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『室井慎次』想像以上の新キャラ誕生 脚本・君塚良一が絶賛する“本広演出”の妙

シネマトゥデイ 映画情報 / 2024年12月15日 7時3分

 松下洸平が演じた捜査一課の刑事・桜章太郎も際立っていた。「最初は、青島っぽい人が室井さんとぶつかると面白いかもということだったんです。事件解決にそれほど尺を取れないので、そこをきゅっと締めるために、感覚的に優秀な直観系の人を置こうと思いました。でも結果的には青島には似ていない。これは、(本広克行)監督と彼が、ちょっとオーバーアクトな男という違うものにしているんです。おそらく、ずっと容疑者をそうやって翻弄して、ボロを出させてきたんじゃないかという刑事なんですよ。青島とは違うやり方ですね」とキャラクターを説明。「僕が思っていたものとはぜんぜん違って、それ以上のものでした。想像すらしていなかったキャラクターを作ってくれました。なかなかの男です」

ただひたすらに書いていた

 そして君塚は、本広克行監督の手腕についても大絶賛する。「僕は脚本には責任を取りますが、基本的にキャスティングや美術などは、全てお任せします。監督とプロデューサーを信じていますから」としたうえで、「今回は特に、本広監督の演出力がすごいなと思いました。途中からはもう、僕はあまりト書きを書かなくなっていましたね」。たとえば、『敗れざる者』のラストで車庫に吊るされた室井のコートが燃えるシーンは、「十字架みたいに燃えるでしょ。あれは、監督がそのシチュエーションに自然にもっていってた。僕は書いてないです。今回、コメディーにするのか、泣かせるのか、すごく迷ったと思うんですけど、全部がいい塩梅でした」と感嘆。「以前の『踊る』のように、カットをガンガン割って笑いを作るやり方をしてないし、泣かせも意外と淡々とやっていて、ベタっとしてない。日本映画とアメリカ映画の中間くらいの演出をされていました。新しい本広監督の世界です。やっぱりすごい男だと思いました」

 今回の物語は、家族がベースとなっている。「おそらく監督は、初挑戦に近い世界だったと思いますが、本広視点がちゃんとあった。僕は、彼が昔撮った映画『UDON』に近いと感じました。あれは、彼の故郷に対する視点でしたからね。故郷というものに対しては、誰もが優しくなるじゃないですか。今作も室井の故郷ですから」

 君塚にとって「踊る」とは何なのだろうか。「僕の記憶では、ただひたすらに書いていたというだけです。あまり迷わず、立ち止まらず、『次は映画』『次は舞台』と言われるままに書きました。途中でグズグズ言わずに続けてこられたのは、きっとフィットしていたんですよね。僕のモノを書くときの感じとタッチと技術と好き嫌い、趣味嗜好がぴったり合った作品なんだと思います」と思い返した。「もちろん、その時々のテーマはありました。今回はこうしよう、今回はこのルールを破って新しいことをやろう、ということは毎回考えていましたが、とにかくひたすら書いていました」

 ここまで続く大ヒット作になった理由を、君塚はどのように考えているのだろうか。「とにかく、視聴者と観客のことを忘れなかった。観てくれる人をね。それが支持していただけた理由だと思います。その人たちを裏切らない、その人たちをガッカリさせない、その人たちを喜ばせる。それがなかったらインディーズ的な映画ですよね。こっちは完全な娯楽映画ですから。だから、ただ書いていただけじゃなくて、『観客のことを忘れずにひたすら書いていた』というのが正しい記憶です」(取材・文:早川あゆみ)

『室井慎次 敗れざる者』『室井慎次 生き続ける者』は全国公開中

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