200万円を切ったグレードも? 10年後の名車を目指し、期待を背負ったFRスポーツカー【新型トヨタ86新車情報】【ニュース・トピックス:トヨタ】
CORISM / 2012年2月2日 12時50分
パワフルなのに、意外と低燃費な直噴水平対向エンジン。しかし、アイドリングストップ機能は無し
トヨタは、小型FRスポーツカー「86(ハチロク)」を発表し、4月6日より発売を開始する。
この新型トヨタ86(ハチロク)は、スバルとの共同開発車。スバルの水平対向エンジンにトヨタの直噴技術D-4Sを組み合わせ、エンジンをフロントミッドシップに搭載し後輪を駆動するFRスポーツカーだ。スバルもBRZという名で発売する。
86(ハチロク)という名前は、1980年代にヒットしたスポーツカーであるカローラ・レビン/スプリンター・トレノの型式AE86に由来する。当時は、カスタマイズ暗黒時代。タイヤ&ホイール、マフラー交換程度でも、ディーラーでは整備を受け付けてもらえない状態。そんな中、AE86絶大な人気を誇り、オーナーたちはカスタマイズ暗黒時代であっても、それぞれが自分だけのハチロクを目指してカスタマイズを楽しんでいた。そんなオーナーそれぞれに育ててもらえ、クルマをもっと楽しんで欲しいという想いから名付けられた。
新型トヨタ86に搭載されるエンジンは、スバルの水平対向エンジンにトヨタの直噴とポート噴射を使い分けるツインインジェクターを採用した。圧縮比も12.5という高圧縮比。最高出力は7000回転で200馬力となっているが、8000回転で225馬力を発生するシビック・タイプRほどではない。ただ、低回転でトルクを稼ぐ最近のエンジントレンドの中では稀な高回転型エンジンだ。これだけのパワーを出しながら、86のGグレード6MTで13.0km/L(JC08)となかなかの燃費性能。マツダ ロードスターRSの6MTが11.8km/Lとなっている。
ただ、ポルシェや多くのスポーツカーにでさえ最近ではアイドリングストップ機能が装着される時代だ。ハイブリッド車でエコをアピールするトヨタだけに、この86にもアイドリングストップ機能を装着して、通常走行時の低燃費にもこだわって欲しかった。
トヨタ86は、燃費にも優れた直噴水平対向エンジンをフロントミッドシップに搭載。重量配分は53:47。水平対向エンジンのメリットを生かし、低重心化をすることでスポーツカーらしいフットワークを実現した。重心高は460mmとなっていて、ヒップポイントはトヨタブランド車の中で、最も低い。路面にピタっと張り付くような走行フィールもこういった低重心化が生かされている。
プラットフォームは、リヤサスがダブルウィッシュボーンを奢る。スペック的には、インプレッサの臭いがするが、トヨタは新設計だという。このリヤサスも86の美点。しっかりと路面を掴み、高いトラクションを性能を発揮する。
水平対向エンジンに組み合わされるミッションは、6MTと6ATの2タイプ。ATはツインクラッチタイプではなく普通のトルコン式のATだ。ただ、このATも良くできていてブリッピング制御付きで、Mモードにすると低速からロックアップするため、ダイレクト感のあるフィーリングになる。6MTはクラッチや6速MTのフィーリングにもこだわり、爽快なシフトフィールを追求した。クラッチのつながりも違和感無く、誰でもすぐになれる素直なものだ。
■走りを楽しみドライバーを育む懐の深いスポーツカー【新型トヨタ86 プロトタイプ試乗記】
■トヨタ86/スバルBRZファンサイト「FT86-Life」
名車へのスタートラインに着いたばかりのトヨタ86! 10年後に期待!!
