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愛か?金か?漠然とした想像で結論を出すのは危険だ【カレー沢薫「アクマの辞典」第1回】

ココロニプロロ / 2017年8月12日 10時15分

愛か?金か?漠然とした想像で結論を出すのは危険だ【カレー沢薫「アクマの辞典」第1回】

OL兼漫画家として活躍するカレー沢薫さんの連載コラムがリニューアルして登場!
日常にあふれる様々なワードをカレー沢さん独自の視点で解釈していきます。
女の本性をあぶりだす新しい言葉の定義をとくとご覧あれ!

第1回 アクマの辞典

このコラムは「アクマの辞典」と題し、ア行からワ行まで、女や恋愛に関する様々なワードを取り上げる、というコーナーだ。
今回はさっそく「ん」だと言ったらやる気のねえ、しりとりみたいで面白いが当然「ア行」からだ。
お題の方は担当がピックアップしてくれた、まずアがこちらだ

愛、愛情、朝、明日、アスパラ、頭、新しい、アップル、熱い、暑い、厚化粧、アクアリウム、悪意、悪妻、悪魔、悪女、後味、天の邪鬼、アラサー、アラフォー、アルコール、慌てる、泡

アだけでこれだ、これがオまで続いている、多すぎて逆に全く選べない、むしろ1個しか選ばれないのに、よくこれだけ出してきたと思う、当然来月はカ行に移行し選ばれなかったア行の数十個は藻屑と化す。

しかしすでに、トップに避けては通れない、ワードが出て来てしまっているではないか、アスパラではない「愛」だ。

【ア】
「愛」 即効性がなく 効果は個人差あり 保険外

みんな、誰かを愛しているか、もしくは愛されているか?
答えはどうでもいい、何故なら愛は完全に自己申告制だからだ。
彼とはラブホどころか、最近は自分の軽自動車の後部座席でしか会わないし、そのたびに財布から2、3枚抜かれるが愛されている、もしくは、俺は働かないし、あいつの為に指一本動かすつもりはないが、愛している、と言われたら、そうかとしか言いようがない、目に見えぬもの故そういう相手を論破するのは難しいし、時間がもったいない。

でも、ないよりはあった方がいいだろう「愛」
しかし、中高生ならまだしも、大人になると愛だけで相手を選べなくなるのは確かだ。
相手の年収や職業を気にするのは、さも悪のように言われるが、良い年して全く気にしていない女は正直、詐欺師の懐に自ら飛び込んで行くカモみたいなものだ。その状況って怖くないだろうか。
愛があれば金なんてというか逆だ、自分に金があれば、相手の年収なんて気にしなくていい、そして持っている金が多ければ多いほど、相手が金のかかる趣味を持っていようが、ギャンブル狂だろうが関係なくなる、つまり金があれば愛だけで結婚することができるのである。

しかし、愛があれば金なんて、が全くなりたたないわけではない、金はあるが、愛のない相手に一生モラハラを受けて暮らすなら、金はなくても愛がある相手と結婚した方が幸せかもしれない。
しかし、金がないのはないのでやはりツライことだ、よって、それが愛でカバーできることなのかちゃんと考えておくべきだろう。
しかし、ここで想像する貧乏像を「食うものがない、電気を止められる」等、漠然としたテンプレ貧乏にするのは危険だ。漠然とした貧乏像であるがゆえに、愛という漠然としたもので乗り切れるような気がしてしまうからだ。
よって、水や食い物等、万人が必要とするものではなく、自分にとっての必需品が買えない、または節約しなければいけない状態を考えた方が良いだろう。

私なら、ロキソニンと便秘薬だ。
わかる人にはわかるだろうが、わからない奴には全然わからない物だ。確かに命に別状はない、だがこれがないと、苦痛で不愉快な時間を月に数度確実に耐えなければいけないのである。
そして苦痛かつ不愉快な状態で、隣には、その原因の一端を担うパートナーがいる、持続できるだろうか、愛を。
しかも自分にとっての必需品なので相手にわかってもらえない可能性も高い「ウンコぐらい根性で出せ」と根性論を持ち出されたら、そこでライフイズオーバーだ。
この人と一緒なら、電気水道止められても平気、みたいな極論で考えると逆に想像力が働かなくなってしまうのだ。
「この人と一緒ならコンタクトの保存液買えなくても平気」とか、もっと身近なもので考えてみた方が良いだろう。

【イ】
「いい男」
顔や年収だけではなく、家事能力も求められる『女がなにもしなくて‘いい男’』のこと

【ウ】
「占い」
今の不調を自分以外の何かのせいにしてもらいにいくところ。

【エ】
「エス」
聞き分けがなく乱暴な女の自己紹介。『私Sってよく言われるんだよね』

【オ】
「オウンゴール」
『ブスすぎ(汗)』とあげたキメ顔自撮りに1件も『そんなことないよ』リプがつかないこと

プロフィール

カレー沢薫
OLであり漫画家、コラムニスト。1982年生まれ。2009年に『クレムリン』(講談社)で漫画家デビューを飾る。秀逸な言語感覚で繰り広げられる切れ味鋭い世界観が人気。こよなく猫を愛し、猫が登場する作品も多数。最新著作『ブスの本懐』(太田出版)を2016年11月16日に発売。

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