三菱アウトランダーPHEV試乗評価 子供の頃、夢の世界だった近未来カー、アウトランダーPHEVがついに走りだした!【レビュー:三菱】
CORISM / 2013年2月12日 7時7分
基本はEV、エンジンは必要な時だけ使うからPHEV(プラグインハイブリッド電気自動車)
三菱アウトランダーのPHEV(プラグインハイブリッド電気自動車)に、日本自動車大学校のテストコースで試乗した。まだナンバーが付いていないクルマなので一般道を走ることができず、限定されたサーキット内での試乗となった。
三菱アウトランダーPHEVは、アウトランダーのガソリン車をベースに、EVの良さとSUVの良さを合わせ持つクルマとして開発が進められたもの。三菱は純EVのi-MiEVを持っているが、スモールクラスは純EVでも良いが、ボディが大きく重くなるとEVでは無理で、ハイブリッドかPHEVで環境性能を確保しようと考えている。
搭載エンジンは、2.4Lではなく2.0LのMIVECに変わり、前後に60kWの出力を持つ電気モーター2個を搭載する。床下に12kW/hのリチウムイオン電池を搭載するが、関連するジェネレーターやコントロールユニットなどを含めても、居住空間やラゲッジスペースをほとんどスポイルしていない。
PHEVと言う名から分かる通り、ベースはEVということで発進時は電気モーターだけで走り出していく。とても静かで滑らかな走りで、EVの良さが端的に感じ取れる。エンジン騒音のほかにシフトショックもないので、切れ目のない加速がそのまま続いていく滑らかさだ。
JC08モード走行なら、60kmくらいまでの距離を電気モーターだけで走れるというから、話半分と考えてもたいていの人の日常的な使い方の範囲ではEVと思っていい。
また、EVモードでの走行でも最高速は時速120km/hに達するので、高速ドライブをするときにもEVのままで走らせることもできる。
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特別な操作は不要! ドライバーは普通に運転するだけで、エンジンをうまく使い充電&動力補助を行う
アウトランダーPHEVは、EVとして走ることだけが目的ではなく、走行状況や道路状況などに応じて自在な走りを、それもクルマが自動的に選択して走ってくれるのが良いところだ。
ドライバーは、EVとしての走りのほかに2種類のハイブリッドとしての走りを、全く意識することなく自然に体験できる。
たとえば、坂道や急な加速でなど強い駆動力を必要とする状況では、ドライバーがアクセルを踏み込むとエンジンが始動してより力強い駆動力が得られる。
高速クルージングなどでは、エンジンの駆動力で走行しながら余った駆動力で発電機を回してバッテリーも充電する。高速での追い越しなどのときには、エンジンの走行に加えてモーターがアシスといった具合だ。
アクセルを緩めれば、その瞬間からエネルギーの回生が始まって、発電した電気をバッテリーに充電する。クルージングに戻れば、元のEV走行に戻る。
これらを走行状況に応じて、クルマが自動的に判断して最適の走行をしてくれるので、ドライバーは普通のクルマを運転するのと同じように、アクセルを踏んだり緩めたりすることでクルマに命令を出せば良い。
走行モードが切り換わるときには、何のショックもない。強いていえばエンジンかかったときには多少の振動があるが、何気なく乗っていたら分からないくらいだ。シリーズハイブリッドやパラレルハイブリッドの切り換えなどは、モニターを見ていないと丸で分からない。
逆に高原の避暑地に出かけるようなときは、往路の高速道路で「SAVE」と書かれたボタンを押してバッテリーセーブモードを選択し、電気をあまり使わないで走るようにしておけば、現地に着いてから専らEVモードで走らせるといった使い方も可能だ。
クルマが停止すれば、エンジンも停止して一段と静かな空間が生まれる。EV走行中もエンジン音がない上にロードノイズや風きり音を良く遮断しているので静かだが、停車中にはしんとした感じの室内空間になる。この状況でロックフォードフォズゲートのオーディオを聞けば、より良い音で聞けるというものだ。
電池による低重心化で、走りの質もピカイチ!
