新型ホンダ アコードやレジェンドに搭載される新技術 プレシジョン・オール・ホイール・ステア&スポーツ・ハイブリッドSH-AWDを雪上で試す! 【レビュー:ホンダ】
CORISM / 2013年4月8日 7時7分
高い車両制御を実現したプレシジョン・オール・ホイール・ステア&スポーツ・ハイブリッドSH-AWDに注目だ!
ホンダが、北海道の鷹栖にあるテストコースで雪上試乗会を実施した。かつては、毎年のように開催されていたイベントだが、今回は久々で3年振りの開催になった。
ホンダの市販車のほとんどすべてが用意されているほか、日本で販売していないアメリカ専用モデルや開発途中のプロトタイプ車など、いろいろなクルマに雪上で乗ることができた。
雪上試乗会でいつも高い評価を得るのは、決まってアクティトラックの4WDで、軽量ボディやミッドシップ車であることのバランスの良さなどから、意外なくらいに雪道での強さを見せていた。アクティトラックの4WDは農家専用といった感じで普通のユーザーには関係のないモデルだが、雪道での走りという点では興味深いモデルである。
もうひとつ、今回のイベントでは、インテグラのタイプRに、いくつかのタイヤメーカーのスタッドレスタイヤを装着した試乗車が用意されていた。インテグラの個体はそれぞれ異なるので厳密な比較とまではいえないが、メーカーごとのスタッドレスタイヤの特徴の違いが分かる部分があっても面白かった。
N-ONEやN BOXなどの軽自動車から、コンパクトカーのフィットハイブリッド、CR-Zのようなスポーツカー、あるいはCR-VやアキュラRDXなどのSUVに至るまで、いろいろなモデルに試乗したが、今では全車に横滑り防止装置のVSAが標準装備される時代になっている。これによって雪上での安定性が大きく向上しているので、全体に良く走る印象が強かった。
かつて、横滑り防止装置がないFRのS2000で走ったときには、アクセルを踏めばテールが流れ、ブレーキを踏んでもテールが流れるといった具合で、クルマと格闘しながら走らせた印象が強く残っているが、今はそんな時代ではなくなっている。
今回の雪上試乗会で、本命となるのは「プレシジョン・オール・ホイール・ステア」と「スポーツ・ハイブリッドSH-AWD」の2台だった。
この2台には、昨年11月のホンダミィーティングのとき、栃木のテストコースでドライのオンロードでの試乗を試したが、いずれも安定性の高さが印象的だった。
今回は、そのときに乗った試験車両で雪道を走るという設定で、外観はアメリカ版アコードの試験車両での試乗である。
あまりに自然なフィーリングでありながら、比べるとその差は歴然! プレシジョン・オール・ホイール・ステア
「プレシジョン・オール・ホイール・ステア(精密4WS)」は、精密な制御を行う電子制御4WSシステムによって、操縦安定性の向上を目指すものだ。走行状況に応じて後輪を同位相に操舵したり、逆位相に操舵したりするだけでなく、両輪をトーイン側に制御するなどして安定性を高めている。
システムの制御は、ステアリングの操作やVSAから車両の状態やドライバーの意図を読み取り、それに合わせて最適の制御をする。
プレシジョン・オール・ホイール・ステアは、通常の走行状態から、ずっとクルマの走行状況を監視していて、滑らかに制御が入ってくるので分かりにくい感じもある。そういう意味では、かなり自然なフィーリングが特徴だ。雪道では、横滑り防止装置(VSA)からの情報がどんどん入ってきて、VSAと合わせてクルマの挙動を制御する。
分かりやすいのは、パイロンスラロームをしたときで、短めの間隔と長めの間隔のスラロームが設定されていて、挙動の違いなどが分かるようになっていた。
スラロームに入って、ステアリングを切り始めた段階から、クルマが滑らかかつ、自然に動いてパイロンをクリアしていく。普通なら、滑りやすい雪道ではハンドル操作の通りにはクルマがなかなか動いてくれない感じになるはずだが、クルマの挙動に遅れが出ることなく、自然に走って行けるのだ。
なので、逆に言うと制御の介入が分かりにくいともいえるのだが、それはこのクルマだけで考えているから。もしも、このシステムの有り無しのクルマを乗り比べたなら、その違いがもっとはっきり分かると思う。
このシステムは、近い将来にアコード級のモデルに搭載されて市販されるはずで、大いに期待しておきたい。
NSXにも使われ究極のハンドリングマシンへと誘う最新システムがスポーツ・ハイブリッドSH-AWD
現行レジェンドには、機械式SH-AWDが搭載されているが、次期型モデルではこれを電子制御式に進化させた上で、スポーツハイブリッドと組み合わせている。
まず、ハイブリッドの部分は、新開発のV型6気筒3.5L直噴VTEC気筒休止システム付きエンジンに高出力モーター内蔵した7速のデュアルクラッチトランスミッションが組み合わされている。
そして、SH-AWDの部分はプロペラシャフトをなくして後輪に駆動用のモーター2個を内蔵したドライブユニットを装着し、それぞれのモーターを独立させてコントロールする仕組み。コーナーを曲がるときには、外側の後輪に駆動力をかけ、内側の後輪にはマイナスの駆動力(ブレーキ)をかけるといった制御も可能にしている。
SH-AWDも精密4WSと同様、コーナーでの操縦安定性を高めることを目的にしたものだが、それに至る手法が異なるところが面白い。適用する車種が異なるとはいえ、ひとつのメーカーから同じ時期に同じ目的を持つ異なるシステムが登場してくるのはホンダならではだろう。
こちらもUSアコードにシステムを搭載した試験検車両に乗り、同じコースを試乗したが、操縦安定性の高さは精密4WS以上のものがある印象。バイロンスラロームでもワインディング路でも、より高い速度で走れる感じになるからだ。
走行中、ヘッドアップ・ディスプレーに表示される駆動力配分を見ていると、駆動力が常時細かく前後左右に配分されて走っているのが分かる。特に雪道では、コーナーを曲がるときだけでなく、直進状態のときでも左右の駆動力配分が変わっているが分かる。
新しい電子制御式のSH-AWDは、かつての機械式SH-AWDをはるかに超えた性能を持ち、滑りやすい路面にも強いシステムなので、SH-AWDを装着したクルマが雪道をより安全に走れるのは間違いない。とはいえ、物理的な限界を超えて走れるわけではないので、慎重な運転が求められるのはいうまでもない。
このシステムは、次期アキュラRLX、日本名では新型レジェンドに搭載される予定があるほか、前後を逆にして次期NSXにも搭載されると言われている。大いに期待されるシステムである。
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