ユーザー不在の安全装備! 法規制されないと動かない自動車メーカー、そして、あまりにも中途半端な3点式シートベルトを義務化させた国交省【松下 宏コラム】【特集・コラム:生活・文化】
CORISM / 2012年6月30日 12時12分
2点式シートベルトには、乗員に対する加害性も!!
5月から6月にかけて、たくさんの車種がマイナーチェンジを実施しました。7月1日から全席に(後席中央にも)3点式シートベルトを備えることが義務化されたため、これに対応するための改良を行ったメーカー・車種が多かったわけです。
法制化されないと対応しないというメーカーの姿勢には情けないものがありますが、取り敢えず3点式シートベルトの義務化によってクルマの安全性が向上したことは歓迎して良いと思います。
なぜ2点式シートベルトではダメで、3点式シートベルトが良いかというと、乗員の拘束性能に大きな違いがあるためです。
横ベルトが腰骨に当たるようにきちんとシートベルトを装着していても、2点式では衝突時の衝撃がズレてしまうことが多く、ズレると乗員の腹部にベルトが食い込みます。この結果、内蔵に傷害を受け、見た目はケガをしていないようであっても、内出血などが理由で翌日に死亡するという例はたくさん報告されています。
2点式シートベルトは、事故の状況によっては乗員に対する加害性を持つこともあるのです。
また、2点式シートベルトでしっかり体を支えられたとしても、肩ベルトがないために状態が前に倒れて頭が膝頭にぶつかるなどして、頭部や膝に大きな傷害を受けることもあります。
2点式シートベルトでも、ベルトを装着していれば車外放出の危険性が下がるという一定のメリットはありますが、決して十分なものではないということを知っておく必要があります。できれば2点シートベルトの席には、乗らない、乗せないのが良いと思います。
理解できない保安基準 商用車は2点式で良いのか
保安基準で3点式シートベルトが義務化されましたが、国土交通省がどこまで本気で安全を考えているのか分からない部分もあります。
というのは、義務化されたのは乗用車に限ってのことで、商用車(4ナンバーのライトバンなど)は対象外とされているからです。
6月15日にキャラバンがフルモデルチェンジを受けてNV350キャラバンに変わりましたが、この新型車でもバンの後席中央には3点式ではなく2点式のシートベルトが装着されていました。
乗用車でも商用車でも、人間が座る席であるのは変わりません。義務化するなら乗用車も商用車も義務化しなければおかしいのは当然ですが、国土交通省はこのような間抜けな基準を作っています。日産自動車も、それに合わせて2点式シートベルトを装着してしまうではなく、きちんと3点式シートベルトを装着して欲しいものでした。
さらに、指摘しておくなら、観光バスについては運転席のほか、客席の最前列は3点式シートベルトが義務化されましたが、2列目以降については2点式シートベルトでも良いとされています。
このあたりにも国土交通省の安全に対する考え方がなっていないことが分かると同時に、自動車メーカーも基準に適合させれば良いというものになっているのが分かります。
3点式シートベルトは、50年も前にボルボの技術者が発明したものです。ボルボが偉いのは、3点式シートベルトの特許を取得しながらも、それを独占せず、クルマに乗る人すべてに必要な安全装備であるからと特許を公開したことです。結果として、世界中の自動車メーカーすべてが3点式シートベルトを装着したクルマを作っています。こうした姿勢を見習って欲しいものです。
ヘッドレストレイントも セットで装着が必要だ
国土交通省の保安基準が緩いと思うのは、後席中央の3点式シートベルトを義務化したものの、ヘッドレストレイントについては義務化しなかったことです。
このため後席中央に3点式シートベルトを装着しながらも、ヘッドレストレイントは装備していないクルマが見受けられるのが実情です。
前席には、むち打ち症を低減させるタイプのシート(ヘッドレストレイント)が採用されるのが一般的になりつつありますが、それにもかかわらず、ヘッドレストレイントを装備しないクルマがあるのは何をかいわんやです。
後席のヘッドレストレイントは、昨年発売されたミライースに設定がありませんでした。これに対して多くのユーザーなどから指摘を受けたこともあっで、今年になって最上級グレードに標準、ほかのグレードにもオプション設定という形で対応を図りました。
まだ、ヘッドレストレイントを装備していない車種を作っているメーカーは、ダイハツを見習って早期に対応して欲しいと思います。
【関連記事】
- ホンダ フィットがモデル末期でもナンバー1!? 「今、買いのコンパクトカーNO1とは?」【コンパクトカー比較評価/新車購入術】松下 宏コラム
- 日産セレナ/トヨタ ノア・ヴォクシー/ホンダ ステップワゴン 【松下 宏の5ナンバーミニバンは、コレを買え! 新車比較評価】日産セレナがイチオシ! 夏にはハイブリッド車も投入か?
