【VWザ・ビートル試乗記】 より大きく実用的になった低燃費なカブト虫【レビュー:VW】
CORISM / 2012年6月5日 7時7分
後席が大幅に広くなり合理的になったザ・ビートル
ニュー・ビートルがフルモデルチェンジを受けてザ・ビートルが登場した。
初代ビートルは自動車史に名前を残すクルマで、第二次世界大戦前に開発されて今世紀初頭にメキシコでの生産が終わるまで、60年以上にわたって生産が続けられた。その間に単一モデルで1500万台を超える生産台数を記録するなどした歴史がある。
かぶと虫と呼ばれた初代モデルにインスパイアされて、1998年に北米でデザイン、開発されたのがニュー・ビートルで、このモデルも初代モデルに似た可愛らしいデザインが人気を集めて一定の評価を得てきた。
そして、ニュー・ビートルをフルモデルチェンジする形で登場したのが今回のザ・ビートルである。ザ・ビートルはフォルクスワーゲンの本拠地であるドイツでデザインや開発が進められた。
ニュー・ビートルが、あまりにもデザインを優先させすぎて、後席居住性などパッケージングの面では物足りなさの残るクルマだったが、今回のザ・ビートルはそうした点の改善が図られている。
アメリカ人にとっては、後席居住性などは無視しても良いものだったかも知れないが、ヨーロッパ的な合理性を考えたら、後席にもしっかり大人が座れるクルマでないといけない。その意味で、手頃なボディの中に大人4人がしっかり乗れた初代ビートルの志を受け継いだのはニュー・ビートルではなくザ・ビートルであるといえる。なお、ザ・ビートルも乗車定員は4名とされている。
全幅1800ミリ超! 大きくなったカブト虫
デザイン的には見るからにビートルらしく作られているが、横から見るとニュー・ビートルとの違いが良く分かる。ルーフラインをしっかり後方まで伸ばして後席居住性を確保したのがザ・ビートルの特徴だ。ニュー・ビートルでは後席には子供しか乗れないくらいだったが、ザ・ビートルでは大人も座れる後席空間が確保された。
ただ、居住空間の拡大に合わせてボディサイズがやや大きくなり、ホイールベースや全長だけでなく、全幅も拡大されて1815mmに達したのは日本ではやや問題。
BMW3シリーズが旧型モデルの時代に、立体駐車場などで車庫証明を得られるようにするため、マイナーチェンジで全幅を1815mmから1800mmちょうどに変更したことが端的に示すように、日本での使い勝手を考えると1800mm超の全幅は難しいものがある。
インテリアはボディ同色のパネルが使われ、これが新鮮な印象を与えている。初代ビートルなどの昔のクルマが鉄板をむき出しにした仕様を備えていたのと同じような感覚を与えるが、今の時代にはそれが逆に新鮮な印象なのだ。
シートは、本革スポーツシートが標準。取り敢えず4月に開始された予約受注は、上級グレードとなるレザーパッケージ装着車から始められたからだ。ファブリック製のコンフォートシートを装着した標準グレードのデザインは秋からデリバリーが始まる予定だ。
内外装のカラーをコーディネートしたグレードは、デザインと呼ばれる。日本には、デザインとデザイン・レザーパッケージの2グレードが導入されるわけだが、本国ではカラーコーディネートのないベースグレードのザ・ビートルと、よりパワフルなエンジンを搭載したザ・ビートル・スポーツの設定もある。
満足感のあるレザーパッケージがオススメ
搭載エンジンは、ゴルフのベーシックモデルに搭載されているのと同じ直列4気筒1.2LのSOHCで、直噴+インタークーラー付きターボ仕様のTSIエンジン。77kW/175N・mのパワー&トルクを発生する。
ザ・ビートルは、ニュー・ビートルに比べるとボディがひと回り大きくなって装備の充実化が図られたものの、車両重量はわずか20kgしか重くなっていない。なので、1.2LのSOHCをベースにしたTSIエンジンでも十分といった感じになる。
ニュー・ビートルほどではないにしても、ザ・ビートルがデザイン優先のクルマであるのは変わらないから、このクルマで積極的にスポーティな走りを楽しもうというユーザーは少ない。特徴的なデザインのカッコ良いクルマに乗って、カーライフを楽しみたいというユーザーが乗るクルマだ。
なので、スポーティな実力のエンジンでなくても十分というわけで、普通に良く走り、それでいて燃費も良いなら何の不満もないということになる。ザ・ビートルは7速DSGとの組み合わせによってJC08モードで17.6km/Lの燃費を実現する。これは平成27年度燃費基準を達成する数値であり、エコカー減税50%が適用される。
レザーパッケージ装着車には、ベースグレードのデザインに比べて1サイズ大きな17インチタイヤが装着される。試乗車にはコンチネンタルのプレミアムコンタクト2が装着されていて、乗り心地も上々だった。スポーティな踏ん張りを感じさせるようなタイヤではないが、乗り心地や静粛性などに不満を感じさせない。ザ・ビートルはこうした面でも普通に良いクルマといえる。
