「震災復興どころか、それを支える日本のものづくりも終わる」無策な政治にトヨタの悲鳴! トヨタ自動車決算発表【特集・コラム:ビジネス・経済】
CORISM / 2011年5月12日 2時15分
連結営業利益は、前期の約3.2倍、4,682億円
トヨタ自動車は、今期の売上高18兆9,936億円、営業利益4,682億円と発表した。売上高こそ微増だが、営業利益は前期の約3.2倍と大幅に向上。リーマンショックに品質問題と、たび重なる逆境を乗り越え、強い経営基盤を見せつける結果になった。
大幅な利益向上要因は、営業面の努力や原価改善によるものと、日本を除く海外での収益が好調だった。とくに、アジアでの大幅な販売台数アップがけん引した。
とりあえず、震災損失は1100億円だが・・・
震災の影響での震災損失は1100億円。しかし、これは3月分ということであって長引く震災復興の過程では、来季はさらに膨らむ可能性もある。とくに、懸念されるのは国内での販売台数。4~6月の工場稼働率が50%程度。単純に販売台数も50%ダウンと仮定すると、今期の約190万台の販売台数だったものが、7月以降平常の生産に戻ったとしても150万台割れが懸念される。
そんな全く見通しの立たない生産状況もあり、来季の見通しについては、コメントを差し控えるという異例の決算発表会となった。
震災復興のため雇用確保をしたいが、工場の稼働率低下や電力不足、そして超円高がトヨタの足を引っ張る
記者会見場で豊田章男社長は「トヨタは、日本で生まれ育った企業。より早く震災復興をするためにも、トヨタは雇用をいかに守るかを考えている。日本のモノづくりを守りたい」とコメント。
そんなトヨタの想いも外部環境に阻害される。今期トヨタ単体では、4,809億円の赤字となった。前期よりも1,529億円も増えた。その多くは3,300億円もの為替損失。前期比ドルで7円、ユーロで18円もの円高が進んだためだ。トヨタが今期目指していた「750万台生産、為替85円で5%の営業利益」を大幅に割り込む80円台という急激な円高が足を引っ張っている。
さらに、夏の電力不足や噂される増税による消費マインドの低下、さらには電力料金の値上げ。どれをとっても、震災復興=雇用の確保を目指す企業にとって、なにひとつ良い材料は見つからない。
「いち企業の努力の限界を超えている」小澤副社長の悲痛な想いと、無力な政治
日本国内での生産にこだわり、雇用とモノづくり、世界一の自動車メーカーの義務としての納税を守っていきたいトヨタにとって、グローバルでの戦いはすでにハンデ戦となっている。通貨安の恩恵を受け、韓国&ドイツ勢の台頭がいい例だ。さらに、震災という大きな痛手まで負った。
今回の震災でリスク回避のために「日本ではなく海外に生産拠点を」と考える部品メーカーも多い。企業という存在維持を考えるのなら、それも生き残る道だが日本の産業は空洞化し日本の企業だが働く場所がなくなってしまう。つまり、日本のモノづくりの消滅だ。「グローバル競争力」という大義名分を武器に、海外へ脱出するだろう。すでに、そんな流れも着実に進んでいて、日産自動車は昨年主力小型車マーチをタイで生産し日本へ逆輸入を始めている。
円高だけならまだましだが、震災というハンデを背負ったトヨタにとって、もはや海外の企業と同じ土俵では戦えないほどになったということだ。
小澤副社長の「いち企業の努力の限界を超えている」というコメントは、なにもトヨタだけに限ったことではなく、すべての製造業に当てはまる。世界一の自動車メーカーが悲痛な叫び声を上げているということは、裾野の広い末端の製造メーカーは、もはや声も涙も出しつくした感もある。それだけ緊迫した状態なのだ。
そんな中、なんの経済刺激策も打ち出せない民間任せな無力な政治が足を引っ張っている。
「もはや、トヨタも日本に居られなくなる」そんな言葉が出るほど、無策な政治
このままの状態が続けば、残念ながらトヨタも日本を脱出せざるおえない、そんな言葉が聞こえてくる。震災復興で大きな痛手を負った多くのグローバル企業にとって、ただでさえ異常な円高に加え増税や電気料金のアップなどは、余命宣告をされたようなものだろう。多くの日本企業が、海外へ脱出したらどうなるか? 産業の空洞化は、震災復興の足かせになるのは確実だ。
震災復興の方法は、各社知恵を出し乗り越えられるとしても、異常な円高は企業がなんとかできるものではない。今回のトヨタの悲痛なまでの叫び声は、せめて、企業が継続して復興支援ができるように、何らかの円高対策してほしいとの要請でもある。
今回のトヨタの決算を聞いて、政府はまだまだイケると思うのか、それともかなり危機感を抱くのか、どちらだろうか? それとも無関心か? 日本政府の実力が試される、が・・・。
【関連記事】
- 【スクープ】がんばれトヨタ! 発売延期中のプリウスα(アルファ)の発売時期・価格・燃費が見えてきた!!
- 【スクープ!】今年一番の話題作「プリウスワゴン(仮称)」の国内名称は「プリウス α(アルファ)」詳細情報を入手![国沢光宏 コラム]
- プリウスに新たなファミリー、噂のプリウスα(アルファ)!?「PRIUS Space Consept(プリウス スペースコンセプト)」日本仕様を初公開
- トヨタ車試乗記一覧
- 【スクープ!】ヴィッツ級ハイブリッド車は「ヴィッツ」にあらず! トヨタ、ヴィッツ級ハイブリッド車は新ブランドに決定か
- 【新車・中古車購入術】安全性重視のクルマ選び! 買ってはいけない? or 買っていい! 5ナンバーミニバン[トヨタ編]
この記事に関連するニュース
-
「足場固め」のトヨタ、26.4%減益は自信の表れ ソフトウェア時代を見据えた顧客接点も強化
東洋経済オンライン / 2024年11月18日 7時50分
-
ホンダ【7267】の株価はなぜ上がらない? 配当利回り4.9%に 株価急落はチャンス? 苦戦の中国の打開策とは
Finasee / 2024年11月18日 6時0分
-
日本初の営業益5兆円を達成したトヨタ自動車、最新決算に見る今後 メキシコへ投資拡大もトランプ氏勝利で再燃する関税懸念の行方
Finasee / 2024年11月14日 6時0分
-
「巨額赤字」日野自動車、大底脱すも見えない進路 財務指標は悪化の一途、統合の行方も見えず
東洋経済オンライン / 2024年11月9日 8時10分
-
2024年9月中間決算、トヨタの最終益26.4%減、ホンダも19.7%減[新聞ウォッチ]
レスポンス / 2024年11月7日 9時0分
ランキング
-
1ブランド物を欲しがる人と推し活する人の共通点 囚われの身になってしまう、偶像崇拝者たち
東洋経済オンライン / 2024年11月21日 14時30分
-
2「無人餃子」閉店ラッシュの中、なぜスーパーの冷凍餃子は“復権”できたのか
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月20日 6時15分
-
3「サトウの切り餅」値上げ 来年3月に約11~12%
共同通信 / 2024年11月21日 19時47分
-
4食用コオロギ会社、破産へ 徳島、消費者の忌避感強く
共同通信 / 2024年11月21日 18時25分
-
5さすがに価格が安すぎた? 『ニトリ』外食事業をわずか3年8カ月で撤退の原因を担当者に直撃「さまざまな取り組みを実施しましたが…」
集英社オンライン / 2024年11月21日 16時49分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください