって、(田中)圭さんには先生のような先輩のような、大好きなお兄ちゃんのようないろいろなものが交わった感覚があります。
田中:ただ、教師と生徒といっても、僕の役はとにかく嫌われて殺されそうになる役でした。役柄もあって当時はそこまで会話も無く、偶然プライベートで会ったときも一言二言挨拶して終わりだったので、いつの間にこんな信頼感が生まれたのか不思議に感じております(笑)。
――そうだったのですね。田中さんは『あの人が消えた』制作発表時、「高橋文哉くんが主演とのことで、なんとか参加したいなと思っていました」とコメントされていました。
田中:ちょうどそのとき自分が主演のドラマに入っていたので、タイミング的に難しいかと最初は思っていました。ただ主演が(高橋)文哉くんと聞いて自分に出来ることがあるならなんとか参加したい、という気持ちになりました。
高橋:圭さんが出演して下さると聞いて、嬉しかったです。より一層気合が入りました。
――ちなみに田中さんが働き方を変えたきっかけは、どういったものだったのでしょうか。
田中:僕はかれこれ20年くらい作品を重ねる働き方をしてきました。撮影期間が重なっているため、1つの作品が終わって次の作品が始まるまでに空きがない状態をずっと過ごしてきて、半年間休みがないときもありましたが、その方が自分の性に合っていたんです。
ただ年齢を重ねて、作品への出方や役に対する自分のアプローチの感覚が変わってきたこともあり「一つひとつに向き合う形でもいいのではないか。まずは1回やってみよう」と思い立って変えてみました。今は休む時間も増えて、バランス良く過ごせているなと感じ継続しています。
――高橋さんは作品を重ねる際、どう切り替えているのでしょう。
高橋:意識的に切り替えることはせず、勝手に切り替わると信じて取り組んでいます。
例えば同時期に2本の作品に取り組んでいるときは、台本を持ったら切り替わるように身体が自然となっていきました。また、僕は作品と作品の間が数日空くことが多いので、その間に台本を一気に読んで集中を高めるようにしています。1つの作品に参加しているときに別の作品のお話をいただいてその台本を読む、といったことはありますが、それ以外では基本的に他の台本は読まないようにしています。読むと別の作品のことが頭に入ってきてしまうからです。
なるべくいま入っている作品以外の情報は遮断して、次の作品のクランクイン数日前に一気に台本を読むことで切り替えている気がします。
――1つの作品に入っている際は、例えば別の映画なども観ないのでしょうか。
高橋:家でドラマを観たりはしますがなるべく抑えていて、映画館に足を運んだりは基本的にしないようにしています。観たい映画があったら「クランクアップしたときにまだ劇場でやっていたらいいな、ロングランしていますように」と祈っています。
――そうした我慢も、すべてはお芝居のためになのですね…。
高橋:そうですね。これはもう自分の勝手なルールといいますか、思い込みから生まれています。
田中:1つの作品に取り組んでいるときに他の刺激を入れたくないのはすごくよくわかる。僕も自分では気づいていないだけで、マイルールがあるのかもしれないです。
“座長”としての在り方とは?
――高橋さんが「先生を消す方程式」の際に、田中さんから学んだ“主演の在り方”はありますか?
高橋:スタッフさん・キャストさん含めたコミュニケーションの取り方、空気感の作り方でしょうか。生徒役も数十人と多く、緊張感が流れる瞬間もあった現場でしたが、圭さんが教壇に立って和ませる姿を見てきました。そのときはまだ気づけていませんでしたが、自分が主演をやらせていただくようになってあのときに圭さんがやって下さっていたことの意味をちゃんと再認識できるようになってきた気がします。
田中:今回、文哉くんから座長としての頼もしさを感じました。タイトなスケジュールの中でも嫌な顔一つ見せず、まっすぐに自分の役と作品、そして現場に向き合っていました。だからこそスタッフさんも他のキャストも「ついていこう」「文哉くんの負担をちょっとでも減らしたい」と思えたのではないかと思います。色々なタイプの座長の在り方がありますが、文哉くんらしさと年齢やキャリアを考えたバランス的にもとても素敵だなと感じました。
――田中さんご自身は、座長としての臨み方をどのように実践されているのでしょう。
田中:僕は基本的に、みんなが楽しくやる気になってくれるような現場づくりを目指しています。どの現場も、キャストだけでなくスタッフさんもみんな大変だと思うんです。様々な大変な思いをそれぞれがするなかで、結果が出ないこともあります。それでもみんながこの仕事を続けるのは好きだからだと思っているので、その原点を思い出せるような現場づくりは心がけています。
高橋:僕は今回、キャストの皆さんとたくさんコミュニケーションを取れたわけではありません。そんななかで、スタッフの皆さんが少しでも笑ってくれて疲れが取れるといいなと思い、なるべく自分から話しかけるようにしていました。
田中圭、高橋文哉の「40代での変化」に興味
――前回の共演から4年経ち、お互いに変化を感じられたのではないでしょうか。
高橋:圭さんは変わらないなと思いました。自分が19歳のときに抱いていた包容力が数年ぶりに蘇り、背筋が伸びた気もしたし、逆に肩の荷が軽くなるような感覚もありました。
田中:文哉くんは元々の可愛らしさや真面目さは変わらず、経験を積んだことで顔つき一つとっても違いましたし、自信があろうがなかろうが主演としてここに立つんだ、という意志が伝わってきました。4年前よりさらにお芝居が好きになったんだろうな、という印象も受けました。
僕としては、悪い変わり方をした文哉くんも見てみたかったのですが…(笑)。「俺はスターだぞ。田中遅ぇな」みたいにわかりやすく変わっていないかなと期待して現場に臨んだら、全くそのようなことなく相変わらずいい子でした(笑)。文哉くんの中にキャリアが蓄積されているんだなということがわかりました。文哉くんが調子に乗るには、あと6年くらいかかるかもしれない…(笑)。
――ちなみに田中さんの19~23歳頃の想い出はいかがでしょう。
田中:バイトの想い出が強いかもしれません。仕事がないときはバイトに明け暮れていました。いま振り返ると大変でしたが、あのときはあの時で楽しい苦労をしていたなと思います。
同じ19~23歳でも、文哉くんと僕には天と地ほどの差がある気がします。僕の19歳当時は息の仕方もわからないのに川の底を歩いているような時期でしたし、もちろんそういうものも込みで経験になりましたが、芸能という仕事における23歳までの経験値でいったら文哉くんは圧倒的です。そのぶん、文哉くんが僕と同じ40代に入ったときにどう変化しているかには興味があります。
撮影現場においての対応力
――おふたりは『あの人が消えた』の現場において、ご自身が事前に抱いていたテイストやトーン、テンションが違うかもと感じたとき、瞬時に切り替えたと伺いました。こうしたスキルは、やはり経験によって培われたものでしょうか。
田中:経験は大きいと思います。やっぱり、自分ができないことを言われても対応できません。どんなリクエストが来ても対応できるようになるためには経験を積む必要があると思います。ただ基本的にはその人の性格だとも感じます。
高橋:確かにそうですね。
田中:役者には合わせることが得意な人、理解力が高い人、理解していなくても感覚で出来てしまう人もいますし、もっと言うと「合わせない」タイプの人もいます。もし文哉くんが合わせない人だったら切り替えなかったでしょうし、性格による部分も大きいように思います。
高橋:僕はこの役においては、とにかくスポンジのように吸収する存在でいなければと思っていました。自分としても、この現場で主演を務めさせていただくのがどれだけ責任のあることなのかを意識していないといけないと感じていましたし、丸子も後半になるにつれて顔つきが変わっていくように作り上げたいと思っていたので、他の役よりは受け入れ態勢ではありました。
▼高橋文哉
ヘアメイク:KATO(TRON)
スタイリスト:丸山晃
▼田中圭
ヘアメイク:岩根あやの
スタイリスト:荒木大輔
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