やんちゃ男子が落語と“運命の出会い”!~「真っ直ぐな男」落語家・瀧川鯉斗【木曜インタビュー ただし、イケメンに限る】vol.2
ココロニプロロ / 2018年2月15日 17時0分
日々、忙しく過ごしていると身も心も疲れちゃいますよね。「もうしんどい」「何もしたくない」そんな女性のみなさんに最高の癒しのご褒美=イケメンのインタビューをお届けします。 しかも、そんじょそこらの、やわなイケメンではありません。登場するのは酸いも甘いも噛み分けた「大人のイケメン」ばかり! 毎週木曜日は、ココロニプロロ編集部が厳選したイケメンたちの人生や仕事・恋愛にまつわるお話に耳を傾けてみましょう。そこにはあなたの恋や仕事に活かせるヒントが隠れているかもしれません。 ■やんちゃ男子が落語と“運命の出会い”!落語家・鯉斗が生まれるまで 第1弾は「落語界No.1イケメン」の呼び声も高い瀧川鯉斗さん。元暴走族総長という異色の経歴を持つ若手落語家さんです。 編集部スタッフはとある落語会で、その内面からにじみ出るような色気にノックアウトされてしまい……。暴走族時代の衝撃的な体験談から落語との出会い、現在の仕事のこと、恋愛観まで驚きのエピソードの数々をご堪能ください。
Q.6 落語家さんになったきっかけは?
◎役者を目指して単身、東京へ 暴走族時代は楽しかったけど、ずっとこの生活をしてるわけにもいかないと考えて、17歳の頃にチームを解散させたんですね。で、やりたいことを見つけようとしてたときに、映画を観て役者になりたいなと思い、上京しました。 と言っても人脈もないしお金もないから、とりあえずバイトすることにして、求人雑誌で見つけた新宿のレストランに電話したんです。その面接をしてくれたオーナーが、実は本職はミュージシャンって人で。 「お前は何になりたいんだ?」って聞かれて「役者になりたいです」と答えたら「わかった。明日から来い」と言ってくれてお世話になることになりました。 そこのレストランはピアノがドンと置いてあって、生演奏のバンドを聴けるし、年に2回、落語会も開催してたんです。それで落語会の日、オーナーに「お前、役者になりたいんだったら落語くらい見ておけ」と言われ、勉強になるんならそうしようと思って、客席の後ろで見せてもらいました。 ◎生まれて初めての落語に驚愕! うちの師匠(瀧川鯉昇師匠)が「芝浜」を演ったのですが、一人で何役も演じ分けるし、すごく面白いし、「何だこれ!」って衝撃を受けたんですよね。30分もの間、一人で演じ続け、スポットライトを浴びる仕事って他にないんじゃないか?これはすごい!と思って、その日のうちに師匠に「弟子にしてください」って伝えました。 師匠はびっくりして「落語、知ってるか?新宿や浅草、池袋に寄席があるから見て来て、それでもやりたかったら俺の所に来い」と言ってくれました。で、寄席に通うようになったのですが、こっちは寄席のルールも知らないし、漢字も読めないしで最初は何が何だかわからなかったけど、面白いなと思ってました。 ◎見習い生活を経て前座に そのうちに師匠の家に通うようになり、前座に必要なことを教えてもらいました。と言っても、最初から前座になれたわけではなく「本当にコイツは大丈夫なのか?」っていうのを試してたみたいで、前座になる前に1年見習い期間がありました。 もちろん着物の着方やたたみ方も学びました。師匠がいないときは兄弟子に教えてもらってましたね。 ◎芸名が危うく「こいも」に!? 1年くらい見習いをした後、前座になるにあたって、名前をつけてくれるってことになったんです。師匠が紙に名前を2つ書いて「お前の名前、どっちがいい?」って聞きました。 「鯉斗」と「鯉茂(こいも)」って書いてあったんだけど、当時、僕、本当におバカちゃんだったんで、漢字を縦に読むってわからなくて「鯉鯉(こいこい)」と「斗茂(といも)」だと思ったんですよ。 「鯉鯉」のほうがいいかなと思って指さして「師匠、こっちでお願いします」って言ったら、それが「鯉茂」のほうでした。 師匠はずっと「鯉茂」って名前を付けたかったらしくて、「お前、鯉茂か~」って笑顔になったんですけど、僕は「こいもですか?どういうことですか?」って言って「すみません。こっちでお願いします」と「鯉斗」にしてもらいました。 師匠が「まだ間に合う」って言うんで「鯉斗(こいと)」になったわけですが、あと少しで「鯉茂(こいも)」になるところでした。危なかった!Q.7 尊敬している落語家さんはどなたですか?
