全長5m全幅2m車重2トン超の巨大なFF車なのに、超低燃費なエコブーストってなんだ?【フォード エクスプローラー試乗記】【レビュー:フォード】
CORISM / 2012年3月14日 8時8分
2トン超ボディに2Lエンジンで大丈夫? 低燃費エコブーストとは?
EcoBoost(エコブースト)とは、フォードの環境性能をアップさせた新世代エンジンだ。考え方はVWのTSIエンジンと同じで、小排気量&過給器を組み合わせ低回転で大トルクを得る。低回転で大トルクがあると、エンジンの回転を上げなくても高いギヤを使い速度を上げることができ低燃費化できるメリットがある。今回、フォードエクスプローラーに搭載されたエコブーストも、そんな目的を持ったエンジンだ。
2011年5月にフルモデルチェンジし日本に上陸したフォード エクスプローラー。モノコックボディ構造へ変更され、すべてが新しくなり高級SUVとしての価値が上がった。しかし、日本や欧州を中心とした急加速している低燃費化への対応は遅れ気味。3.5Lガソリンエンジン車の10・15モード燃費は、7.6km/Lと旧型に比べれば圧倒的に燃費アップしたものの日本車や欧州車のトップレベルの低燃費車と肩を並べるほどではないのが現実だった。
そんな状況下にあったフォード エクスプローラーに、ダウンサイジングしたエコブーストがあると知ったときは、ついに、アメ車が燃費で世界と会話できるレベルに来たのかと、期待が高まった。
高まる期待の中、エクスプローラー エコブーストとご対面。しかし! ボクにとっては、想像を絶する事実が待っていた。なんと、なんとエコブースト車はFFのみなのである。スタイル同様に、エクスプローラーのウリのひとつで、最も誇ってもいい優れた走破性能をもつ4WDシステム、テレイン・マネージメント・システムがないなんて、おいおい、冗談でしょ? 状態だ。
4WDシステムがないエクスプローラーに価値なし。多くの同業者がそう思っていたのだが、頭がカタイのは我々の方だった。他社だが、ジープの日本国内における調査では、4WDシステムが必要というオーナーは、10%切るほどだという。さらに、FF車を投入し価格を下げるとクルマがよく売れるそうだ。確かに、日本国内でオフロードを探すことは皆無に近い。こういったSUVを購入する多くの人が、機能よりブランドイメージやライフスタイル、価格が優先なことを改めて実感する。
まさかのハイパフォーマンスを発揮するエコブースト! 巨大ボディなのに14km/L超の低燃費を記録
もはや、国内にある乗用車として最大級と思われるFF車フォード エクスプローラー エコブーストに乗る。10・15モード燃費の資料で確認すると8.1km/L・・・。おいおい、3.5Lエンジン車より、わずか0.5km/Lアップ。同じ2トン超級ミニバンアルファード3.5Lが9.2km/Lである。しかし、この後、予想もしなかったまさかの出来事が起こる。
燃費計をリセットし、首都高速に乗る。まずは、燃費のチェック。80km/h前後で左車線をゆっくり走る。なんと、燃費計は14km/Lを超えているのだ。さすがに、巨大なボディゆえ80km/h以上に速度を上げると、もはや壁が走っているようなものなので燃費は悪化傾向になる。それでも10km/Lは軽々と超えてくる。このクルージング時の燃費には、驚きを隠せなかった。恐るべし、エコブースト。
エクスプローラー エコブースト侮りがたし、と感じながら一般道へ。さすがに、渋滞路だったため条件が悪く、燃費はイッキに悪化する。アメリカ生まれだけに、渋滞は苦手なようだ。ただ、この部分もアイドリングストップ機能がが付けば、かなり解決できるように感じた。
4WDシステムなどが無くなり110kg軽くなったとはいえ、2020kgもある車重だがエコブーストの最大トルク366Nmをもってすれば不満はない余裕あるクルージングが可能。軽くなったこともあるがV6エンジン車よりも、さらに余裕を感じさせてくれるトルク感が魅力だ。さらに、このエコブーストには、まだ伸びしろを感じた。最大トルクの発生回転数は、3000回転と比較的高い。VWのように1500回転付近で最大トルクを発揮できるようになれば、さらに高いギアで回転を抑えて走れるので燃費はさらに伸びる気がする。
静粛性も高いレベルにあり高級感は損なっていない。強いて言うのなら、V型エンジンのシュルルーンとエンジンが回るフィーリンが、4気筒のガァァーというフィーリンがに置き換わっているのをどう感じるかどうかだろう。
左ハンドルだけの仕様に、超円高なのに高価な価格設定。日本マーケットをどうみているのだろうか?
SUVのFFグレードというと、ついついエントリーグレードの廉価バージョンをイメージするが、エコブーストは最上級グレードであるリミテッドのレザーシートなどを採用し高級感あるものに仕上げている。全体的な質感も高く、大きくゆったりとしたシートに座ると、日本車にはない独特な非日常的雰囲気が味わえるのもエクスプローラーの美点だ。また、ラゲッジルームの広さは十分な上に、いざとなれば7人乗りのミニバン的にも使える。それこそ、エコブーストは低燃費化されたこともあり、大型ミニバンに飽きたユーザーには、普段のありきたりの生活から抜け出せる新鮮さな魅力が詰まっている。
と、想像を超えた魅力が満載のエクスプローラー エコブーストだが、少々納得がいかない部分もある。まず、右ハンドル仕様がないという点。全長5m、全幅2mという巨大ボディを運転するには、さすがに左ハンドルのみでは、日本の交通事情に合わず使いにくい。多くの魅力を持ちながら、結局、日本マーケットのユーザーを軽視している結果ファンを逃している。今のところ月販約100台ペースで好調というが、フォードは年1200台程度の販売台数で満足しているのだろうか。
そして、次に価格。フォードだけの問題だけではないが超円高なのに高すぎる。北米のサイトを見ると最上級のリミテッドで38,680ドル、XLTで33,170ドルだ。1ドル82円で計算すると、リミテッドが約317万円。これが、なぜか日本に登場すると530万円になる。すでに、同じ左ハンドルの並行輸入車は100万円以上安価だったりする。
さらに、フォードはエクスプローラーをPHP制度と呼ばれる年間輸入台数が2,000台以下の自動車に適用される特別に簡素化・迅速化された安全・環境基準に係る認証のしくみを利用している。この制度を使うと、日本導入のコストも下がる。その上、右ハンドル化していないのでコストもかかっていない。それなのに高価なのだ。趣味性の高い製品なので高価ですと、フォード自らが顧客を選別しているように思える。今回のエコブーストは、日本マーケットのニーズにもマッチし注目に値するクルマだけにもったいない。右ハンドルになり、価格が下がれば買い物リストに載せたい。そんなファンもきっとたくさんいるだろう。
【関連記事】
- ヨン様もビックリ!? まったく違うクルマになりました【フォード エクスプローラー試乗記】
- 2トン超ボディで燃費8.1km/L! エコカー補助金対象車【フォード エクスプローラーEcoBoost(エコブースト)新車情報 】
- スタイル一新! 今春マイナーチェンジ車を公開【レクサスRX450h新車情報】
- 日産式ハイブリッドシステムを搭載した次世代SUV【日産ハイクロスコンセプト新車情報】
- 【クライスラー ジープ 新型 グランドチェロキー 試乗記】過去のイメージを捨て去り洗練の極みに
- 大型SUVのエコ度が加速! 低燃費を実現する直4ブルーテックエンジンを搭載【新型メルセデスベンツML海外新車情報】
- ついに発表! 価格は205万円から! 経済性でハイブリッド車並のSKYACTIVディーゼルエンジン【マツダ CX-5プロトタイプ試乗記】
この記事に関連するニュース
-
リッター0.9km!? “極悪燃費”の「カクカクSUV」登場! V12エンジン&MT搭載でめちゃ楽しそう! 丸目レトロな「LM002」米で出品
くるまのニュース / 2024年11月29日 22時10分
-
ホンダWR-V試乗記・評価 大満足か後悔か? 成功か失敗か? 見極め重要なコンパクトSUV
CORISM / 2024年11月17日 10時10分
-
維持費が安い車おすすめ12選! 車種別ランキングや維持費の目安を紹介
MōTA / 2024年11月12日 19時0分
-
スバル クロストレック(ストロングハイブリッド)の価格は383万3500円〜! 発売日や燃費は?
MōTA / 2024年11月7日 19時0分
-
トヨタの「高級SUV」何がイイ? 高額ハイブリッドが売れ筋に!? 登場4年の「ハリアー」人気が衰えないワケとは
くるまのニュース / 2024年11月6日 19時10分
ランキング
-
1PayPay銀行 円・米ドル両方預金で金利2%に引き上げ
日テレNEWS NNN / 2024年12月4日 13時58分
-
2ガソリン価格、175円40銭 4週連続で値上がり
共同通信 / 2024年12月4日 14時32分
-
3なぜユニクロの柳井氏は「ウイグル綿花問題」を語ったのか 中国で炎上しても、“あえて”発言した理由
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年12月4日 7時26分
-
4ビール市場シェア拡大へ「プレモルがあってサントリー生があって金麦があることを強みに」…サントリー・鳥井信宏社長
読売新聞 / 2024年12月4日 13時34分
-
5セブン解体で岐路に立つ「コンビニATM」の王者 非連結化なら伊藤忠主導で業界再編に発展も?
東洋経済オンライン / 2024年12月4日 9時40分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください