【トヨタ プリウスPHV試乗記】 まだまだ高価だが、EVとガソリン車の間を埋める最良の手法がPHV【レビュー:トヨタ】
CORISM / 2012年5月28日 7時7分
まだまだインフラに依存するEVよりも、現実的な選択がPHV
次世代の環境性能車と言われるプリウスPHV(プラグインハイブリッド車)が、一部の法人向けリースに続いて一般ユーザー向けの販売を始めた。
プリウスPHVの基本はプリウスで、プリウスをニッケル水素電池からリチウムイオン電池に変更した上で、搭載量を増やした。これによって、日常的な走りなら電池だけでカバーできるようにするとともに、それを超えて長い距離を走るときにはプリウスと同じハイブリッド車として走れる。
航続距離に不安を感じることなく電気自動車として走行中に排気ガスを発生しない走りが得られるとともに、電気を使い切ってハイブリッド車になったときの燃費も良い。
三菱i-MiEVや日産リーフなど、純粋な電気自動車には航続距離の制約があるため、ガソリン車やハイブリッド車から一気に電気自動車の時代が到来するとは考えにくい。その前に、PHVの時代があるというのがトヨタの考え方だ。
26.4kmがEVで走れる距離。それ以上は、普通のプリウスとしてガソリンで走る
プリウスPHVのカタログ上は、26.4kmの距離を電気自動車として走れる。普通の走り方をする場合でも20kmくらいの距離は電気自動車として走れ、それ以降はハイブリッド車になる。毎日の通勤などを中心に使う普通のユーザーなら、ほとんどの距離を電気自動車として走ることになる。
逆に、走り出しの最初にHVモードを選択すれば、長い距離をハイブリッド車と走った後で、出かけた先で電気自動車として走ることもできる。これは従来の法人向けリース車にはなかった機能だ。自然に囲まれた地域まで高速道路を走るときにはハイブリッド車として出かけ、現地に到着したならゼロエミッション車として走るといった使い方が可能になる。
ほかに、プリウスPHVならではのドライブサポートサービスがいろいろと用意されているのもポイントだ。、オーナーになればスマートフォンとの連携・融合などによって、クルマと対話するなど、これまでのクルマではできなかった近未来的なカーライフを実現できるのだ。
残念なのは、補助金前提で、それでもプリウスとの価格差が大きい価格設定
試乗中には電気を使い切る前にHVモードを選択したり、アクセルを踏み込んで意図的にエンジンを始動させたりしたが、EVとHVの切り換えはスムーズそのもの。プリウスでもそうだが、トヨタはこのあたりの制御がとてもうまい。
残念だったのは、足回りを中心にプリウスの標準仕様がプリウスPHVにも適用されたこと。プリウスにはオプションでツーリングセレクションが設定されていて、サスペンション、タイヤ、ステアリングなどが標準仕様と異なっている。
乗り心地や操縦安定性、操舵(そうだ)感覚、静粛性など、走りの質感という点ではさまざまな面でツーリングセレクションが断然に優れている。ひとクラス上のプリウスとしてプリウスPHVを設定するなら、ぜひともツーリングセレクション仕様にしてほしいところだった。
プリウスPHVの320万円(補助金45万円を計算に入れると実質275万円)という価格は、法人向けリースの時代に比べたら格段に安くなったが、プリウスとの価格差は予想よりも大きかった。リチウムイオン電池を搭載することなどが価格差の理由で、PHVに対する補助金を考慮に入れてもプリウスと購入を迷うほどには安くない。
また、購入面で制約を受けるのは電気自動車と同じで、自宅に充電設備を設けられる人でないと、事実上プリウスPHVを買うことはできない。せっかくの性能を手に入れられるのが戸建て住宅に住む人に限られるのも残念な点だ。
代表グレード | トヨタ プリウス プラグインハイブリッド(PHV)Sグレード |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4480×1745×1490mm |
車両重量[kg] | 1410kg |
総排気量[cc] | 1797cc |
エンジン最高出力[ps(kw)/rpm] | 99ps(73kw)/5200rpm |
エンジン最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] | 14.5kg-m(142N・m)/4000rpm |
モーター最高出力[ps(kw)] | 82ps(60kw) |
モーター最大トルク[kg-m(N・m)] | 21.1kg-m(207N・m) |
ミッション | 電気式無段変速機 |
ハイブリッド燃料消費率[km/l] | 30.8km/l |
プラグインハイブリッド燃料消費率[km/l] | 57.2km/l |
充電電力使用時走行距離[km] | 24.4km |
電力消費率[km/kWh] | 8.08km/kWh |
定員[人] | 5人 |
レポート | 松下宏 |
写真 | CORISM編集部 |
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