クライスラー イプシロン試乗評価 万人受けはしないが、趣味のクルマなら高評価なイプシロン!【レビュー:クライスラー】

CORISM / 2013年2月6日 7時7分

クライスラー イプシロン

個性的なデザイン&クオリティは、文句なし!

 自動車メーカー間の合併やOEMやらが頻繁に行われるようになったとはいえ、複雑なクルマがクライスラー・イプシロンだ。

 複雑にするのは、メーカーに対するイメージが多分に影響している。クライスラーは、アメリカを代表するメーカーだが、小さいクルマ作りは得意ではない。イプシロンは、元々ランチアで現在も欧州では、このモデルをランチア・イプシロンで発売している。さらに、ベース車はフィアット500だ。3つのブランドが入り乱れているのが特徴。それもこれも、欧州の自動車メーカーを主体にグループ化してきたフィアットが、まったく違うブランドであるクライスラーを傘下にしてしまったことが原因だ。水と油くらいイメージが違うブランドや車名を合体させてしまった。

 クライスラーのブランドが付けられたことで、イプシロンは大味になったフィアット500なのか? イタ車ファンもガッカリか? と思っていたが、デザインも個性的でエモーショナルなイタリアンテイストあふれるものに仕上がっている。

 クライスラー・イプシロンは、ボディサイズをフィアット500より大きくしたことで、プレミアムなコンパクトカーであることを強調する。確かに面の張りのある豊かなボディラインや、上級グレードに装備される本革シートやインパネまわりの質感は、フィアット500を凌駕する。センターメーターは、個人的には、それだけで安っぽさを感じさせるのだが、デザインは斬新で品質感は高い。デザイン力という視点では、素晴らしいものでイプシロンに乗り込む度に、自分の選択眼が間違っていないことを再確認させるくらい満足度は高い。

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誰にでもおすすめはできない、ツインエアエンジン&ミッション

 ところが、エンジンをかけた瞬間に、インテリアやエクステリアから感じていたプレミアムなイメージは、イッキに吹っ飛ぶ。イプシロンに搭載されている、フィアット500と同じツインエアの0.9L、2気筒インタークーラー付きターボエンジンが原因だ。ブルブル振動は、フィアット500譲り。プレミアムという割には、振動低減もほとんど行われていないようで、インパネ部分からビリビリという音まででていた。これのどこがプレミアムなのか? と、思う。フィアット500ほど、カジュアルでポップなら片目をつぶって許せるが、プレミアムだと主張するのなら、もう少し音や振動を抑える工夫が必要だ。

 試乗時は雨で、ヘッドライトとワイパーを使っていたこともあり、都内の流れの悪い道では、アイドリングストップ時間が短くなり頻繁にエンジンが再始動した。その度に、ブルルンブルルンと、振動が伝わってきて、ストップ&GOの多い都内では少々疲れてきたというのが本音だ。燃費が優れていると言うが、19.3km/Lであり、輸入車にしては優秀だが同じ過給器付きである日産ノートの24.0km/Lと大きな開きがある。

 確かにエンジンを回し気味にして走ると、パンチのある元気がよい走りが楽しめる。ただ、これもカーンと高回転まで回して楽しいというタイプではない。5,500回転のレブリミット手前くらいでシフトアップしたほうが速く走れる感じだ。

 さらに、イプシロンのプレミアム感を台無しにしているのが、1クラッチ式5速AT。基本的にマニュアルミッションがベースなので、誰にもおすすめできるシロモノではない。アクセルを踏み放しだと、変速時に減速・空走感があり違和感がいっぱいだ。なかには、慣れればOKという人も多いが、CVTやATに慣れた日本人やAT限定免許の人にはおすすめできない。マニュアルミッション車がシッカリと運転できる人でなければ、この機能は使いこなせないし慣れもしないし、おもしろいとも思えないだろう。逆にこのミッションなら、MTのほうがいいという人もいるだろう。

 このツインエアエンジンと1クラッチ5速ATの組み合わせは、日本のマーケットには不向きだ。フォルクスワーゲンのup!も同様なミッションを使っているが、販売の現場ではDSGとは違い、かなり時間を割いてミッションの説明をしているという。なんの説明も無しに乗せ「なにコレ?」とならないために気を使っているのだ。

 逆に言えば万人には受けないが、この機能を理解して使いこなせる人であれば、十分に個性的でクルマ本来の楽しさを感じることができる。趣味のクルマとして楽しむならば、これもアリだ。

 乗り心地は、少々カタさを感じたが、キビキビした走りには好感度が高い。フィアット500よりホイールベースが伸びていることもあり、少しゆったりとした印象で、ハンドリングや乗り心地ではプレミアさを感じた。

まだまだ、高価。輸入車初心者は、必ず試乗を!

 実際にクライスラー・イプシロンを購入するなら、しっかりと長い時間試乗することをおすすめする。デザインやクオリティは高いので、このエンジンとミッションのパフォーマンスを理解ができるかが重要だ。趣味のクルマとして割り切るのなら、MTが欲しいところだろう。

 価格は高い。フォルクスワーゲン・ポロのコンフォートラインが218万円なので、イプシロン ゴールドが235万円。少し大きめのポロが17万円も安いし、燃費にも勝る。クルマ好きやイプシロンのデザインに一目惚れなら、それでも納得がいくだろう。ただし、輸入車初心者なら、しっかりと比較して選ぶべきだ。イタ車は趣味のクルマだから割高でも買うであろう、というのはある意味正しいが、今まで以上にたくさん販売したいと思うのなら間違いだ。販売好調なフォルクスワーゲンなどは、徐々に価格を下げ、一部車種では国産車とそれほど変わらない価格戦略を行なっているから売れている。

 ただ、何にせよクライスラー・イプシロンを手にした日から、他の平凡なクルマとは違う圧倒的な個性は、クルマで移動することが一段と楽しくなることは間違いない。

クライスラー イプシロン価格&スペック

<クライスラー イプシロン価格>
・ゴールド 2,350,000円
・プラチナ 2,600,000円

代表グレード クライスラー イプシロン ゴールド
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) 3,835×1,675×1,520mm
ホイールベース[mm] 2,390mm
トレッド前/後[mm] 1,415/1,410mm
車両重量[kg] 1,090kg
総排気量[cc] 875cc
エンジン最高出力[kw(ps)/rpm] 63 (85) / 5,500 (ノーマルモード) 57 (77) / 5,500 (エコモード)
エンジン最大トルク[N・m(kg-m)/rpm] 145 (14.8) / 1,900 (ノーマルモード) 100 (10.2) / 2,000 (エコモード)
ミッション ATモード付5速シーケンシャルトランスミッション
タイヤサイズ 185/55R15
JC08モード燃費 19.3km/L
定員[人] 5人
税込価格[円] 2,350,000円
発売日 2012/12/15
レポート 大岡智彦
写真 編集部

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