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【インタビュー】マッツ・ミケルセン「だからこそ自由」“声”の表現で得た気づき

cinemacafe.net / 2024年12月20日 17時15分

2019年の『ライオン・キング』で弟スカーの毒牙にかかり、息子を残して世を去ったムファサ王。そんな彼がいかにして王となったのか? そして、スカーはなぜ兄に刃を向ける存在となったのか? そのすべてが明かされる『ライオン・キング:ムファサ』で物語の鍵を握るのが、マッツ・ミケルセン演じる敵ライオンのキロスだ。


さまざまな役に取り組んできた“北欧の至宝”はキャラクターにどう息を吹き込んだのか、12月の日本を満喫する彼に話を聞いた。


歌唱シーンは「少しだけ怖かったけど…」


――本編では、キロスのすべてが語られるわけではありません。マッツさん自身の中に、演じる上で大切にしたバックストーリーはありますか?


キロスの背景に関しては、バリー(・ジェンキンス監督)と少し話し合う程度に留めた。ただ、キロスがライオンの中でも異質の見た目なのは明らかで、動物界で生きるのが困難だったことも容易に想像できる。殺されるか、拒否されるかの中で、はぐれ者として生きる道を選んだんだ。


だからこそ、彼と同じ境遇にあったり、別の理由でのけ者にされた仲間を受け入れることで、自身のプライドを築き上げたのだとも思う。でも、その一方、はぐれ者としての生き方をやめたい思いも心のどこかに抱えていたんじゃないかな。


――そんなキロスの胸の内を観客は歌を通しても知ることになりますが、オファーを受けたとき、歌唱シーンがあることは決まっていたのですか?


最初にバリーとSkypeで話したのだけど、30分ほど経った頃には歌うシーンがあるのだと分かった。「歌える?」と聞かれたからね。僕の答えは「ノー」だったけど(笑)。でも、「とりあえず何か歌ってみてほしい」と言うから、スマホに録音した音源を送ったら喜んでくれて。なので、覚悟を決めて頑張ることにしたんだ。


――映画の中で歌うのはどんな体験でしたか?


少しだけ怖かったけど、周りがサポートしてくれたし、いい雰囲気で取り組むことができた。レコーディングを行ったアビー・ロード・スタジオがすごく素敵でね。それに、歌うと決めたからには思いきり歌わないと。


――ミュージカルはお好きなんですか?


大好きだよ。ダンサー時代はミュージカルにもたくさん参加したし。ただ、ソロで歌うのは初めてだった。




“声を通しての表現”で体験したこと


――来年日本公開の『愛を耕すひと』もそうですが、役の性格が寡黙だったり、作品自体が台詞を抑えたテイストだったりと、マッツさんが演じてきた役には台詞以外の表現を求められるものも多い印象です。


『ヴァルハラ・ライジング』に至っては台詞が全くないしね(笑)。『愛を耕すひと』に関して言うと、物語の舞台が18世紀なのも大きいと思う。当時の人たちは現代に生きる僕らほど、なんてことない会話を交わすようなことがなかった。でも、作品によっては膨大な台詞量に悩まされたこともあるよ。


――もちろんです。ただ、台詞以外の表現にも長けていますよね。


ありがとう(笑)。


――そして、今回のキロス役は表現の中心に台詞があります。演じる上で違いは感じましたか?


それはすごく感じた。僕たち役者は常々、カメラの前に立っている。言ってしまえば、カメラの前での姿が最大のツールなんだ。その点、本来なら声は2番目くらいのツールなのだけど、今回は声を通しての表現が求められた。


おかしなことに、だからこそ自由でもあったのだけど。もし僕が収録している姿を見たら、どれだけクレイジーな動きをしていたか分かるよ(笑)。動き回ったり、大袈裟に腕を振り上げたりしてね。そんなことは、カメラの前では絶対にしない。でも、そうすることに解放感を覚える自分もいたんだ。


――『ライオン・キング:ムファサ』はディズニー史上、最も温かく切ない“兄弟の絆”の物語ですが、マッツさんの兄ラース・ミケルセンさんも素晴らしい俳優ですね。


プライベートのことは話さないようにしているのだけど、これだけは教えてあげる。僕は兄が大好きで、愛している。兄としてだけでなく、人として素晴らしいんだ。


――今や2人ともディズニーファミリーです。


そうだね! 兄も『スター・ウォーズ』の世界にいるから。



影響を受けたスコセッシ&デ・ニーロ作品


――家族関係を含め、『ライオン・キング:ムファサ』で観客はムファサのルーツを知ることができます。俳優マッツ・ミケルセンさんのルーツを語る上で欠かせないものは?


やはり、僕のルーツには映画があると思う。多くの人たちと同様、僕もいろいろな映画を見て育ったから。そして、監督や俳優から明らかに大きな影響を受けてきたのだけど、1つ挙げるとするなら、70~80年代のマーティン・スコセッシとロバート・デ・ニーロからは多くを学んだ。あの時代に彼らが組んで残したすべての作品が傑作だったと思う。


――マッツさんにとっての“人生の1本”は?


『タクシードライバー』だね。スコセッシ&デ・ニーロの中でも特に傑作だと思う。あと、『雨に唄えば』は子供の頃から今まで変わらず大好きだし、クシシュトフ・キェシロフスキの『デカローグ』も。すでに1本じゃないけど(笑)、黒澤明を外すわけにもいかない。彼の作品を見ていると、違う世界に吸い込まれた気分になるんだ。映画作りの素晴らしさも教えてくれるしね。


――『雨に唄えば』を見て、いつか自分も映画の中で歌いたいとは…。


思わなかったし、それは話が違う(笑)。歌が得意じゃない人だって、ミュージカルは好きだろう? あんなにもチャーミングな作品だったら、なおさらだよ。


――ですね(笑)。マッツさんは出演作選びにおいては監督の存在が大きいと常々おっしゃっていますし、今も名匠たちの名前が出ました。今回、バリー・ジェンキンス監督との作品づくりはどんな体験になりましたか?


本当に素晴らしかった。僕たちは話し合いながらシーンを作っていったわけで、通常の撮影とは勝手が違ったけど。どんな作品に仕上がるか想像もつかなかったから、俳優は監督を信頼するしかない。そんな僕らにバリーは見事なインスピレーションを与え、上手く導いてくれた。それに、人柄もいいんだ。すごく優しくてね。だから、彼との出会いは僕にとってのハイライト。Skypeでの出会いだけどね(笑)。


――次は実写作品でもぜひ。


僕もそれを心から望んでいる。バリーにそう伝えておいてくれるかな?



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