デザイン・レザーパッケージの価格は303万円で、後からデリバリーが始まるデザインには250万円の価格が設定される。仕様差は、レザーシートのほか、バイキセノンヘッドライト、レインセンサーワイパー、自動防眩ミラー、2ゾーンフルオートエアコン、パドルシフト、タイヤサイズなどだ。
本革シートについては好き嫌いがあるが、快適装備を中心にした仕様の違いを考えると、レザーパッケージを選んだほうが満足度が高いと思う。レザーシートなのにパワーシートではないのは、ちょっと物足りないが、ザ・ビートルを選ぶならレザーパッケージがお勧めだ。
なお、ESPを始めとする各種の安全装備については、デザインでもレザーパッケージでも共通の仕様が用意されている。
代表グレード | VWザ・ビートル デザイン |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4,270×1,815×1,495mm |
車両重量[kg] | 1,280kg |
総排気量[cc] | 1,197cc |
エンジン最高出力[ps(kw)/rpm] | 105ps(77kw)/5000rpm |
エンジン最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] | 17.8kg-m(175N・m)/1500-4100rpm |
ミッション | 7速DSG |
10・15モード燃費[km/l] | 17.2km/l |
定員[人] | 4人 |
税込価格[万円] | 250万円 |
発売日 | 2012年6月1日 |
レポート | 松下 宏 |
写真 | 編集部 |
【関連記事】
- カワイイから、スポーティで環境重視へ【新型VWザ・ビートル新車情報】
- ついに姿を現した日本仕様の新型ビートル。キュートマッチョなスタイルに注目!【VWザ・ビートル新車情報】
- ビートルをベースにしたEVだが、もっともアグレッシブ【VW Eバグスター新車情報】
- 日本仕様のミッションが判明!? 最新情報更新! 4ドアup!(アップ)が登場! 日本導入は2012年後半か? 誰でも買える低価格な新世代スモールカー現る【VW up!(アップ)新車情報】
- アイドリングストップ機能装着で、もはや無敵?【VWゴルフTSI トレンドライン ブルーモーション テクノロジー(BlueMotion Technology)試乗記】
- 【新車・中古車購入術】VWポロの選び方&リセールバリュー
- 【VW ポロGTI 試乗記】爽快を通り越して、その走り過激すぎ!
- 【MINI(ミニ) クロスオーバー 試乗記】増殖し続ける"MINI"ワールドに4枚ドアの新種が誕生
- 【トヨタ 86新車試乗記】 自動車評論家 渡辺 陽一郎が本音で斬る!走行安定性を犠牲にして、運転の楽しさを追求?
- 色々混ぜてみた超個性派スタイル【シトロエンDS4試乗記】
この記事に関連するニュース
-
ホンダ「フリード」新旧比較で見るヒットの法則 ちょうどいいサイズ感はそのまま熟成が進んだ
東洋経済オンライン / 2024年11月21日 11時30分
-
ホンダWR-V試乗記・評価 大満足か後悔か? 成功か失敗か? 見極め重要なコンパクトSUV
CORISM / 2024年11月17日 10時10分
-
BMW M2クーペ(G87)試乗記・評価 「サーキットで乗ってみたい!」クルマ好き女子が試乗!
CORISM / 2024年11月9日 19時8分
-
「フロンクス」対「WR-V」インド生産SUV徹底比較 手頃な価格設定と扱いやすいサイズ感が魅力的
東洋経済オンライン / 2024年11月9日 9時20分
-
マツダCX-80試乗記・評価 すべてに大人の余裕を感じた国内フラッグシップ3列SUV
CORISM / 2024年10月26日 18時47分
ランキング
-
1「築浅のマイホームの床が突然抜け落ちた」間違った断熱で壁内と床下をボロボロに腐らせた驚きの正体
プレジデントオンライン / 2024年11月22日 17時15分
-
2三菱UFJ銀行の貸金庫から十数億円抜き取り、管理職だった行員を懲戒解雇…60人分の資産から
読売新聞 / 2024年11月22日 17時55分
-
3相鉄かしわ台駅、地元民は知っている「2つの顔」 東口はホームから300m以上ある通路の先に駅舎
東洋経済オンライン / 2024年11月22日 6時30分
-
4物価高に対応、能登復興支援=39兆円規模、「103万円」見直しも―石破首相「高付加価値を創出」・経済対策決定
時事通信 / 2024年11月22日 19時47分
-
5ジャパネット2代目に聞く「地方企業の生きる道」 通販に次ぐ柱としてスポーツ・地域創生に注力
東洋経済オンライン / 2024年11月22日 8時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください