911よりも刺激的!【ポルシェ ケイマンR試乗記】【レビュー:ポルシェ】
CORISM / 2012年1月20日 8時8分
911よりもピュアなスポーツカー、ケイマンR
ポルシェと言えば、多くの人は911と連想する。その911の陰に隠れてしまったのがオープンカーのボクスターとそのクーペ版のケイマンだ。両車はエンジンをミッドシップに搭載し完全な2シーター。狭いとはいえ4人乗りの911よりピュアなスポーツカーでもある。販売戦略で911より価格、性能も越えないボクスター、ケイマンであるが、軽量化と性能アップしたボクスター・スパイダーに続き、ケイマンRが発売され、幸運にもそのケイマンRに試乗出来た。
エクステリアはベリドット・メタリックと呼ばれる明るいグリーンの車体色、固定式の大型リアスポイラーを装備し、車高も明らかに低い(−20mm)。開閉時の軽さを実感できるドアはアルミニウム製に変更されて、軽量バケットシートが装備。オプションとなるエアコンとオーディオを装備しない状態では、55kg軽量に仕上がっている。
乗れば乗るほど、高まる一体感
硬派のスポーツカーの匂いがたちこめた、バケットシートに身体を預け、左手でイグニッションキーを回すと、予想に反して静かにエンジンが始動した。クラッチペダルはやや重め。困る程ではなく、軽快にスパスパとギヤに入るシフトレバーとのタイミングが取りやすい。
乗り心地は適度な固さがあるが、ゴツゴツはしていない。911シリーズの硬派グレードであるGT3よりしなやかに感じた。試乗車は高価なオプションのPCCB(ポルシェ・セラミック・コンポジット・ブレーキ)を装備していて(141.8万円)、バネ下は標準車より明らかに軽く感じる。このフットワークの軽快さを知ってしまうとPCCBは無理して欲しくなる装備だ。試乗時に都内の渋滞に1時間程遭遇したが、シフト操作するのも楽しくクラッチ操作も苦痛ではない。乗れば乗るほどクルマとの一体感が増し、渋滞の中でもクルマを運転する事が純粋に楽しめた。
高速道路に入ると、スポーツカーとしては静かだったエンジン音も容赦なく侵入してくる。音に対する感覚は個人差が大きいが、室内で聞く音に私は“騒音”ではなく“サウンド”に聞こえる。一部の高級スポーツカーのような調律の取れたサウンドでは無いが、回転計の針が頂点を目指す時の“サウンド”とクルマのスピードがシンクロしていて気持ち良い。
アイドリング時は、フライホイールが軽いようなやや粗い回転をする3.4Lフラット6エンジンはケイマンSより+10PSアップの330PS。1340kgの車両重量には充分の速さで、スタートから100km/hまでは5秒ほど。恐怖を感じるほど速くはなく、丁度良い加速感が気持ち良く感じる。回せば力がドンドン沸き上がるエンジンであるが、低回転でもトルクはしっかりあり、4速40km/hからでも加速をする。2000回転を越えれば周囲のクルマをリードし、そのままレッドゾーンまでアクセルを踏み続ければ200km/hに到達する。
911ブランドに押され気味のブランド力
驚いたのは、高速の安定性と操縦性の高度の両立である。スピードを出せば出すほど、路面に車体が吸い付き、軽く手を添えているだけで直進する。一方コーナリングはターンインで鋭くノーズがインに向かって切れ込んでいく。自分の考えたラインを容易にクルマがトレース出来るので、気持ち良く運転出来る。
高速道路を休憩無しで一気に200km走ったがクルマが安定しているので疲れは感じなかった。燃費も良く、周囲の流れに乗って走っていると都内でも8km/L、高速道路で周囲の流れをリードするような走りでも9km/L台であった。
スポーツカーとしての性能、刺激がありながら実用性を兼ね備えたケイマンRにすっかり心が囚われてしまった。全てが丁度良くバランスが取れてスペックより感覚的な速さ、気持ち良さに溢れた大人のスポーツカーである。
