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天秤座生まれのあなたへ贈る詩「風吹く理由」【文月悠光 12星座の恋愛詩】

ココロニプロロ / 2018年9月23日 16時55分

写真

18歳という若さで中原中也賞を受賞した詩人の文月悠光さん。詩のみならず、今の世を生きる女性として、誰もが感じる“生きづらさ”や“孤独”を綴ったエッセイ集も話題です。

このたび、そんな文月さんによる、12星座別「恋愛詩」の連載がスタート。毎月、月ごとの星座を主人公とした一篇を執筆していただきます。さらに、その詩をモチーフとしたコイズミリカさんの美しいイラストもお届け!



切なくて愛おしくて胸がキュンとする…詩とイラストのコラボレーションをお楽しみください。

■天秤座生まれのあなたへ



//// 風吹く理由 ////



街は季節のクローゼット。
はやりの洋服たちへ次々に袖を通す。
(どこへ行き着くつもり?)
問いかける声を振り切りながら、
風は無傷でありたくて吹く。
どんな景色も着こなしてしまう、
透明なわたしを見透かさないで。
風にひとすじの色をください。

「わたしから去らないのね?」
一本の木に見惚れて、立ちすくむ。
しなやかに振れる枝々よ、
わたしが何者であるのか
きみの手だけが教えてくれる。
この胸の鼓動ごと、
幹は抱きとめて揺れはじめた。
ゆるせずにいた文字の一粒一粒を
きみとわたしを洗う雨にかえよう。

くちづければ
もみじの赤さに染まり、
深まる秋を きみは恥じらう。
ここを去れないことは弱さじゃない。
きみが ちゃんと傷を包んで
大人になっていった証なのだ。
枯れゆくものが愛おしくて、
わたしはまた確かめるように
きみを揺らしてしまう。

///////////////////

【プロフィール】
誌:文月悠光(ふづき・ゆみ)
詩人。1991年北海道生まれ。16歳で現代詩手帖賞を受賞。高校3年の時に発表した第1詩集『適切な世界の適切ならざる私』(思潮社)で、中原中也賞、丸山豊記念現代詩賞を最年少で受賞。詩集に『屋根よりも深々と』(思潮社)、『わたしたちの猫』(ナナロク社)。近年は、エッセイ集『洗礼ダイアリー』(ポプラ社)、『臆病な詩人、街へ出る。』(立東舎)が若い世代を中心に話題に。NHK全国学校音楽コンクール課題曲の作詞、詩作の講座を開くなど広く活動中。

イラスト:コイズミリカ
イラストレーター。1989年生まれ。
2012年 東京工芸大学デザイン学科卒業。

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