- ダイハツ ムーヴ/ホンダN BOX 迷ったらコレを買え! 自動車評論家 松下 宏が選ぶ「今、買いの軽自動車」【軽自動車新車購入術】
- 【トヨタ 86新車試乗記】 自動車評論家 渡辺 陽一郎が本音で斬る!走行安定性を犠牲にして、運転の楽しさを追求?
- MTに乗る男子(オジサンも)はカッコいい!【トヨタ86試乗記】若者のクルマ離れは、私が止める!?女子高生、海野良子が助手席でチェック!
- 【まずは、自動車取得税と重量税の撤廃が先だ! ユーザーや販売現場を混乱させるエコカー補助金】渡辺 陽一郎コラム
- 危険な左ハンドル車! 8つの危険が潜む 危険な理由、その1~4
- 【日産セレナ新車情報】 スクープ! 日産セレナにハイブリッドモデルが登場か? 新型日産セレナ ハイブリッド
- スクープ! 2012年登場の次期新型日産ノートは1.2L直噴エンジン+スーパーチャージャー搭載か?【日産INVITATION(インビテーション)】
この記事に関連するニュース
-
わんダフル カー・オブ・ザ・イヤー 国産車編、今年は国産ドッグフレンドリーカーの豊作年!【青山尚暉のわんダフルカーライフ】
レスポンス / 2023年11月28日 10時0分
-
ホンダ N-VAN e:プロトタイプ JAPAN MOBILITY SHOW 2023レポート
CORISM / 2023年11月15日 19時28分
-
トヨタKAYOIBAKO 自由自在な荷室空間で多様性に対応 JAPAN MOBILITY SHOW 2023レポート
CORISM / 2023年11月7日 18時8分
-
日産ハイパーツアラー 未来型エルグランド? JAPAN MOBILITY SHOW 2023レポート
CORISM / 2023年10月31日 11時45分
-
ボルボのシートベルトに刻まれた「謎の銘文」とは “人類の最重要発明”の証!?
乗りものニュース / 2023年10月31日 9時42分
ランキング
-
1コンビニバイトで「廃棄弁当」がもらえるのは過去のこと!? 最悪「逮捕」の可能性も? 持ち帰りOKの場合もあるの?
ファイナンシャルフィールド / 2023年11月28日 10時10分
-
2日本銀行 保有の国債、含み損が過去最大の10兆5000億円
日テレNEWS NNN / 2023年11月28日 20時56分
-
3「現NISAは2023年内に売らなくちゃ」は誤解?正しい満期をチェック
トウシル / 2023年11月29日 7時30分
-
4なぜ「口下手な営業のほうが売れる」のか…「ペラペラ喋る営業」がハイパフォーマーになれない意外な理由
プレジデントオンライン / 2023年11月29日 9時15分
-
5高校生扶養控除、一律縮小を検討 税負担は児童手当の範囲内に
共同通信 / 2023年11月28日 23時31分
記事ミッション中・・・
記事を最後まで読む

記事ミッション中・・・
記事を最後まで読む

エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
