日産NV350キャラバン新車試乗記 ハイエースどころか、商用バンをも超えた快適性【レビュー:日産】
CORISM / 2012年8月16日 11時11分
ハイエースに真っ向勝負を挑んだNV350キャラバン! まずは、燃費で勝つ!!
マーケット・シェア80%という圧倒的な人気を誇るトヨタ ハイエース。対して日産キャラバンは、20%を割り込む状況。日産開発陣は、そんな状況を打破するために新型NV350キャラバンを開発した。
だが、キャラバンのシェアは過去15年をさかのぼってもせいぜい30%弱がいいところで、ハイエースは60%をほとんど割る状況がない。さらに、今後も代替需要が多い商用車なので、保有台数が圧倒的に多く、リセールバリューの高いハイエースの牙城を崩すのは、もはや微妙な商品力だけではどうにもならないほどだ。こうなると、開き直って徹底的にエモーショナルで、デザインコンシャスなキャラバンでも投入して一石を投じてみたいものだが、日産のエンジニアたちは実直にハイエースと正面から対峙して勝負することを選択した。
そのため、ハイエースをほぼすべてにおいて上回る性能が目標となった。新型日産NV350キャラバンのJC08モード燃費は、新開発の2.5Lディーゼルエンジンが12.2km/Lとなり、約7%ほどハイエースを上回る。ハイエースは、3LでNV350キャラバンは2.5Lなので、そりゃそうだろうって感じだが、最大トルクはNV350キャラバンが500CC排気量が大きいハイエースの300Nmを上回り、356Nmを達成している。今回はディーゼルの試乗ができなかったが、トルクが大きいNV350キャラバンの方が実際の仕様シーンでは、アクセル開度が小さくなるため実燃費も、さらにその差が開くと思われる。さらに、AT車はエコカー減税にも対応している。
2Lのガソリン車は、ハイエースに対して約8%低燃費になり9.9km/Lを達成。最大トルクは178Nm、対してハイエースは182Nmなので、若干ハイエースがトルクで上回っている。パワーも同様にハイエースが、NV350キャラバンを上回る。ただし、NV350キャラバンは燃費の良さから、ハイエースにはない全車エコカー減税に対応している。
走る距離がどうしても長くなってしまうバンの燃料費を考えると、燃費は直接、仕事の原価に反映され利益にも影響するだけに、低燃費であることは最もありがたいということにもなるだろう。後発の新型NV350キャラバンは、そのあたりの重要なポイントをシッカリと押さえている。
今回の試乗では、主に高速道路で走行。試乗は新型日産NV350キャラバン バン・ロング・2WDのプレミアムGXで、2Lのガソリン仕様。ディーゼルは後発となるため、試乗はできなかった。高速道路では、周りの流れと同様に、80~100km/hで走行。平均速度55km/hで、実燃費9.5km/hとなった。とくにエコランを意識せずに、この燃費なら十分に納得のいくレベルだろう。
イカツイ顔ながら、気が利く装備が満載
外観デザインは、先代のE25型キャラバンとは、まったく無縁のスタイリングへと変身した。前モデルは大きく少し丸みを帯びたヘッドライトを持っていて、大きな1BOXでありながら可愛らしい雰囲気もあった。しかし、NV350キャラバンは、怒り顔のいかにもイカツイ雰囲気になった。これは、やはりライバル ハイエースの影響が大きく、1BOXはヤワなスタイルでは通じないようだ。そのため、ハイエースよりも明確にイカツさを全面に押し出している。ギラギラしたメッキのを多用した大きなグリルなど、少々やり過ぎるな印象も受けるが、これくらいしないとマーケットの支持を受けられないそうだ。
決められたボディサイズの中で、室内のスペースを最大限に取るとなると、なぜかハイエースに似てくるのも仕方のないこと。そんな中、NV350キャラバンは、できる限りのアピールとして、長く広いサイドビューに大胆なキャラクターラインを入れ差別化している。これで、ただの平面に見えがちなサイドビューに抑揚が生まれ、意外なほどにスポーティなサイドビューになった。
インテリアは、仕事外のプライベートでも使えるように、ちょっとしたミニバン風にまとめられている。ポイントを押え、メッキやシルバー加飾し高級感を出している。グレード別の装備や、オプション装備となるが足踏み式パーキングブレーキや、プッシュ式のエンジンスターター、インテリジェントキーなど、商用車を超えた装備が用意されている。
好感がもてたのは、メーター中央に設置された車両情報ディスプレイ。通常時は、燃費計などのドライブ情報が表示されるが、バック時にはなんとバックビューモニターになるのだ。これは、センターコンソールなどにモニターを設置するような多額のコストをかけずに、後方の安全を確認できる仕組み。後部が長い1BOXなので、後方の安全確認を楽に、そしてローコストでできるのはありがたいはずだ。
