「アンナチュラル」の一歩先へ『ラストマイル』が描く“使う者と使われる者”の関係
シネマトゥデイ 映画情報 / 2024年8月31日 7時12分
“物流の2024年問題”が騒がれる以前に書かれたとは信じられない、先見性ある脚本には舌を巻くばかりだ。なかでも、休憩時間もなく、低い報酬で配送を強いられている委託ドライバーの佐野親子(火野正平・宇野祥平)の姿は、「アンナチュラル」の第4話「誰がために働く」で描かれたような、経営者に搾取され過重労働を強いられる労働者の姿を思い起こさせる。
「『アンナチュラル』で野木さんは、“使われる側と使う側の論理”を描かれていたと思いますが、『ラストマイル』はその先の世界を描いているんです」という塚原監督。「どうしてそうしたシステムが成立してしまっているのかといえば、誰か(消費者)が必要としているものだから回ってしまっているんですよね。そのうえで、私たちもその環に加わっているんだと自覚させるところまで行っているのが『ラストマイル』であり、そこは『アンナチュラル』から1歩前に行った印象があります。1時間のドラマでは行き着けなかった部分を、映画という2時間の尺で描ける、ベストな物語にしていただけた。やっぱり野木さんは天才です」と野木を絶賛する。
名セリフを振り返って
そんな問題提起と共に込められているのが、誇りと信念を持って仕事に臨む人々へのエールだ。塚原監督は「どうせやらなくてはいけない作業であれば楽しんだ方がいいし、毎日やっていることが絶望的なのはつらいじゃないですか。ミコトが『アンナチュラル』で言っていた『絶望してる暇あったら、うまいもん食べて寝るかな』みたいなことですよね」と語る。
「つらいことも楽しいことも、仲間がいてもいなくても毎日やるのが仕事。それがつらくて暗いだけのものにならないよう、野木さんなりにメッセージを発信しているのではないかと思います。『アンナチュラル』の中にミコトが六郎との会話の中で『労働は罰なんだって』とイタリアの言葉を引用するセリフがありました。“罰”という重い表現を用いながらもミコトはそのあと、『だから一分でも早く仕事を終わらせて、家に帰る』と軽い口調で続けます」
「つまり、罰だと思い切れないほど、やりがいのある仕事というのもあるんだと。行間を読む……じゃないですが、野木さんの脚本ってそういうことが書かれていることがあって、読み逃すと違う作品になってしまう。そこは本当に難しいんですが、そのメッセージが『ラストマイル』を観た誰かにも伝わって、希望になってくれればいいなとは思いますね」(編集部・入倉功一)
-
- 1
- 2
この記事に関連するニュース
-
長崎原爆と戦争…“神回”だった「海に眠るダイヤモンド」 ファンは気付いた「さだまさし」の説得力
スポニチアネックス / 2024年11月19日 10時33分
-
土屋太鳳“ぶりっこキャラ”から結婚を経てイメチェンに成功 「海に眠るダイヤモンド」百合子役が大好評
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月10日 9時26分
-
大注目『海に眠るダイヤモンド』、新井順子Pが誕生秘話を語る! 野木亜紀子&塚原あゆ子監督との“合宿”とは
クランクイン! / 2024年11月1日 19時0分
-
新井順子Pが語る“神木隆之介のすごさ” 自らホストに取材・1話にアドリブシーンも「一瞬で役に没入できるタイプ」【「海に眠るダイヤモンド」インタビュー】
モデルプレス / 2024年11月1日 19時0分
-
『海に眠るダイヤモンド』は「壮大な愛の物語に」 企画の発端やキャストの起用理由、撮影の裏側を新井P語る
マイナビニュース / 2024年11月1日 19時0分
ランキング
-
1柳葉敏郎「暴れまくっていた」ドラマロケ地で謝罪「ぐちゃぐちゃにして帰ってしまいまして」
スポニチアネックス / 2024年11月24日 16時14分
-
2篠原涼子・市村正親の長男が警察ザタ!三田佳子の二男ら“お騒がせ2世”化を危ぶむ声も
女子SPA! / 2024年11月24日 15時47分
-
3上沼恵美子 PayPayの衝撃のチャージ額明かす スタジオ驚がく「30万でドキドキします!?」
スポニチアネックス / 2024年11月24日 15時57分
-
4水卜ちゃんも神田愛花も、小室瑛莉子も…情報番組MC女子アナ次々ダウンの複雑事情
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月24日 9時26分
-
5黒木メイサ 薄すぎる?メイクで新たな魅力発見「吸い込まれそうな瞳」「10歳は若く見える」と変化に驚きの声続々
スポーツ報知 / 2024年11月24日 19時29分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください