スバルAWD雪上評価レポート! 徹底的にこだわった多彩なスバルAWDシステムを試す!【レビュー:スバル】
CORISM / 2017年3月3日 6時0分
車種に応じて4種類ものAWDシステムを使い分けるスバル
富士重工業が北海道の新千歳モーターランドで開催したスバルAWDオールラインナップ雪上試乗会に出席した。富士重工業は、今年4月にスバルに社名変更することになっているので、富士重工業として開催する最後の試乗会だった。
スバル の雪上試乗会は、前年も開催されていて、試乗メニューは概ね前年と似たような感じであり、新型インプレッサが加わるなど、新しいモデルも用意されていたのが相違点だった。
まずは、スバルのAWD について解説しよう。スバルのAWDの歴史が、1970年代の初頭に東北電力から依頼を受けた宮城スバルの特装車から始まったことは良く知られている。冬季に山間部の電線の維持作業をするため、東北電力では4WD 車を必要としてジープ などを使っていたが、快適性などに問題があり、宮城スバルに乗りやすい4WD車の製作を依頼したのだ。
これに応えて、スバル1000のライトバンをベースにほかのメーカーのドライブシャフトやリヤデフなどを使って4WD化したのがスバル4WDの始まりだった。その後、宮城スバルからメーカーの富士重工業に開発が受け継がれ、レオーネバン、レオーネワゴンなどと4WDのラインナップが広がっていった。そして、近年では4WDではなくAWDと呼ぶようになっている。
スバルAWDの最初は、必要に応じて2WDと4WDを切り換えるパートタイム4WDから始まったが、現在ではすべてがフルタイム4WDであり、その方式も4種類が用意されている。マツダが電子制御カップリングに絞って基本的に1種類をAWDを全車に適用しているのに対し、スバルは車種に応じてさまざまなAWDシステムを用意し、現在では4種類のシステムを採用する。
スバルAWDの種類を簡単解説
●VTD-AWD(電子制御LSD付き不等&可変トルク配分AWD)
油圧多板クラッチ+センターデフにより、前後のトルク配分を45:55から、状況に応じて55:45まで変化させることが可能。レヴォーグ2.0GTやWRX S4に採用されるスポーティな走りが可能なAWDシステムだ。
●アクティブトルクスプリットAWD(ACT-4)
一般的なAT車やCVT車に採用されるシステムで、油圧多板クラッチを使うがセンターデフは採用していない。ドライのオンロードなど高μ路ではほぼ2WD状態で走るが、前輪のスリップを関知すると後輪に駆動力を配分し、最大で50:50まで駆動力を配分する。
燃費と操縦安定性をうまくバランスさせたシステムであり、レヴォーグ 1.6GTやレガシィ 、クロスオーバー7 、フォレスター 、インプレッサ などにのAT車やCVT車に幅広く採用されている。
●ビスカスLSD付きセンターデフ方式AWD
センターデフが通常は50:50に駆動力を配分する。前後輪のどちらかがスリップすると、ビスカスLSDが機能してスリップしていないほうの車輪に駆動力を配分する。
シンプルかつ信頼性の高いシステムで、フォレスターやインプレッサのMT車に採用されている。
●モード切り換え電子制御LSD付き不等トルク配分センターデフ式AWD(DCCD-ドライバーズ・コントロール・センターデフ)
遊星ギアと電磁クラッチを組み合わせたLSDを採用するセンターデフ式のAWD。DCCDによってドライバーが自由に前後輪の駆動力配分を変えられるのが特徴だ。後輪側の駆動力配分を高めればFR感覚の旋回性能が得られるし、前後輪の締結力を高めれば直結状態に近くなってトラクション性能を高められる。
レースやラリーなど、本格的なスポーツ走行にも耐えるスバル4WDシステムの最高峰ともいえるもの。WRX SRI(MT車)に採用されている。
安定した走りが魅力なAWDだが、新型インプレッサのFF車の出来に驚嘆!
■ハンドリングコース試乗
新千歳モーターランドでの雪上試乗会では、乗用車系のモデル用にハンドリングコースと、SUV 系モデル用の悪路コース、そして会場を移してのジムカーナコースなどが用意されていた。
ハンドリングコースで試乗したのは以下の7車種だ。
・インプレッサスポーツ2.0iアイサイト
・フォレスター(6MT)
・WRX STI 新DCCD搭載車(開発車)
・WRX STI タイプS
・クロスオーバー7 2.5iアイサイト
・レヴォーグ2.0 STIスポーツアイサイト
・インプレッサスポーツ1.6-Lアイサイト(FF)
7台目のインプレッサスポーツ1.6-LがFF車であったほかはすべてAWD車で、システムもさまざまだったが、ハンドリングコースを走らせているときにAWDシステムの違いを意識することはあまりなかった。それぞれに雪道で高い走破性を示したからだ。
全体として評価が高かったのはインプレッサで、新プラットホームをベースにした基本性能の高さがインプレッサの走りを支えている印象があった。
最もシンプルなビスカスLSD付きセンターデフ式フルタイム4WDを採用したフォレスターも、一定以上の走破性を備えていて、MT車であることの楽しさと合わせてハンドリングコースでの走りが楽しめた。
WRX STIに新開発のDCCDを採用したプロトタイプ車は、コーナーでの回頭性を高める方向でのチューニングが加えられていて、タイトなコーナーも多いハンドリングコースでは、確実に向きを変えるのがしっかりと体感できた。
想像する以上に良かったのが、インプレッサのFFモデルだ。今回はAWDオールラインナップ試乗会なので、FFモデルは参考に用意される形だったのだが、同じハンドリングコースでこれを走らせても4WDに比べて、発進時以外が遜色のない走りを実現していた。
今回の試乗コースにはなかったミラーバーン状態の路面での発進や制動などといったシーンでは、AWDとFFの差が明確になるのだろうが、圧雪路状態の路面ではAWDに対して大きく劣るという印象ではなかった。逆にいえば、価格が高くて燃費もやや悪化するAWDは、FFに対してもっと魅力的なクルマにする必要があるようにも思えた。
十分な最低地上高で悪路を楽々走破!
■悪路コース
悪路コースはモーグル状態の路面が作られている部分があったのを始め、急なアップダウンや、そのまま走っていったらジャンピングスポットになってしまうようなシーン、バンク状の傾斜路面など、いろいろなシーンが用意されていた。最低地上高の高いSUV用のコースであり、ここでは以下の5台に試乗した。
・レガシィアウトバック・リミテッド
・レガシィアウトバック Xアドバンス
・フォレスター2.0XTアイサイト
・フォレスター2.0i-Lアイサイト
・フォレスターXブレーク
雪道では最低地上高の高さが頼りになる部分がけっこう多く、モーグル状態の路面でも腹を擦ることなく走破していけるし、接地しているタイヤにしっかりと駆動力がかかって走破できた。
急なアップダウンのうち、上り坂の部分では途中で止まらないようにという指示だったが、試しに止まってみてもタイヤをやや空転させながらも発進していくことができた。
一部に、急な上り坂でハンドルを切った状態からの発進がスバルAWDの弱点などと指摘する向きもあるが、スバルでは最新のAWD(ACT-4)ではこうした状態にも対応できるようにしているという。それと同時に、スバルとしては、クルマの発進時ハンドルを真っ直ぐにした状態で行うのが基本との考えであり、状況にもよるがハンドルを切った状態での発進は推奨しないとのことだった。
AWDへの強いこだわりを持つメーカーがスバル!
■まとめ
スバル車のラインナップは、OEM供給車を除くと大半のモデルがAWD車だけの設定になっている。例外的にBRZがFRの2WD車として存在するが、主力モデルはAWD比率が100%に達している。レガシィ、レヴォーグ、WRX STI、WRX S4、フォレスター、クロスオーバー7、スバルXVなど、いずれもAWD比率が100%だ。
インプレッサだけはFF車の設定もあるが、2.0L車は65%が、1.6L車は42%がAWD車であり、インプレッサ全体のAWD比率は59%に達している。スバルはAWDを中心にした自動車メーカーなのだ。
ほかのメーカーでは、SUV系のモデルであってもFF車のほうが多く売れていてAWD比率の低い例が多いが、スバルは明確にAWDに特化したラインナップを作っている。だからこそ、北海道や東北、北陸、山陰など、積雪地で高いシェアを持つのがスバルである。
<レポート:松下 宏>
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