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石原さとみ「自分に飽きた」7年前からの再出発 監督に直談判してつかんだ主演映画で「クランクインからパニック」

シネマトゥデイ 映画情報 / 2024年4月24日 6時32分

 これまでのイメージが壊れるリスクへの恐怖はなかったのかと問うと「まったくなかったです」ときっぱり。「広がるということしか考えなかったです。出産を経験したこともあって、沙織里の心はトラウマになりそうなぐらいにわかりました。外見に関しては監督と相談して、産後の抜け毛や肌荒れや体形の崩れをそのまま活かすようにしました。髪をボディシャンプーで洗ったり、爪を痛ませたり」とも。

 外見へのアプローチを着々と進める一方で、内面の表現方法がわからず「クランクインからパニックでした」と石原は振り返る。「監督の『すごくよかった』とNGの差がまったくわからないんです。すべてが手探りで、新人状態。ただひとつ、意識して演じたものは全てNGだということはわかって。今まで味わったことのない感覚でした」と迷い続けた日々を述懐。

 驚くことばかりだったという現場で特に印象深かったのが、警察署に駆けつけるシーン。台本では「……」としかなかったシーンが、撮影当日にいきなり「最後に叫んでほしい」と監督から指示を受けたのだという。

 「台本の段階では、わたしはフリーズするものと思っていたんです。叫ぶ? どうやって? と混乱しましたが、夫役の青木さんと一緒に震えながら喜び、その直後に告げられた言葉にリアクションしたはずです」。その結果、予想を上回るシーンに仕上がったが、今思えば身構えなかったのがよかったのだろうと分析はできても、そのときのことは記憶にないと石原。「事前の計算でできたことは1つもありませんでした。わたしが想像していたものなんて『たかが』でしたね。実際にやってみたら、自分の感情がどこに行くのかよくわからなくて。監督にコントロールしていただきました」と思い返す。初めて知ったその感覚は、石原にとって「一生大切にしたい、宝物のような経験」になった。

 吉田組での経験を経て、石原は役者に対するリスペクトが強くなったという。「わたしはこの作品で初めて知ったことが多すぎるほどなんですけど、例えば『映画は面白い』とおっしゃる役者の方々は、自分を消すとか、役の人生を生きるというこの感覚を知ってらしたんですよね。ほかにもたくさんわたしが知らないことをご存じなんだろうなって思うと、とにかく『すごい!』って」と胸中を明かす。「これまでの石原作品も十分すごかったのではないか」と問うと、「もしそうならうれしいですけど、わたしは自分を面白いと思ったことはあまりないんです。客観視はなかなかできないですから」と冷静な答えが返ってきた。

 今、石原は「わたしもいつか、こんなふうになりたい」と夢中になって役者の演技を観ており、「改めて、すごい仕事をさせていただけているんだなと思っています」と感覚を新たにしている。その思いはきっと彼女の中に蓄積されて、いつか花開くだろう。「インプットされているといいですよね。でも、されていなかったとしても、今面白いだけで十分なんですけど」とワクワクが止まらない様子だ。この作品に関しても「観てくださった方にキャラクターの誰かの言葉が棲みついて、考え方が少しでも優しくなったらいいなと思います。反響は楽しみではありますが、自分の中ではこの体験ができただけで、幸福度がとても高いんです!」と充実の表情を見せた。(取材・文:早川あゆみ)

ヘアメイク:猪股真衣子 スタイリスト:宮澤敬子(WHITNEY)/KEIKO MIYAZAWA(WHITNEY)

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