最も充電環境が整った電気自動車天国 沖縄を走る!【日産リーフ試乗記】【レビュー:日産】
CORISM / 2012年2月23日 8時8分
エンジン車には無いEVの魅力を自然の中で体感する!
電気自動車という新しい乗り物に興味を持つものの、残念ながら日産リーフを購入しなかった大きな理由のひとつが航続距離だという。日産リーフの航続距離は、JC08モードで200km。いわゆるカタログ数値なので、実際にはここまで走ることはほとんどなく、使用環境によるのだが120~160kmが相場といわれている。
まぁ、ガソリン車に比べれば確かに走行可能距離は短い。その上、充電インフラもそれほど整っているとは言えないので、保守的な人にはEVは向いていないだろう。充電インフラという部分だけを抜き取って考えれば、EVはイノベーター向きの商品かもしれない。
そんな、日産リーフを沖縄で乗った。以前、軽井沢までリーフで行ったことがある。沖縄でも、その時と同様な爽快さをまず感じることができた。当たり前だが、EVにはエンジンがない。そのため、豊かな自然環境の中で乗ると、格別な爽快感を感じることができる。軽井沢では、スピードを抑えると鳥の声さえも聞けた。沖縄では、波の音が聞こえる。ゼロ・エミッションという大義名分もあるが、今までのクルマにはない楽しみ方もある。これは、現在EVイノベーターのみに許された特権だ。
閉ざされた島の自然環境がリーフにピッタリな空間になった
日産がわざわざ沖縄でリーフに乗せるには、当然ワケがある。沖縄は全国で最もEVの充電環境が整っているからだ。沖縄は南北に約130km、東西に約30kmという島。クルマで県外に出ることは、ほとんどない。
この島という閉ざされた環境は、リーフの航続距離というネガ要素を払拭する魅力をもっている。島を南北に縦断しても、約130kmなのでリーフの航続距離的に十分なのだ。とくに、観光に使うレンタカーは、平均すると3日間で200km程度の走行距離だという。この距離ならば、1~2回の充電で十分。ほとんど、普通のクルマとして使える。さらに、ゼロ・エミッションなので島の環境にいいのは当然で、ゆっくりと走れば波の音や鳥のさえずりも聞こえるのだから、観光用レンタカーとしてはベストな選択だろう。これをリーフの沖縄ガラパゴス化というのだろうか。
もし、沖縄を訪れることがあったなら、一度リーフをレンタカーとして使ってみるといい。旅行を楽しむツールとしてももちろんだが、自宅に帰ってから自分の生活に使えるかどうか数日間かけてチェックできるチャンスでもある。短い航続距離という数字から入る先入観よりも、実際に使っていると、意外と「これで十分」という気持ちになる人も多いと思う。
まだ改善が必要なAECのサービス。充電設備を備えたファミマ店舗の社会インフラとしての価値に未来を感じる
沖縄が特殊なのは、島という環境だけではなく充電環境も同様だ。多くの場合、急速充電器をメインとした充電設備は、県や市といった行政、日産などが中心になりインフラ整備が行われているのが現状。そこに、若干だが民間でもEVに理解がある企業が充電器を設置している。
しかし、沖縄の島という閉ざされた環境をメリットに、充電設備に関しては㈱AECという民間企業が沖縄自動車道を含め18カ所27基の充電器を設置している。儲からないと言われている充電器でのビジネスに対して、AECはレンタカーを借りる時に2000円の登録料を徴収し、利用料は0円としている。3日間で200km前後という走行距離を考えると、1km10円計算。プリウスなどハイブリッド車を借り、燃費は20km/L走りガソリン代が130円/Lで計算すると1300円なので少々割高。普通のガソリン車なら、同等程度といったところ。使用料は0円なので、とにかくたくさん走った分だけ安くはなる。2000円という登録料は安くはないが、便利にEVを使える環境が整うなら価値はある。
ただ、このサービスまだまだ改善が必要。それは、実際に充電するときに起きた。レンタカーを借り、お金を払うとAECの認証カードが渡される。充電するときに、このカードで認証するのだが、ネットワークエラーで認証できなかったのだ。まぁ、よくある話なのだが、この後の対応が最悪だ。CALL書かれたボタンを押しても一切反応がない。困った私は、充電器のまわりを探し、ようやく問い合わせ先の電話番号を見つけた。そこに電話をかけたのだが、オペレーターは事情を聞くだけだ。こちらは、とっとと充電したいのに。遠隔操作ができるのなら、認証カードのナンバーいえば充電できるようにすればいい。これで、すでに1時間が経過した。電欠間際の状態で、完全に放置だった。期待を持ちEVに乗ったはいいが、EVには関係ない充電でつまずくとEV嫌いになってしまうではないか。充電できない最悪の想定したユーザーへのフォローが無策だった。ちなみに、フリーダイヤルではないので通話料も個人持ちというオチもある。
遅々として進まない高速道路上の充電器設置だが、NEXCOなども認証システムを導入している。色々と調べたいのも分かるが、システムを複雑にすればするほど、上記のようにトラブルになると困るケースが多くなる。
設置場所は十分。設置台数は、沖縄にあるレンタカーのリーフは220台前後。この台数なら、それほど問題がないように感じた。リーフの台数が増えた場合、使用頻度の高い場所にはさらに増設の必要があるだろう。
沖縄を訪れたのが2月という閑散期で、貸し出されているレンタカーも少ないということもあり、10ヶ所程度の充電設備を見たが、ほとんど待ち時間はない状況だった。
このAECの他にも、当然、日産のディーラでの充電も可能であり、一部のホテルには普通充電設備もあるという。そうなると、沖縄でリーフを乗るには電欠の心配はほぼない状態。
感心したのは、沖縄ファミリーマート。商品の購入だけでなく、多彩なサービスを提供するコンビニ。これに、充電設備が加われば、社会インフラとしての価値は一段と高まると予感させられた。
EVは、まだ創世記といえる状態。充電インフラに関しては、まだまだ試行錯誤が繰り返されるだろう。恐らくインフラが問題でEVが消えるかといえば、そんなこともない。今は多少不便でも、ドンドンと改善が進む。すでに、HEMS(ホームエネルギーマネジメントシステム)など、EVを家庭電源の一部として使う実証実験が進められていてクルマ以外のバリューも高まる。日産リーフも、今はEVイノベーターが中心だが確実に普及するだろう。
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