今回の試乗では、タイトなコーナーの多いコースを走ったが、そうしたシーンでの安定性の高さも特筆モノだった。アウトランダーPHEVは、床下の低い位置に重いリチウムイオン電池を搭載するので、重心高が低い。アウトランダーに対して45mmも低いので、これが走りの安定感につながっている。
また、同じく電池の搭載によって前後の重量配分が前55:後45と理想に近いものになった。これも走りの安定感につながっている。さらに前後に駆動用モーターを持つ4WD車なので、滑りやすい路面などにも強い。
この前後モーターの駆動力配分は、走行条件によって最適に配分されるほか、三菱独自のシャシー技術でS-AWC(スーパーオールホイールコントロール)も装備されていて、ツインモーター4WDのほかにAYCやASC、ABSなどを組み合わせて総合的に制御し、安定性を高めている。
なので、テストコースの狭いコーナーでもしっかりノーズが向きを変えていく感じがあったし、前後左右の駆動力配分で適度にロールしながら軽快にコーナーを駆け抜けていく感じがあった。
アウトランダーPHEVは、本来は環境性能を追求したクルマだが、スポーティな走りを積極的に楽しめるだけの資質を備えたクルマでもある。
EVモードを使って走ればガソリン代に対して電気代は格安で上がるし、PHEV車としてのモード燃費は67.0km/Lに達している。ガソリン車の燃費争いがバカバカしくなるような数値である。
しかも、仮に充電ができない状況で使ったとしても、ほとんど常時エンジンを回すハイブリッド車としての燃費でも18.6km/Lという。アウトランダーのガソリン車と比べてもずっと良い数値である。
充電設備が必要で買える人を選ぶが、今までにないクルマに乗れる喜びは格別!
アウトランダーとアウトランダーPHEVの間には、それなりの価格差があるものの、PHEVにはエコカー減税や補助金がある。これらを考慮した上に、ガソリン代と電気代の差を考えると、PHEVのほうが経済性が高い計算になる。
これは、ユーザーが住む地域によっても異なるし、2013年度以降の補助金がどうなるかによっても計算が変わるが、リアリティのある環境性能車がアウトランダーPHEVだ。
問題は、買うユーザーを選ぶこと。充電なしで使っても燃費が18.6km/Lのハイブリッド車として使えないことはないが、それではあまりにも意味がない。となると、自宅に充電設備を持てる人でないと、買えないのに等しい。これが厳しい部分である。
充電設備が自宅に付けられる人にとっては、多少の投資は必要なものの、今までにない近未来のクルマに乗れるという楽しさ抜群だ。
三菱アウトランダーPHEV 価格、スペック、PHEV作動図
<三菱アウトランダーPHEV価格>
・E 3,324,000円
・G 3,569,000円
・G Safety Package 3,664,000円
・G Navi Package 3,978,000円
・G Premium Package 4,297,000円
<三菱アウトランダーPHEVスペック>
・全長×全幅×全高 4655mm×1800mm×1680mm
・ホイールベース 2670mm
・タイヤサイズ 225/55R18
・車両重量 1770~1820kg
・乗車定員 5 名
・駆動方式 ツインモーター4WD
・モーター
種類 永久磁石式同期モーター
搭載数 2 基 (フロント 1、リヤ 1)
最高出力 フロント:60kW、リヤ:60kW
最大トルク フロント:137N・m、リヤ:195N・m
・バッテリー
種類 リチウムイオン電池
総電圧 300V
総電力量 12kWh
・エンジン
種類 2.0L 4 気筒 MIVEC ガソリンエンジン
最高出力87kw(118PS)、最大トルク186N・m(19.0kg-m)
・ジェネレーター 発電量 70kW
・AC200V(15A) 約 4 時間(満充電)
・充電時間の目安 急速充電 約 30分(約80%)
・EV 走行可能距離(JC08 モード) 60.2km
・複合燃料消費率(JC08 モード)67.0km/L
・ハイブリッド燃料消費率(JC08 モード) 18.6km/L
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