「Motionloft」――コンピュータビジョンが行動分析に革命を起こす(後編)【シリコンバレー直送便】

CodeZine / 2019年5月20日 11時0分

 本連載では、米国西海岸はシリコンバレーから、旬なスタートアップの情報を厳選してお届けする。第1回の後編では、前編に引き続き、コンピュータビジョンによる行動分析を可能にするシリコンバレーのスタートアップMotionloft社の紹介を行う。後編では、同社のソリューションの技術的詳細を解説し、個人の属性情報を把握するときに避けて通れないプライバシー保護とセキュリティの緊張関係にどのように同社が対処しているのか、また日本市場に対する評価と今後のロードマップについてお届けする。

「Motionloft」――コンピュータビジョンが行動分析に革命を起こす(前編)【シリコンバレー直送便】

連載で取り上げる企業と着目点

 本連載で、主に対象とするスタートアップは、ある程度米国でのビジネスの地歩が固まり、日本を含む海外展開を視野に入れ始めたステージを想定している。単なる企業やソリューションの紹介にとどまらず、それらが注目されるに至った背景――米国でのビジネストレンドの変遷や技術的進歩――もあわせてお伝えすることで、読者の皆さんのビジネスにおけるヒントになれば幸いだ。

■Motionloftのアーキテクチャと技術的特徴

 さてそれでは早速、MotionloftのViMOを他のコンピュータビジョンのソリューションから差別化する技術的要素について見ていきたい。大きく以下の2つが挙げられる。
画像処理をセンサーデバイスで完結させることによるセキュリティの高さ
センサーデバイスまで自社で作成することで、屋外における全天候対応を実現

 まず1つ目の観点であるが、ViMOは画像処理をセンサー内で完結させている。センサーは対象を30fpsのレートで把握し、取得された各フレームはリアルタイムで画像処理されていく。ViMOはNVIDIAのGPUを搭載し、組み込みUbuntuの上でニューラルネットワークによる画像処理を実行する。この画像処理で出力される情報は、撮影対象の重心の三次元座標と属性(人間ならば性別と年齢階級、車ならばバス、トラック、セダンなどの車種)である。座標は、対象物の移動の軌跡を再現するために利用される。

 処理が終わったフレームは即座に削除され、また座標から撮影対象を再構成することは原理的にできないため、撮影済みのフレームを含む個人情報が外部に漏洩するリスクは極めて低い。

 このように、エッジデバイスで匿名化を完結させることで、非常に高いレベルのデータ保護を実現しているのが、Motionloftの一つ目の特徴である。なお付言すると、この方法にはもう一つの利点がある。それは、画像データをクラウドに送信する必要がないため、帯域の細い携帯回線でも利用できることである。これは、次に述べるハードウェアの工夫と相まって、屋外で利用する場合にはほぼ必須となる要件である。

センサーデバイスで取得されたデータは統計データへと変換され、デバイスからクラウドへは統計データのみが送信される。

 2つ目の観点であるが、ViMOは、ソフトウェアとハードウェアを垂直統合したプロプライエタリなセンサーデバイスであり、屋外での全天候に対応することができる。摂氏マイナス40度から50度までの幅広い気温で稼働し、夕闇程度の明るさならば撮影が可能である。

 「基本的には、人間が見ることのできるレベルの明るさがあればViMOもまた見ることができます」(APACアカウントマネージャーの金本氏)

2つのセンサーを備えたViMO。Motionloftが独自に製造しており、屋外の悪環境にも耐える設計となっている。

 センサーデバイスを用いた行動トラッキングのソリューションの多くは、店舗内での利用を想定したものが多い。実際、リテール向けに特化すればそのような割り切った選択も可能であるが、Motionloftはショッピングモールのような広域でのヒートマップ分析や、小売店の出店計画調査、スマートシティにおける人流・車流の把握といった高度なユースケースも想定しているため、屋外での使用に堪える設計を重視している。「屋内と屋外で同じクオリティで情報を取得できるのが我々の大きな強みだ」とVP of EngineeringのPaul氏は言う。

ミック[著]

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