エクステリアデザインは、分かりやすい古典的なスポーツカーのルックス。滑らかでボリュームのあるリヤフェンダーは、いかにもFRらしいプロポーションだ。40歳代から上のクルマ好きには、馴染みやすいスタイルともいえる。トヨタ86のデザインは多数決で決めるようなものではなく、こだわり抜いて少人数で決めたというが、意外と無難にまとめられている。ただ、無難な分だけイジリがいがあるというもので、色々なボディパーツを受け入れられるデザインだ。
インテリアも派手さはない。こちらも古典的なスポーティな雰囲気でまとめられている。3眼の視認性の高いメーターや、バケットタイプのシートはスポーツドライビング時に、しっかりと体を支えることはもちろん、シフト操作時に肘がシートに当たらないなどこだわり深い仕様になっている。全体的に悪く言うとチープだが、良く言うとシンプル。あまりゴチャゴチャしていないメーターまわりには好感がもてる。ここもカスタマイズ魂がアツくなる部分だ。
トヨタ86のエントリーグレード、RCの価格は199万円。一見安いと思うが、これはほとんどレース用車両を作るためのベース車みたいなもの。エアコンも付いていないので、なかなか選ぶことはできないモデル。
では、その上のGになると6MTで241万円とイッキに高価になる。その分、装備は充実するが、トルセンLSDは6MTのみのオプション。ディスチャージライトもオプションになる。また、細かい所では本革ステアリングではなかったり、デジタスピードメーターやREVインジケーターがなかったりする。ある意味、すぐにカスタマイズするためのベース車として選ぶのならいいが、しばらくはノーマルで乗るには少々装備がシンプルだ。
そうなると、やはりGTグレードからが実質的に外しのないグレードになるだろう。価格は、グーンとアップして279万円(6MT)となる。さすがに、この価格になると20歳代の若年層が購入するには、かなりハードルが高い。トヨタがそれでも若年層に86を売りたいのなら、初期段階から超低金利高額残価設定型ローンなどを設定して、買いやすさをアピールする必要もあるだろう。
トヨタは、その昔アルテッツァというスポーツセダンで86と同様にカスタマイズ層を巻き込み色々なプロモーションを行った。アルテッツァのワンメイクレースを主催したりと、その手法は86とほぼ同じ。その後は、残念ながら尻切れトンボ状態で、アルテッツァは絶版車となった。そんな過去と同じ道を86が歩まないようにジックリと育てほしい。
さて、トヨタは86をAE86と同じように、カスタマイズマーケット中心に育てたいという。確かにAE86はカスタマイズマーケットで絶大な人気を誇り、まさにその通りなのだが、今と大きく違うのは当時のカスタマイズマーケットは違法。完全なアンダーグラウンドな世界だ。マフラーやタイヤ&ホイールの交換だけでも、トヨタディーラーに入店することすら許されなかった。トヨタでは車検はおろか、点検さえNGだから、ハードにカスタマイズしたユーザーは、いわゆる闇車検に手を出していた。その時は、トヨタもノーマルのAE86しか認めていなかった。そんな対応をしていたのに、時代が変われば当時を絶賛するのもご都合主義的に見えてくる。
スズキのスイフトスポーツは、安価なスポーツカーとして人気車種だ。実際、スズキが積極的にカスタマイズマーケットに働きかけることがなくても、このクルマのマーケットは盛り上がっている。極論だが、クルマが良ければ何もしなくてもカスタマイズマーケットは勝手に盛り上がる。トヨタすらも当時は不法改造と言っていたAE86も、まさにそんなクルマで名車と呼ばれるようになった。
トヨタ86が名車になるのか? ならないのか? それは10年後くらいに分かるだろう。トヨタ86は、今、希望に満ちたスタートラインに着いたばかりだ。
■走りを楽しみドライバーを育む懐の深いスポーツカー【新型トヨタ86 プロトタイプ試乗記】
代表グレード | トヨタ86(ハチロク)GT 6MTスペック |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4240×1775×1300mm(アンテナ含む) |
ホイールベース[mm] | 2570mm |
トレッド前後[mm] | F:1520mm R:1540mm |
乗車定員 | 4名 |
エンジン種類 | 水平対向4気筒 直噴DOHC |
ボア×ストローク[mm] | 86mm×86mm |
総排気量[CC] | 1998CC |
エンジン最高出力[ps(kw)/rpm] | 200ps(147kw)/7000rpm |
エンジン最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] | 20.9kg-m(205N・m)/6600rpm |
ミッション | 6速MT(6速ATもあり) |
駆動方式 | FR |
サスペンション | F:ストラット R:ダブルウィッシュボーン |
ブレーキ | F&R:Vディクス |
タイヤサイズ | F&R:215/45R17 |
燃料タンク容量 | 50L |
燃料 | 無鉛プレミアムガソリン |
発売日 | 2012年4月6日 |
価格 | 279万円 |
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