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八木勇征「不運続きでも問題ない」 挫折乗り越えた高校時代

シネマトゥデイ 映画情報 / 2024年10月29日 7時15分

 そこには、八木自身の高校時代の経験も少なからず影響があったよう。高校生としての普通の日々を夢みる矢野くんとは異なり、八木が追い続けた夢はサッカー。ケガを機にその夢から遠ざかることになったものの、「だからこそ、アーティストになりたい! という夢を新たに抱くことが出来ました。夢はいくつあってもよくて、たくさんあった方が、人生はきっと楽しいと思うんです」と微笑む。

 それでいて、「普通って、全然当たり前じゃないと思うんです」と、“矢野ドリーム”にも共感を示す。何気ない日常のなかで喜びを噛みしめられるのは人としてステキだと続け、「一つ一つのことに感謝出来る矢野くんは、不運なようでマインドとしてはラッキーなのかも」とその人間力の高さを指摘する。そうして自身についても思いを及ばせ、「普通に日常を過ごせていること、アーティストとしてライブをさせてもらえることも当たり前じゃない」とした上で「でも僕の職業だとやっぱり普通じゃいけないんですよね。“八木くんの普通じゃない日々”でないと!」と笑う。

 激しくデフォルメされたようなキャラクターでありながらごく普通の高校生でもある、そんな特異なキャラクターをキッチリと構築し、主演俳優としての役回りを全うした八木。撮影はシーンの順番通りではなかったため、「矢野くんの感情の振れ幅、揺れ動くその曲線をあらかじめ自分の中につくっておくとアレンジが効くんです。ゼロからマックスまで、自由に出せるようにしておくと、あとの調整がラクになります。あと動きとしては、矢野くんは仕掛けていく役回りなので、わかりやすく表現していきました」と振り返る。そうした役の構築に関しては「基本的には台本には書き込みません。ただ撮影期間中はその作品、役柄のことを考えない時間はないんです。何をやっていても絶対、頭の片隅に存在している感じです」とストイックな姿勢も明かした。

 俳優として歩み始めて4年、また一つ俳優としてキャリアを積んだわけだが、芝居の面白さは「どんどんどんどん変化しています」と八木。演じる役によって変わるのは当然のこと、と前置きしつつ「俳優さんには、いろいろなお芝居をする方がいらっしゃいます。そうした方のお芝居を受けること自体が刺激になる」とこれまでの作品を振り返る。そのときに大切なことは「瞬間の判断」だと言い、「つま先から頭まで役が入っていないと。本番での数秒間で、その役として動くことは出来ません。映像作品なら、カットがかかって、役として動けた! と思えたとき、そのことに興奮します。舞台なら、観客の目の前で、その作品をつくる一人一人が歯車のようにがっちりとかみ合った! と思えたときも同じ感情になります。」と熱を込める。

 もちろん、本作でもそんな“興奮させられる”瞬間があり、「何かを起こそう! と意図したものではなく、自分が無意識に下した咄嗟の判断で役としての動きがすべて決まっていく。そうしたときは自分でもシンプルに“すごい!”って思うんです(笑)。大きな達成感があります」と気持ちを高ぶらせるように語る。

 来年も、鈴木おさむが脚本を務めた主演映画『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』(2025年2月21日公開)の公開を控える。俳優・八木勇征の本当の快進撃はこれから、そう思わせる充実した表情だった。(取材・文:浅見祥子)

ヘアメイク:福田翠 スタイリスト:中瀬拓外

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