三吉彩花「嘘をついて生きたくない」本心と向き合って見えた本当の自分
シネマトゥデイ 映画情報 / 2024年11月8日 7時12分
本格的なアクションや覚悟を要するような難役にも果敢に挑み、俳優としてますますまばゆいほどの輝きを放っている三吉彩花。テクノロジーが進化した2025年を舞台にした石井裕也監督最新作『本心』では、ミステリアスな女性・三好の抱えた痛み、歩んでいく道のりまでを体現している。「自分の“本心”に向き合わなければ演じられなかった」という役柄を通して確かめた、自らの心。アジアやハリウッドにまで目を向けている、30代への展望までを明かした。(取材・文:成田おり枝)
覚悟を要する役「本心と向き合わなければできない」
芥川賞作家・平野啓一郎の同名小説を『月』『愛にイナズマ』などの石井監督が脚本も手がけて映画化した本作。急逝した母の本心を知るために、AIで彼女を蘇らせようとした青年・朔也(池松壮亮)が、進化した時代に迷う姿を映し出す。
三吉が演じたのは、亡くなった朔也の母・秋子(田中裕子)の友人で、彼女をAIで蘇らせようとする朔也との心の距離が近づいていく女性、三好彩花役。自身と漢字一文字違いの役柄は、石井監督の当て書きによるものではなく、原作にもその名前で登場するキャラクターだ。本作のオファーを受け取った三吉は「まず名前のインパクトが強すぎて。同じ名前ということで、どうしても運命を感じざるを得ませんでした。他の方が演じたとして、舞台挨拶で『三好彩花役の……』と名乗るとしたらやりづらいかもしれませんよね」と笑みをこぼす。
三好は、過去にあらゆる痛みを経験したことで、今でも人に触れることができない女性。「とても苦しい役。お受けするには覚悟もいる役でした」という三吉だが、「当時の私は少し迷っていた時期でもありました。それはお仕事、プライベートどちらにでも言えることですが、時間はどんどん進んでいくけれど、それに追いついていけていないのか、私はどこにいるんだろうとわからなくなっているような感覚があって」と告白。「今この作品をやることで、何か超えられるものがあるかもしれないと感じました」と運命と直感に導かれたという。
そして、彼女の苦しみを体現するために「私自身も抱えているコンプレックスや、引っかかっていることに向き合う必要があると思った」とまっすぐな瞳を見せる。「私は昔から、家族との向き合い方に難しさを感じていて。撮影に入る前に、そこにきちんと向き合ってみることにしました。自分にとって何が心地よいのか、心地悪いのかを理解することがとても大事で、それを三好の生き様や心のあり方に投影していけたらと思っていました」と告白。「その時間は、自分の人生にとっても転機になったと思います。すごくいいタイミングをいただけた」としみじみと語る。
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