レベル4以上の完全自動運転は本当に可能か? ZFグループ戦略的提携・買収を指揮するツークンフト・ベンチャーズ社トーステン・ゴレウスキー社長に聞く

clicccar / 2017年11月15日 7時30分

第45回東京モーターショーでは、日本だけでなく海外の自動車メーカーからは、「これぞモーターショー」という華やかなスポーツカーが展示されていました。一方で、電気自動車(EV)を含む電動化や先端運転支援システム(ADAS)/自動運転は、やはり業界の大きなトレンドの一つとして部品メーカーを含めた各社から数多くのソリューションが提案されています。そこで、自動車部品の世界的サプライヤーであるドイツZFグループで戦略的提携・買収を指揮するツークンフト・ベンチャーズ社(ZF社の100%子会社)トーステン・ゴレウスキー社長に、電動化、自動運転化など今後の自動車業界の流れについて聞きました。

— 東京モーターショーでは電動化や自動運転に関する車両やソリューションが数多く出展されています。将来のモビリティについて、ZFはどのように考えていますか?

「現在の姿からは大きく変わっていくでしょう。特に都市部においては自動運転車両が増えていくと考えられます。あるスタディによると、完全自動運転のタクシー1台で、現在のタクシー10台分の仕事が可能だそうです。効率の良い移動手段へのニーズはどんどん高まっていくでしょう。」

— CO2削減は世界的な課題ですが、電気自動車(EV)は航続距離や充電時間に課題があります。EVは、主流になり得るでしょうか?

「明確な答えは今のところ誰も持っていませんが、市場のニーズや文化、移動の目的、自動車メーカーの戦略など様々な事情があり、一概にEVという一つのソリューションだけが主流になるのは考えにくいと思います。

ZFは、都市内の輸送用EV開発のために『e.GO Moove社』を立ち上げました。ここでは200kmや400kmといった航続距離をもつEVの開発は考えていません。現在の技術では多くのバッテリーを搭載する必要があるため、非常に重いクルマとなり効率面で課題があるからです。ここで開発するEVは、ヒト・モノの都市内における輸送に目的を絞っており、効率が良いと考えられる約130kmの航続距離を念頭に開発が行われています。」

「一方で大容量のバッテリーを搭載した航続距離の長いEVを販売している自動車メーカーもありますし、依然、内燃機関(ICE)を搭載した車のニーズもあります。ZFは戦略の柱である安全、効率、自動運転という3つの分野で、様々なトレンドに対応できるソリューションを提供していきます。幅広い製品ラインナップで自動車メーカーのニーズに応える事で、将来のモビリティに貢献していきます。」

— レベル4以上の完全自動は本当に可能でしょうか?

「現状では法規が整備されておらず、社会面においてもレベル4の実現は難しいと思います。『初期の』レベル4は限られた都市の中の一部など、限定された地域から始まると思います。状況によっては3年から5年くらいのうちに可能かも知れません。e.GO Moove社が取り組んでいるプロジェクトでは、ゼロエミッションだけでなく自動運転機能の開発も行っています。特定のエリアの、決まった路線での稼働を想定したクルマなため、レベル4での運航が可能になるかもしれません。一方、どこでも走行できる状況になるのはまだ先だと思います。」

— 自動運転のためには安全性の確保が前提条件になると思います。安全に関してはどう取り組んでいますか?

「ZFは、ADAS(高度運転支援システム)と安全技術の開発を並行して行っています。自動運転用のセンサーを活用して事故の危険を衝突の直前に正確に把握し、各種アクチュエーターを作動させて安全確保に備えると共に乗員にそれを伝達する機能を充実させています。自動運転と乗員保護は統合して開発し、シームレスに連携しなくてはならないと考えます。センサーやブレーキ、乗員保護などの分野でもZFは幅広い専門性を有しています。」

— 急速な変革の時代を迎えている自動車業界にあって、ZFの方向性は?

「当社は排ガスと死亡事故をゼロにするという『Vision Zero』をミッションとして掲げています。そして、高い専門性を有する企業との連携を積極的に推し進め、戦略に基づいて主要な技術の開発を加速する体制を整えています。昨年10月にZFの100%子会社であるツークンフト(ドイツ語で未来の意)ベンチャーズ社を立ち上げ、LiDARに強みを持つイベオ・オートモーティブ・システムズ社や極ミリ波レーダーの開発を行うアスティクス・コミュニケーション&センサー社などに出資するなど、数多くの買収・提携を行っています。現在も、将来に向けた製品ラインナップの拡大を目指して努力を続けています。」

— 最後に、10年後のZFはどんな会社になっていますか?

「安全、効率、自動運転という3つの戦略的柱を包括的にカバーする幅広い製品ラインナップをもつユニークな立場で『Vision Zero』を実現し、ゼロエミッションとゼロアクシデント・ドライブのトッププレーヤーになっていたいですね。」

1960年代から70年代にかけて主にアメリカや日本で盛んになった排ガス規制や、現在では多くの地域で行われている新車アセスメントプログラム(NCAP)など、自動車業界では環境や安全に関する検証や議論が常に行われてきました。テクノロジーの急速な進化によって、これから数年のクルマにはこれまでにない大きな変革がもたらされるでしょう。ZFが開発する最先端技術が、より安全・便利で環境に優しいクルマを生み出し、私たちの生活をさらに豊かなものにしてくれそうです。

(Toru ISHIKAWA)

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