日産ブレードグライダー試乗記・評価 圧倒的な加速力&ハンドリング性能で、スポーツEVの魅力を凝縮!【レビュー:日産】
CORISM / 2017年4月24日 17時17分
日産ブレードグライダー試乗記・評価の目次
- 三角翼で1+2というパッケージングで異彩を放つスポーツEVがブレードグライダー
- 後輪に最大トルクは707N・mという大トルクを誇るインホイールモーターを装備
- アクセルを踏んだ瞬間から、弾けるような加速力をみせつけるブレードグライダー
- 低重心と優れた空力特性で、路面に張り付くようにハイスピードでコーナーを曲がる
- 日産ブレードグライダー 主要スペックなど
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■三角翼で1+2というパッケージングで異彩を放つスポーツEVがブレードグライダー
日産は、電動駆動をコア技術としたクルマを積極的に開発し、モーター駆動による気持ちいいドライビングプレジャーの実現に力を入れている。
その最初の作品が、2011年に発売したEV(電気自動車)のリーフだ。リーフは、2017年年度中にもフルモデルチェンジする予定で、2代目新型日産リーフとして登場する。そして、2013年秋の東京モーターショーには、リーフで培ってきた電動化技術を用いた近未来のEVスポーツカーを出品している。それが特異なフォルムの「日産ブレードグライダーコンセプト」だ。
エクステリアデザインは、グライダーと三角翼(デルタ)をルーツに、究極まで効率性を突き詰めるとともに高揚感を高めたグライディングにある。パッケージも型破りだった。1+2の画期的な3シーターレイアウトを採り、ドライバーズシートの後方左右にパッセンジャーシートを組み込んだ。2012年のル・マン24時間レースに出場して話題を呼んだニッサン・デルタウイングとイメージをダブらせる異色のデザインである。ガルウイングドアは前方から大きく上に開く。
ちなみに、デザインを手がけたのは、グローバルデザインセンターと日産デザイン・ヨーロッパだ。技術開発は、イギリスのF1チームであるウイリアムズのグループ会社で、レース用のEVにも関わっているウイリアムズ・アドバンスド・エンジニアリングが行った。ただし、リアエンドにはル・マンに参戦したアメリカのデルタウイングのステッカーも貼られている。
ブレードグライダーは、2016年夏前に2台が製作され、8月にブラジルのリオデジャネイロで発表会を催した。リオでのオリンピック期間中には、展示やデモ走行を行っている。また、女優のマーゴット・ロビーがステアリングを握ってモナコ市内をデモ走行し、話題をまいた。今回、千葉県の袖ケ浦フォレストレースウェイで公開されたのは、もう1台のプロトタイプだ。
■後輪に最大トルクは707N・mという大トルクを誇るインホイールモーターを装備
日産ブレードグライダーのパワートレイン設計は斬新である。ニッサン・インテリジェント・パワーの象徴だけに、EVのファンtoドライブをスローガンに掲げ、走りのポテンシャルも驚くほど高い。
メカニズムのハイライトは、トルクベクタリング機能を盛り込んだインホイールモーターだ。130kWのモーターを左右輪に組み込み、最高出力は200kW(268ps)、最大トルクに至っては驚異的な707N・mを発生する。
車重は思いのほか重く1300kgもあるが、0-100km/h加速は5秒以下と、俊足だ。最高速度は190km/hと発表されている。注目のバッテリーは、モジュール5個で構成された高性能リチウムイオンバッテリーだ。これをリアに搭載している。
サスペンションは前後ともダブルウイッシュボーンの4輪独立懸架だ。タイヤは異径で、メーカーも異なる。フロントは175/55R17サイズのBSポテンザRE040、リアはファットな265/35ZR19サイズのミシュランを履いていた。
■アクセルを踏んだ瞬間から、弾けるような加速力をみせつけるブレードグライダー
ブレードグライダーに同乗する機会を得たのは、性能チェックには最適なサーキットだ。キャビンはミニマムな空間だが、平均的な体格の男性なら何とか座ることができる。ドライバーズシートが中央にあるため、リアシートでも足元は窮屈ではない。頭上はミニマムだが、キャノピー感覚なので圧迫感は薄められていた。ドアも大きく跳ね上がるから乗り降りは思いのほかラクだ。ただし、シートベルトの装着にはコツを必要とする。
モーターの特性はアクセルを踏み込むと、一気にトルクが立ち上がることだ。ブレイドグライダーもEVの例に漏れない。ピットレーンを出て本コースに入ってアクセルを踏み込むと、強烈な加速Gを感じてシートバックに身体を押し付けられた。アッと言う間に100km/hを超え、さらに加速しようとする。コーナー手前で減速し、再びアクセルを踏み込んだときの加速も強烈だった。
同じ日に試乗したリーフNISMO RCと比べると、パワーとトルクの盛り上がりは雲泥の差だ。リーフNISMO
RCは1トンを切る軽量ボディだが、モーター出力はリーフと同じだからパンチ力が薄い。加速したときのGのかかり方は強烈だ。動力性能は比較にならないほど高く、次元の違う、弾けるような加速を見せつけた。
余裕を残して走っていたが、短いストレートで難なく160km/hをマークしている。しかも、ドラマチックでありながら静かだ。これもEVの魅力のひとつにあげられる。
■低重心と優れた空力特性で、路面に張り付くようにハイスピードでコーナーを曲がる
コーナリングスピードも速い。バッテリーをリアシートの下に収めているため重心が低く、トルクベクタリングを採用しているから身のこなしは軽やかだ。
かなり、リアヘビーなのだが、コントロールしやすく限界も高かった。ミズスマシのように軽やかにクルマが向きを変え、狙ったラインを寸分狂うことなくトレースできる。モーターならではの絶妙な減速フィールも魅力的だ。
タイヤは細いが、速いスピードでコーナリングしても驚くほど安定した走りを披露した。路面に吸い付いたかのような走りが印象的だ。特異なノーズ形状と独創的なデルタ形状が効いているのだろう。走行風を上手に利用し、グランドエフェクトカーのようにフロア下で絶大なダウンフォースを発生してボディを地面に押し付けているのが分かる。
また、乗り心地も悪くない。EV乗りの筆者としては、食指を動かされるEVスポーツカーの誕生だ。ショーカーだが、走りの愉しさにこだわる人たちのために、このコンセプトを受け継ぎながら、ぜひとも市販化に結びつけてほしい。
■日産ブレードグライダー 主要スペックなど
■日産ブレードグライダー 主要スペックなど(2016年08月05日発表時)
最高速度 190km/h (115mph)以上*
0-100km/h (62mph)加速 5 秒以下*
最高出力 200kW (268hp)
最大トルク 707Nm
車両重量 1300kg
全長 4300mm
全幅 1850mm
全高 1300mm
ホイールベース 2800mm
*Williams Advanced Engineering社による測定値
日産ブレードグライダー動画
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