欠点としては2シーターによる実用性の低さと、高価である事。一番のライバル車は911カレラ。ピュアなスポーツカーを欲しい人にはケイマンRの方が良いだろうが、911の伝統には負け気味である。もし、私がケイマンRを購入するとしたらPDKもあるが、速さより運転する気持ち良さを優先しMTを選択する。重量増には目を瞑ってエアコンとカーナビ、そしてPCCBを頑張って装着すると約1200万円。とても高価であるがケイマンRは全てを犠牲にしても欲しくさせる魅力的なクルマだ。
代表グレード | ポルシェ ケイマンR |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,345×1,800×1,285mm |
車両重量[kg] | 1,340kg |
総排気量[cc] | 3,436cc |
エンジン最高出力 | 243 kW (330 PS) |
エンジン最大トルク | 370 N・m |
ミッション | 6速MT |
最高速 | 282km/h |
0-100km/h加速 | 5.0秒 |
定員[人] | 2人 |
税込価格[円] | 9,800,000円 |
レポート | 丸山和敏 |
写真 | 編集部 |
【関連記事】
- 【ポルシェ パナメーラV6 新車試乗記】スポーツサルーンにとって何よりの武器、それは”軽さ”だ
- V8、5Lハイブリッド搭載か? FRハイブリッドスポーツカー【レクサスLF-LC新車情報】
- 想像を超える完成度を誇るドイツの新スポーツカーメーカー【アルテガGT試乗記】
- 祝! 待望の名車復活。しかし、その影に空洞化という現実も【新型ホンダNSXコンセプト】デトロイトモーターショー2012
- 進化し続ける日本屈指のスーパーカー【日産GT-R試乗記】
- 【メルセデス・ベンツ SLS AMG 試乗記】ガルウイングはハッタリか? SLS AMGの実力を暴く!
- 【アウディ R8 5.2FSIクワトロ 試乗記】待望のトップモデルは走りも快適性も一級品!
この記事に関連するニュース
-
マセラティの新型V6エンジン「ネットゥーノ」を味わって気づいた、バルサミコ酢との意外な共通点とは
レスポンス / 2024年5月1日 12時0分
-
メルセデスの新型車「CLE」に試乗! 2ドアクーペの本質は堪能できる?
マイナビニュース / 2024年4月17日 11時30分
-
ポルシェの「タマゴ型“ミニバン”」!? 運転席は“真ん中”&3ドア仕様!? もはや“ファミリーカー”じゃない斬新すぎる「レンディエンスト」 とは
くるまのニュース / 2024年4月15日 12時30分
-
5速MT搭載! スズキ新型「快速ハッチ」に驚いた!? アンダー200万円の新型「スイフト」がスゴい! 実力は?
くるまのニュース / 2024年4月12日 12時50分
-
マツダ新型「“ロータリー”スポーツ」市販化へ! ポルシェ級スペック? 2ローター搭載!? どんなクルマに仕上がるのか
くるまのニュース / 2024年4月9日 18時10分
ランキング
-
1日本の名目GDP、2025年にインドに抜かれ世界5位へ…円安でドル換算が目減り
読売新聞 / 2024年5月5日 18時59分
-
2相鉄線「屈指の閑散駅」ついに一新へ! 大幅イメチェン&新改札も 完成時期は?
乗りものニュース / 2024年5月4日 8時42分
-
3投資家・バフェット氏、AIによる詐欺「史上最高の成長産業になる」…皮肉を込め警鐘
読売新聞 / 2024年5月5日 19時57分
-
4「有料化」されたのはレジ袋だけではない? 有料化のレールにのったモノにはどんなものがある?
ファイナンシャルフィールド / 2024年5月4日 3時0分
-
5コスパの高さが異常…スズキの新型軽「スペーシア」が、「これで153万円は安すぎる」と絶賛されている理由
プレジデントオンライン / 2024年5月5日 11時15分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください