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【インタビュー】70年代テレビ番組が舞台のホラー『悪魔と夜ふかし』監督が明かす「より現代性を帯びた作品」

cinemacafe.net / 2024年10月5日 11時0分

1977年のハロウィン、深夜のトークショー「ナイト・オウルズ」の生放送中に怪異が起こった――。映画『悪魔と夜ふかし』は、全米を震撼させた衝撃映像とその舞台裏に迫ってゆくという設定で描かれるファウンド・フッテージ・ホラーだ。


ほぼリアルタイムで展開するストーリー、ポップなトークショーのセットで起こる超常現象、映画ファンにはレトロで懐かしいホラー演出。全編にさまざまな仕掛けが施された本作は、Rotten Tomatoesで97%フレッシュという高評価を獲得した。


監督・脚本・編集は、オーストラリアが生んだ鬼才コリン&キャメロン・ケアンズ兄弟。鮮やかでクリエイティブなホラー創作の秘密を聞いた。


挑戦的なアイディアが生まれた背景


――「生放送のトークショーで超常現象が起こる」というコンセプトはどのように生まれたのでしょうか。


コリン:僕たちは、当初からひとつのロケーションで撮影できるホラー映画を作ろうと考えていました。過去に低予算ホラー映画を2本撮った経験から、次回作も同じく少人数のキャストと単独のロケーションでなければならないと考えていたんです。


そのなかで少々変わったものに挑戦したいと考え、「テレビのスタジオが舞台のホラー映画」というアイデアを思いつきました。僕たちは2人ともテレビの世界で働いたことがあるので、生放送がどんなもので、いかにストレスフルで、また恐ろしいかを知っています。そのとき、刻々と時間が過ぎてゆくテレビの生中継はサスペンスの物語にふさわしいと思いました。


そこに「スタジオに幽霊が出たら?」「悪魔が大衆にメッセージを伝えるのはどうか?」というアイデアを加え、少しずつ形にしていったのです。脚本を書くのは大変な作業で、時間もかかりましたが、いいアイデアだと思いました。


――ファウンド・フッテージ/フェイク・ドキュメンタリーの形式でストーリーを語ろうと決めたのはなぜですか?


キャメロン:この物語に最もふさわしいと感じたからです。はじめはトークショーの形式を忠実に守るつもりで、プロローグを用意せず、映画の冒頭からいきなり番組を始めていました。しかし脚本を書き進めていくと、プロローグがないために情報や説明を詰め込まなければならず、ストーリーに悪影響を与えることがわかってきた。


そのときに「物語においてベストな選択は?」と考えた結果、ドキュメンタリー形式が最良の解決策だと思ったのです。ストーリーテラーとして多くの可能性を開きつつ、いくつかの情報を隠しておくことでサスペンスを生み出せる。説明過剰なセリフで観客に負担を強いることなく、映画に必要なリズムを作ることができました。


コリン:(フェイク・ドキュメンタリーだと)劇中のトークショーがより直接的でインパクトのあるものになります。ジャックがカメラに向かって話していれば、この映画を劇場で観るのか、あるいは自宅から配信で見るのかは関係ありません。実際にテレビでトークショーやバラエティを見ているのと同じ感覚になれますよね。そのほうが劇的かつ効果的、かつ私たちと皆さん、劇中の観客がジャックとの関係を築きやすくなると考えました。


70年代を選んだのは「説得力が生まれるから」


――テレビ番組の文法でホラー映画を作ることにはどんな難しさがありましたか


キャメロン:もちろん限界があることはわかっていました。緊張感を高めるために恐ろしい音楽をかけることはできないし、ジャンプスケア(突然の大音量で観客を驚かせる演出)に頼ることも、背後からいきなり人を飛び出させることもできない。


しかし、その限界を最大限に利用することにしたんです。番組のセットは明るく、ほとんどの場面でハッピーなジャズが流れている…そうした要素にひねりを加えたり、覆したりできれば、それは非常に強力な武器になる。この形式だからこそできたこともあると思います。


――映画のプロローグで、70年代は「不安と不信、恐れと暴力の時代」だと語られています。現代とのリンクを思わせる要素でもありますが、70年代を選んだのはそうした理由もあったのでしょうか?


コリン:(プロローグの内容と)ここ数年の出来事が、深い関連性にあると感じてもらえることで、この映画はより現代性を帯びた作品になったと思います。


しかし果たして、世界から混乱や悲劇がなくなったと感じられる、あるいは「誰もが仲良しで幸福だ」と思えるような10年間は過去に存在したのか……。これらはいつでも、どこにでも当てはまることであり、時折アメリカで起きていることなのです。


キャメロン:脚本を書き始めたのは2013年ごろで、本格的に執筆を進めたのは、ちょうどドナルド・トランプが政権を取ったころでした。当時はソーシャルメディアが普及し、「誰もが一夜で有名になれる」という考え方が広がった時期でもあった。脚本を書くときは必ず周囲の出来事に影響を受けるので、無意識のうちに、また明白ではない形で、当時の空気が反映された部分もあったかもしれません。


コリン:しかし70年代を選んだのは、そういった理由よりも、作品の題材やテレビ番組の内容に説得力が生まれると感じたからです。80年代に悪魔的儀式虐待(悪魔崇拝者の儀式で子どもたちが身体的・性的虐待を受けた事件)が告発される以前、人々は悪魔や宗教をきわめて真剣に受け止めていました。ヒッピー以降・ニューエイジ思想の時代には、南アメリカのジョーンズタウン(カルト教団の設立した町)で数百人がジュースに毒物を混ぜ、喜んで自殺したこともあった。人々が宗教やスピリチュアル、悪魔崇拝の限界を求める、非常に奇妙な時代だったんです。


名作映画へのオマージュも


――本作では『エクソシスト』や『キング・オブ・コメディ』など、当時の名作映画にもオマージュを捧げていますよね。


コリン:70年代は、僕たちの大好きな映画やテレビ、音楽が生まれた時代でもありました。だから70年代後半を舞台にする以上、『エクソシスト』と『キャリー』、また『キング・オブ・コメディ』や『ネットワーク』、そしてデヴィッド・クローネンバーグの『ヴィデオドローム』といった傑作を参照しないわけにはいきません。


これらはジャンルを問わず素晴らしい映画であり、今回目指したテーマにも明らかに関係している作品です。最終的には独立した映画を作り上げなければいけませんが、僕たちが影響を受けていることは誰の目にも明らか。映画に対する愛情を、恥じることなく表現しようと思いました。


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