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『ライオン・キング』前日譚、ムファサの声を「記憶から追い出さなければならない」新声優起用で求めたこと

シネマトゥデイ 映画情報 / 2024年11月17日 18時2分

 超実写版『ライオン・キング』(2019)の前日譚映画『ライオン・キング:ムファサ』を手がけたバリー・ジェンキンス監督が、若き日のムファサ役をはじめとする新声優の起用について語った。

 『ライオン・キング:ムファサ』は、シンバの父・ムファサと後の悪役スカーである“タカ”の知られざる兄弟の絆を描く物語。声優も一新され、主人公ムファサ役は、DC「グリーン・ランタン」の新ドラマシリーズ「ランタンズ(原題) / Lanterns」にも出演予定のアーロン・ピエール。タカ役には『エルヴィス』などのケルヴィン・ハリソン・Jrが起用された。

 全員がオーディションで決まったという声優について、ジェンキンス監督は「すべては声から始まります。僕はこの映画を5回監督したようなものです。声の役者は2組いました。というのも、キャストが決まる前から絵コンテを描かなければならなかったからです」とコメント。「僕にとって『ライオン・キング』のDNAは、シェイクスピアそのものだと思います。声の質はとても重要でした」と力を込める。

 ディズニーのアニメーション版からムファサを演じてきたジェームズ・アール・ジョーンズは、今年9月にこの世を去った。ジェームズからムファサ役を引き継ぐことになったアーロンだが、ジェンキンス監督は「アーロンは彼を記憶から追い出さなければならなかったんです」と打ち明ける。

 「なぜなら、この物語のこのキャラクターは王ではないからです。偉大でもないんです。僕たちは、この人物がこれらすべてのものを獲得しなければならない、こういう人にならないといけない、という物語を語っているのです。詩人で作家のオーシャン・ヴオンが、インタビューでこんな名言を残しています。『僕は両方の言語で考えます。母国語と、英語でも書かなければなりません』そして、『その違いはとても素晴らしいんです』『僕の言語では、あなたは単なるものではありません。母親(mother)であるのではなく、育児している(mothering)んです』『あなたは育児という行為をする人です』と言ったんです。僕はこの映画で、(ムファサが)王ではなく、ある意味、王であることの体現者でなければならないというストーリーを描いているところが大好きです」

 「だからアーロンには『あなたはジェームズ・アール・ジョーンズにただなれるだけではないんです』と言いました。ムファサは、成長するためにこの旅を経験しなければならないんです。恐怖の中で人は縮み、愛の中で人は広がるって言うでしょう。この映画では、ムファサは恐怖の場所から拡大できる場所に行かなければならないと思います」

 また、アニメーション版でジェレミー・アイアンズが演じたスカーの若き日を演じるケルヴィンは「ジェレミーのスカーの奇妙さをとても楽しんでいました」とジェンキンス監督が証言する。

 「1994年の映画でスカーを演じたアイアンズの白黒はっきりした演技にさえ、傷ついたような質感がとてもあります。そして僕たち全員が、そこに焦点を合わせました。この映画はそういうところに位置しているんです。アイアンズは、たとえ白か黒か、善か悪かという非常に単純な二元論の中で演じていても、とても傷ついているというその中間点に、自らの道を見つけたんです」

 ちなみに、イギリス人のアーロンはアメリカ英語のアクセントで、アメリカ人のケルヴィンはイギリス英語のアクセントで声を当てているとのこと。ジェンキンス監督は「それが彼らの個性にぴったりなんです」と振り返っていた。(編集部・倉本拓弥)

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