室屋選手、来年の目標は「非公開だけど優勝!」─ メンタルとエアレースを語る

clicccar / 2015年11月20日 11時33分

レッドブルエアーレースに参戦中の室屋義秀選手が11/18に東京・新橋の航空会館でスペシャルトークショーを行いました。

テーマは「目標達成の秘訣 操縦技術世界一のパイロットを目指して」

開演前には用意された180席の9割以上が埋まる盛況ぶりで、現在の室屋選手の注目度の高さを感じます。

トークショーでは技術論は…無く、生い立ちや経験等を中心に紹介しました。

子供の頃、ガンダムの主人公アムロ・レイにあこがれてパイロットを志した事。しかし、当時は体格に恵まれず並ぶと腰に手をあてる(最前列)ポジション。そこからの脱出が目標だったとか。

中学、高校とサッカーに明け暮れ、大学でグライダー部に所属してパイロットの道に踏み出します。他のエアレースパイロットは親がパイロットや飛行学校を経営していたり、空軍に所属していた人がほとんどなので、極めて異色の経歴の持ち主です。

大学在学中に、パイロットに憧れるもうひとつのきっかけとなった映画「TOPGUN」の舞台アメリカでエンジン付きの飛行ライセンスを取得しますが、この辺りから苦労が始まります。

初めて手に入れた飛行機スホーイは日本未導入だったので、国内での飛行認可が下りるまでに半年ほど掛かったとか。金策に苦労している頃、あるTVを見て徹夜で企画書を作り、スポンサーをお願いに走ったり。

支援や仲間も増え、スポンサーも獲得し、エアレースへ参加、エアショーにも追い風が吹き始め…た矢先に、先鋭化し過ぎたエアレースが2010年に一旦休止。

アエロバティック世界選手権でまさかの予選落ち、更に東日本大震災。福島が活動拠点の室屋選手には大変だった様です。流石に心が折れかかるところに仲間の叱咤激励もあり、再開されたエアレースに再び参加。

そして悲願の母国開催と表彰台獲得を重ね、いよいよ世界の頂点が見えてきました。

テーマに沿った部分では、メンタルコントロールとトレーニングについて語られました。
福島大学教授でメンタルトレイナー白石豊(2010年サッカーワールドカップ日本代表、岡田武史監督をサポート)氏の出会いや、自制心やセルフコントロールのテストとして有名な「マシュマロ実験」等を例に、目標を達成していくにはどうしたらよいかを語りました。

室屋流アプローチで特に興味深かったのは 「一日3分間だけ余計に頑張ってみる」
成長見込みをグラフ化し、10年経過すると頑張った目的の世界と戦えるレベルに達するとか、15分にすると2年で世界レベルに到達するなどを紹介しました。

最後の質疑応答ではあれこれ答えられる質問、答えられない質問(ギャラ…とか)、立場上答えられない質問(飛行場…は過去記事をどうぞ)がありました。

飛んでて一番怖かった事では、悪天候・特に雷雲との事。

軽飛行機なので悪天候対策の装備は有りません。ヨーロッパを移動中にポーランドで緊急直陸をした時、お金もほぼないし現地語で会話も出来ない中、声を掛けてきた日本語が喋れる地元の方のお宅に御厄介になった事があるのだとか。

対戦したくない相手はマット・ホールとマティアス・ドルダラーだそうです。特にマティアスは予選で自分が2位・マティアスが13位なのに、本戦でグッと強くなるのだとか。

また、予選好調でも決勝でタイムが落ちるのは何故か…というド直球な質問には、温度計測をしていない補機類が充分に冷却出来ていない事が最近判ったそうです。

勝ち進む程に、着陸して冷却する時間が短くなる(離陸迄の最短は3分程)ので、この辺りの改善が必要な様です。

来年のドリームボード(目標)に「エアレース優勝 は入っているんでしょうか」の質問には「公式には未だ云わない事になっていますが”入ってます”」の答えに会場は大いに盛り上がりました。

最初、緊張で胃が痛いと云いながら始まったトークショー。最後は笑顔が溢れていました。終了時には急きょ席が追加され、200人以上が室屋選手の話に耳を傾けました。

トークショーに先立ち、お時間を頂けたので、今年の総括を伺ってみました。

──シリーズランキングでは終盤4位がみえていた中、結果6位でした。

来年優勝争いを行う為に、マージンをとらない(攻めた)中での結果なので、チームとしては目標はクリアしたと感じています。

──新機体を第二戦から投入し、後半になるに従い熟練度が上がった様に感じましたが。

新機体に対する慣れだけでなく、機体関係のシステム構築やチーム全体の総合力が揃ってこないと、僅差の戦いの中では上に行けません。

──システムの構築とは何を指しているのか。(機体はアナログ(=マニュアル)で飛んでおり、コンピューターによるフライトのエイドやアシストは無い)

どこを飛んだか、などはパイロットだけでは正確には判らないので、コンピューターなどによって解析しないと確認できません。それを正確に解析〜再現していく事、そして解析ソフトへ飛行データをフィールドバックして、より誤差の少ないシミュレーションを行う。そういったシステムをチームで組みあげています。

飛行機はアナログに操縦し飛ばしていますが、そのシミュレーションに沿って飛ばしているので、誤差が減る事で精度(=タイム)が向上しています。

──今年のチャンピオンで最大のライバル、ポール・ボノム選手の突然の引退について

もうそろそろで手が届く、来年は勝てると思っていたので、残念です。

ただ、ボノム選手が居なくなったからと云って、簡単に優勝が近くなったとは思っていません。 きっと誰か他の選手がライバルとして現れると思っています。

──エアレースの父と云われる、ピーター・ベネゼイ選手の引退について

エアレースを立ち上げた人で、エアレースに誘ってもらいました。他にも力を貸してもらった事がある方なので、とても残念です。

──ベテラン2人の引退による喪失感などはありますか。

それについては何も変わりません。引退する瞬間は誰にもやってきて、我々は皆それを理解して参加しています。

与えられた状況の中で一番上にいくのは同じです。8位から6位に上がる事を目指すならともかく、トップを目指すには結局全員に勝たなければいけないですから。

…そろそろ開演、ここで終了となりました。

ジャケットを着て、呼び出しを待ちます。アスリートとしての表情をこちらでは見せて頂けました。

サムライパイロットとして紹介されるストイックなアスリートの面と、メディアにはあまり見せていなかった気さくな一面を見る事が出来た一夜でした。

室屋選手の今年の活躍は12/26にBS1で放送される様です。

こちらも楽しみに室屋選手の来年の更なる飛躍に期待しましょう。

(川崎BASE)

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