◎鯉昇師匠は落語界の親父 尊敬してるのは、やっぱりうちの鯉昇師匠ですね。それから三遊亭小遊三師匠。 うちの師匠の場合は、もう尊敬とか通り越して“お父さん”って感じです。“落語界の親父”みたいな。師匠がいなかったら今の僕も存在しないわけで…。ずっと見守ってくれる人ってイメージ。本当に困ったら助言をくれる頼もしい親父です。 前座の頃はほとんど毎日家に行ってて、今は会うのは月に1~2回ですかね。稽古が終わった後は、師匠がご飯を作ってくれて、それを一緒に食べながら、あーでもない、こーでもないって話をします。肉の味噌炒めとか、美味いんですよ(笑)。 ◎会うと背筋が伸びる小遊三師匠 小遊三師匠は男らしい人です。すごい体育会系で面白おかしいんだけど、やるときはやるっていうタイプ。そこがすごい好きなんですよね。 実は前座時代、小遊三師匠のカバン持ちをすることもあったんです。小遊三師匠はうちの師匠より先輩なんですが、2人はすごく仲が良くて「鯉斗借りるなー」「とんでもない!入ったばかりだから、前座しくじりますよ」「別にいいよ」って感じで借り出されました。 小遊三師匠が名古屋の大須演芸場で落語会をしたとき、「お前、名古屋出身だろ?来いよ」って連れて行かれて、2人で1週間、楽屋に布団を敷いて雑魚寝し、昼間は高座に上がるっていう合宿生活をしました。 そこで「This is 落語家」っていう動き含め、一からいろいろ教わりましたね。だから小遊三師匠も親父みたいな感覚はあります。未だに会うと背筋が伸びます(笑)。 そうそう、その演芸場での落語会のとき、地元の仲間たちに連絡したら、みんな来てくれて客席の3分の1くらい僕の友達で埋まったんです。 で、僕が高座に上がって戻って来たら小遊三師匠が「鯉斗よ、お前が出たら黄色い声援が聞こえるかと思ったら、どす黒い声援ばかりだな」って言われました(笑)。 まあ、そんな感じで小遊三師匠にも良くしてもらったので、みんなにうらやましがられたりしましたね。僕は落語業界のことをよく知らなかったから、普通のことみたいに受け入れてたけど、今思うとものすごく恵まれてました。ありがたいですね。Q.8 お気に入りの噺を教えてください
◎「雪とん」「紺屋高尾」…人情噺が好き 今、リアルタイムで好きな噺は「雪とん」という、雪の季節にぴったりな人情話。田舎から出てきた若旦那が長屋に住んでるんですけど、絶世の美女に恋わずらいして…っていうストーリーです。 「紺屋高尾(こんやたかお)」も好きですね。花魁と職人の身分違いの恋を描いた純愛物語で泣けます。「妾馬(めかうま)」って噺も好きです。 あと「紙入れ」もいいですね。おかみさんが家に間男を引き入れて、それがバレそうになるっていう噺なんですけど、結構エロいですよ(笑)。 ◎自分に合う噺を追求する日々 前座の頃は師匠が教えてくれた噺を演ってたわけですが、二つ目になってからは、そこからどう脱皮していこうかって考えるようになりました。やっぱり自分らしい落語を演りたいですしね。 それで僕は師匠と同じ場では、師匠の噺は演らないでおこうって決めていて。だって師匠がトリで僕は先に高座に上がるでしょ?そのとき、師匠とどこか似てる落語をやるのって、お互いにやりづらいじゃないですか。 もしかしたらこれから年を重ねていくうちに、師匠の持ちネタを師匠とは違う感じでできるようになるかもしれないけど、それまでは寝かせるっていうのも大事かなと。 だから僕は今はいろいろ、師匠がやらない噺に挑戦しようと思って勉強しています。Q.9 落語はどのようにして覚えていますか?
稽古してもらったときの音源を、ウォークマンでひたすら聞いてますね。最初は一字一句覚えます。覚えるのにいい時間は人によって違うと思うけど、僕は朝が好きです。 まずは音に集中して、疲れてきたらニュースを見て、リフレッシュしたらまた聞いて…。ただ聞いてればいいわけではないし、何時間やればいいってもんでもありません。「今日はこれをやろう」って決めて、そこを達成できたら「よし」っと思います。 覚えると脳にフックがかかる感じがして、絶対忘れない安心感があるんです。寝言でもしゃべるだろうなって自信が出てくるときも(笑)。 そこまで持っていくまでの段階があって、そこにたどり着いたらその日は終わり。それが30分のこともあれば5時間かかることもありますね。 噺を覚えて、それを高座で演って…落語は本当に生活スタイルの一部になっています。Q.10 落語家さんになっていなかったら何をしていると思いますか?
現場の職人さんか大工さんか、左官屋さんかな。僕のじいちゃんが大工なんですよ。それを手伝ったので、職人的なことが好きなんですよね。もしくはサーフィンのリペアをやってたかもしれません。Q.11 高座の出来・不出来を反省することはありますか?
失敗したときは、上手い人が演った同じ噺を聴いてます。反省もするけど、それより、じゃあ次はどうしよう?って考えるタイプなので。落ち込みはしますが、上手な人の落語を聴いて修正してったほうがいいじゃないですか。 でも、かなりシュンとしたときは友達と飲みに行きます。そういうときはあんまり一人でいたくないんですよね。うちの師匠の教え方って「死なない程度に頑張れ」って感じなんですけど、落語って本当に正解がない分、考え込むとものすごく苦しくなっちゃうから。 あと、上質な落語を聴いたときも、うわ~ってなって落ち込むことはありますよ。でも、これもできない、あれもできないって気持ちになったら前に進めなくなるので、無理しすぎず、それこそ何事も「死なない程度に頑張る」のが大事だなって思います。 高座はライブだから、自分ではいいかなと思ってもお客さまの反応がイマイチってこともあって、難しいんです。反対に「え?こんなにウケるんだ!」ってこともあるからそこが面白い。 毎日、ある意味勝負ですが楽しいです。黄色じゃなくて、どす黒い声援が聞こえてきたりするときもありますしね(笑)。【続きは2月22日公開】お楽しみに!
プロフィール 瀧川鯉斗落語家。公益社団法人落語芸術協会所属。愛知県名古屋市出身。 高校時代からバイクに傾倒し、17歳で地元暴走族の総長となる。 2002年、役者になることを夢見て上京。新宿の飲食店でアルバイトをしているときに現在の師匠瀧川鯉昇の落語独演会を見て感銘を受け、その場で弟子入りを直訴する。 2005年に前座。2009年4月、二ツ目昇進。 テレビドラマ「タイガー&ドラゴン」の小虎、テレビアニメ「昭和元禄落語心中」の与太郎を地でいくような、注目の若手落語家である。
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