名匠ジウジアーロが手掛けた“奇跡”のイタリアンベーシックカー【中年名車図鑑|初代フィアット パンダ】

citrus / 2019年9月25日 9時0分

オイルショックへの対応で低燃費の小型車の開発が積極的に推し進められた1970年代後半の自動車業界。そのなかでイタリア最大の自動車メーカーであるフィアットはTipo zeroプロジェクトを立ち上げ、車両デザインについては名匠G.ジウジアーロが率いるカロッツェリアのイタルデザインに一任した。コストを抑えながらアイデアを駆使して製作した新世代のベーシックカーは「パンダ」の車名で1980年に市場デビュー。その小粋なスタイルは、欧州はもとより日本でも高い人気を獲得した――。今回は国産メーカーも一目を置いたジウジアーロの傑作コンパクトカーの話題で一席。



一方でイタリア最大の自動車メーカーであるフィアットは、このカテゴリーに127を投入して比較的好調なセールスを記録していたものの、その1クラス下のベーシックカーである126は苦戦を強いられた。旧態依然としたRR(リアエンジン・リアドライブ)方式によるパッケージングが、居住性や動力性能の面で不利に働いたのだ。憂慮したフィアットの首脳陣および技術陣は新しいFFベーシックカーの設定を画策し、プロジェクト名“Tipo zero”を立ち上げる。そして、1976年7月にその開発をジョルジェット・ジウジアーロ率いるイタルデザインに依頼した。なお、フィアットが量産モデルの開発を外部に委託したのは、これが初の出来事。背景には、オイルショックの煽りを受けてフィアット自体の経営が逼迫していたこと、そしてフォルクスワーゲン・ゴルフのデザインを手がけたジウジアーロの手腕とイタルデザインの開発能力を高く評価していたことなどがあった。



フィアットは新FFベーシックカーを企画するにあたって、イタルデザインに様々な条件を提示する。ボディサイズは126と127の中間、生産コストは126と同レベル、できるだけシンプルでかつ実用性が高いモデルに仕立てること――。こうした厳しいオーダーを受けたジウジアーロは、夏のバカンスを返上して車両デザインの創出に汗を流すこととなった。


新FFベーシックカーの基本スタイルは、直線と平面を基調にデザインした3ドアハッチバックのモノコックボディで構成する。ホイールベースは2160mmに設定。フロントのエンジンルームは広めにとり、オーバーヒートの防止やメンテナンス性の向上、そして将来的なエンジン排気量のアップに配慮していた。サスペンションはフロントに独立懸架式のマクファーソンストラット/コイルを、リアに半楕円リーフで吊ったリジッドアクスルをセットする。リアにリーフリジッドを組み込んだのは、コストの抑制とともにラゲッジスペースへの干渉を防ぐ目的があった。



フロントセクションに搭載して前輪を駆動するパワーユニットは、126から流用した652cc空冷直列2気筒OHVユニット(30hp/4.2kg・m)を縦置きで、127から流用した903cc水冷直列4気筒OHVユニット(45hp/6.5kg・m)を横置きでレイアウトする。トランスミッションは4速MTで、クラッチにはシンプルなシングルドライプレート式を組み合わせた。



内外装のデザインにも徹底した工夫が凝らされる。ガラス類はフロントウィンドウを含めてすべて平面で構成。前後バンパーは下半分に横スリットを刻んだ樹脂一体成型タイプで、フロント下にはスポイラー効果を持たせる。また、両サイドの下部は前後バンパーとラインを合わせて樹脂コーティングを施し、傷つきや錆の抑制を図った。一方で内包するインテリアは、全体をポケット状にデザインしたダッシュボードや横長の長方形にまとめたメーター&警告灯&スイッチ類、ダッシュボード下部で自由に移動できる脱着式の灰皿などが訴求点となる。パイプフレームをベースとした薄手のシートは、前後ともにフルフラット機構を内蔵。また、リアシートはコンパクトに折りたためるとともに、フロントピボットを上に固定すればハンモックに早変わりした。前後シートともに取り外しが可能で、さらに表地を外して洗えたことも、ユニークかつ実用的なアイデアだった。



■「Panda」の車名で市場デビュー



フィアットの新世代コンパクトカーは、1979年12月にプレス発表され、翌80年2月にイタリア本国で発売。そして3月開催のジュネーブ・ショーで欧州プレミアを果たした。車名は「Panda(パンダ)」。ボディ下半分をグレー塗装とするツートンカラーを採用したことが、車名の由来といわれる。デビュー当初の車種展開は、652ccエンジンを採用するパンダ30と903ccエンジンを搭載するパンダ45の2タイプで構成。ボディサイズは全長3380×全幅1460mmと、当初の予定通り126と127の中間に収まっていた。



シンプルでユニークな内外装の演出に広くて使いやすいキャビン&ラゲッジ空間、軽快かつ経済性に優れた走り、そしてリーズナブルなプライスタグなど、新世代イタリアンベーシックとしての特性を存分に備えたパンダは、たちまち市場の人気モデルに成長していく。その勢いをさらに加速させようと、フィアットは積極的にラインアップの増強やメカニズムの改良を実施していった。



■4×4モデルをシュタイア・プフと共同開発



まず1982年には、横置きの843cc水冷直列4気筒OHVエンジン(34hp)を搭載するパンダ34を追加。同時に、後のパンダの人気装備品となるダブルサンルーフを設定する。さらに、同年開催のパリ・サロンにおいて、45をベースに装備の充実化や5本の斜めラインが入ったブラックグリルの装着、ボディサイドの樹脂コーティングの省略、トランスミッションの5速化などを図った上級グレードのスーパーを発表した。


1983年にはオーストリアのシュタイア・プフと共同開発したパートタイム式4WD(FF/4WD)を組み込むパンダ4×4を市場に放つ。パワートレインはトルクアップを狙ってエンジン排気量を965ccに拡大(48hp/7.1kg・m)するとともに、トランスミッションには1速をローギアード化した5速MTをセット。フロアトンネル中央付近にはドライブシャフトのたわみを防ぐクロスメンバーを装着する。駆動の切り替えはシフトレバー後方に配したT字型のトランスファーレバーで行えた。また、不整地走行を考慮して最低地上高を引き上げ、同時にフロント側にサブフレームを追加する。タイヤにはオールシーズンスチールラジアルを標準で装備。フロントグリルには5本の斜めラインが入ったブラックタイプを装着した。ちなみに、FF横置きエンジンをベースとする市販4WD車は、パンダ4×4が初であった。



■FIREエンジン+Ωサスの採用




 

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