また、ヘッドライトには、キセノンヘッドランプ&LEDポジションランプもオプション設定されている。これは、カスタマイズ層やプライベートユースのユーザー向けでもあるが、長い距離を夜間でも移動する商用車なのだから、安全性の高いより明るいヘッドライトも必要という開発陣の想いが込められている。
ミニバン並、驚きの乗り心地! しかし、安全装備にも気遣いがほしい
先代モデルは衝突安全性を上げるために、荷室長を若干犠牲にした。わずかなスペースだが、より荷室長が長いハイエースに顧客を奪われた。そのため、NV350キャラバンは、徹底してスペースにこだわった。前モデルより+250mmも荷室長が伸び、3,050mmとクラストップレベル。
さらに、リヤシートには5:5の分割可倒式ベンチシートを採用。この5:5の分割可倒式シートは、やはりプライベートユースを意識したもの。後席のシートは、あまり座り心地が良いとはいえるものではなかったが、NV350キャラバンは、まるでちょっとした乗用車並の座り心地をもつ。仕事以外で使う時に、乗員の快適性が確保されているのも魅力のひとつだろう。
シートの座り心地が良くても、サスペンションを含めた乗り心地が良くなければ快適とはいえない。今までのバンは、ハイエースも含め、お世辞にも乗り心地がいいとはいえない。多くの荷物を積み走ることが前提になっているので、サスペンションはカタくて動きもシブい。空荷で走ろうものなら、ちょっとした路面の凸凹を通過するたびに、脳天に衝撃が伝わるくらいドン! という入力がある。
そんなバンのイメージのままにNV350キャラバンに乗る。走り始めて数百メートルもいかないうちに、その乗り心地の良さに驚いた。ドン! という入力が入るような凸凹でも、まるで普通のミニバンのように走り抜けた。この乗り心地の良さは、長時間ドライブにありがたい。疲れが違う。疲労軽減は、居眠りなどを誘発する危険もあるので、仕事で長時間乗るクルマだって疲れないほうがよい。
乗り心地の良さは、普通のミニバンのようだが、カーブは苦手だ。シートの下にエンジンを搭載しているため、まるでよじ登るようにして運転席に座らなくてはならない。重心は、かなり高い。ハンドルを切ってから、クルマが傾き、実際に曲り出すまでの時間が長い。だからといって、急にたくさんハンドルを切ると、クルマが横転するかのごとくクルマが傾く。最近のミニバンのように低床・低重心ではないので、ミニバンから乗り換えようという人は、こういった運転をしないように注意が必要だ。あくまでも商用車であるとことを忘れてはいけない。
全般的に他のバンと比べても高い操縦安定と乗り心地、使いやすさをもつ、新型日産NV350キャラバン。ライバルのハイエースを徹底的に研究し、より高いレベルのバンに仕上げられている。ただし、乗用車では後席も3点式シートベルが法規制されているのに、NV350キャラバンは商用車ということで後席中央が2点式シートベルだったりする。
また、こういった重心の高いバンこそもしもの時に、横転という危険性が高くなる。ならば、オプションでも横滑り防止装置を設定するなど、安全装備への拡充にも目を向けてもらいたい。キセノンヘッドライトが安全性でオプション設定されているのなら、3点式シートベルトや横滑り防止など、直接安全性能にかかわる部分は、より優先度は高いはずだ。
代表グレード | 日産NV350キャラバン バン ロングボディ標準ルーフ プレミアムGX |
---|---|
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) | 4695×1695×1990mm |
ホイールベース[mm] | 2555mm |
車両重量[kg] | 1810kg |
総排気量[cc] | 1998cc |
エンジン最高出力[ps(kw)/rpm] | 130PS(96Kw)/5600rpm |
エンジン最大トルク[N・m(kg-m)/rpm] | 178(18.1)/4,400rpm |
ミッション | 5速AT |
タイヤサイズ | 195/80R15 |
JC08モード燃費 | 9.7km/L |
定員[人] | 5人 |
税込価格[円] | 2,620,800円 |
発売日 | 2012/6/15 |
レポート | 大岡智彦 |
写真 | 編集部 |
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