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ホンダ シビック プロトタイプ試乗記・評価 尖ったものは無いものの、高い総合力が魅力の新型シビック。ホンダらしさはタイプRに凝縮! 【レビュー:ホンダ】

CORISM / 2017年6月17日 17時17分

ホンダ シビック試乗記と評価の目次





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■国内マーケットに再投入されたシビックの歴史

 ホンダが乗用車市場に足場を築いた最初の作品、それがシビックだ。

 1972年に誕生し、瞬く間にホンダを代表するファミリーカーにのし上がった。優れた環境性能と冴えた走りを武器に、シビックは世界中で高い人気を誇っている。

 だが、徐々にボディサイズが大きくなりCセグメントのファミリーカーに成長したこともあり、日本では8代目を最後に販売を終了。そのポジションを弟分のフィットとグレイスに託した。

 ところが、2017年の初夏、ホンダの乗用車のなかで一番長い歴史を誇るシビックが日本市場に戻ってくる。

 10代目新型ホンダ シビックのボディタイプは2つだ。伸びやかなフォルムの4ドアセダンとスポーティテイストの強い5ドアのハッチバックを設定している。海外には2ドアクーペも用意されるが、日本では発売されない。

 だが、ファミリーグレードだけでなく、5ドアモデルのイメージリーダーとして硬派の「タイプR」を日本市場に投入することにした。セダンは埼玉製作所寄居工場で生産を行う。5ドアモデルとタイプRは、イギリス生産の輸入車だ。

■直4 1.5Lターボのみの割り切った設定。ハッチバックは英国から輸入

 新型ホンダ シビックは、すでに1月の東京オートサロンでプロトタイプを公開している。実車を見た人も少なくないだろう。セダン、5ドアハッチバックともにエレガントな6ライトウインドーを採用し、パネル部分はエッジを効かせた。ダイナミックな造形のサイドビューに加え、フロントマスクも凛々しい。セダンはCピラーを寝かせ、クーペ風のシルエットとしている。5ドアはリアのオーバーハングを切り詰め、塊感を強調した。

 セダンのスリーサイズは、全長4650㎜、全幅1800㎜、全高1415㎜だ。5ドアモデルは全長が130㎜短く、背も20㎜高い。ホイールベースは、どちらも2700㎜となっている。

 新型シビックは新グローバルスモールプラットフォームを採用し、サスペンションも新設計だ。フロントはストラットを受け継いでいるが、リアにはマルチリンクをおごった。

 気になるパワーユニットは、ジェイドなどに積まれて好評の1.5ℓ直列4気筒DOHC直噴VTECターボを主役とする。2種類のチューニングがあり、セダンのL15B型ターボは173ps(127kW)/5500rpmのスペックだ。

 プレミアムガソリン指定となる5ドアモデルは182ps(134kW)/6000rpmの実力である。5ドアには、無段変速機のCVTに加え、6速MTを設定した。CVT搭載車の最大トルクは22.4kg-m(220Nm)/1700〜5500rpmだ。

 シビック タイプRは、2.0ℓのDOHC VTECエンジンにターボを組み合わせている。

■滑らかなエンジンとCVT。優れた静粛性

 新型ホンダ シビックの正式発表に先立ち、袖ヶ浦フォレストレースウェイでプロトタイプの試乗会が開催された。

 ステアリングを握ったのは、ダウンサイジングを図った1.5ℓのDOHC噴VTECターボ搭載車だ。このエンジンはシビックのユーザー層に合わせ、ファインチューニングを施している。

 そのため、滑らかなパワーフィールで、低回転から力強いトルクを発生した。アクセルを踏み込むと、気持ちよくパワーとトルクが盛り上がる。トルクバンドは驚くほど広い。セダンでも車重は1300kgを超えるが、サーキットでも余裕ある走りを披露した。ターボの弱点にあげられるターボラグも上手に抑え込んでいる。加速時の瞬発力は鋭い。

 ややパワーアップしたエンジンを積む5ドアモデルは、車重が重くなっていることもあり、サーキットでもパワーの違いを感じ取ることはできなかった。だが、パンチ力があり、高回転まで元気よさが持続する。トルクコンバーターの容量を増やしているCVTは、過酷なサーキット走行でも扱いやすい。ターボとの相性がよく、タイムラグの少ない軽快な加速を見せつけた。

 ただ、CVT特有のレスポンスの鈍さによる後追い感は今なお残っている。スポーツモードでもキレのよさは物足りない。だが、イージーにスポーティな走りを引き出すことができるのがCVTのいいところだ。

 また、バランスのいいエンジンは遮音が行き届いている。加速したときはそれなりに元気なエンジンサウンドを奏でるが、クルージング時は静かだ。CVTともにメカニカルノイズが抑えられている。ボディまわりやドアミラーからの風切り音も、常用域では耳につかなかった。

■上質な乗り心地とスポーティなハンドリング性能をもつ新型シビック

 新型シビックのハンドリングは軽やかだ。フォルクスワーゲン ゴルフやメルセデス・ベンツのAクラスなど、ヨーロッパのCセグメントのライバルと比べても走りの実力は負けていない。

 セダンでもスポーティな味付けで、サーキットを気持ちよく走ることができた。バリアブルレシオの電動パワーステアリングはスッキリとして正確な操舵フィールだ。ホンダ車に多い過敏な動きや曖昧なゾーンが少なく、重さも絶妙だから狙ったラインに乗せやすい。

 ステアリングを切った分だけ素直に曲がり、タイヤの接地フィールも秀逸である。タイトコーナーでもアンダーステアに手を焼くことがなく、スッとクルマが向きを変えた。

 ボディもシャシーは剛性が高く、新設計サスペンションの動きはしなやかだ。微小領域から滑らかにストロークし、路面の凹凸や段差を上手にいなす。フリクションが低く抑えられ、コーナーでは踏ん張りがきく。

 また、乗り心地も上質だ。セダンはオプション設定の215/50R17サイズのBBSトランザER33を履いていたが、快適性が高いだけでなくコントロールできる領域も広かった。

 5ドアモデルは235/40RR8インチのグッドイヤー・イーグルを履いている。セダンよりどっしり感があり、高速直進安定性はさらによくなった印象だ。

 だが、バランス感覚はセダンに一歩及ばないように感じた。セダンはホットにコーナーを攻めてもリアが落ち着いていて安心感がある。5ドアは、速いスピードではリアの振り出しが大きいように感じられ、感覚としてはオーバーステア気味の印象だ。

 また、シートもスポーティグレードとしては、サイドのサポートが甘く感じられる。強いGを感じると姿勢が乱れてしまうのが難点だ。

 新型シビックのキャビンは、後席でも満足出来る広さを確保していた。ラゲッジルームも不満のない広さだ。ヨーロッパ勢と比べても優位に立つ。だが、インパネやシートなど、インテリアの質感は今一歩にとどまる。

 また、自慢のエクステリアデザインも好き嫌いが分かれそうだ。開発者は若いユーザー層を獲得したい、と言っていた。デザインの親しみやすさはヨーロッパ勢のほうが分かりやすいように思う。いくつか気になる点はあるが、開発陣の本気度が伝わってくる新感覚のファミリーカーだ。

■新型ホンダ シビック スペック

■ホンダ シビック スペック

ボディサイズ㎜:全長4650×全幅1800×全高1415(セダン)、全長4520×全幅1800×全高1435(ハッチバック)
エンジン:直4 1.5Lターボ
最大出力ps/rpm:173/5500(セダン)、182/6000(ハッチバックCVT)、182/5500(ハッチバック6MT)
最大トルクNm/rpm:220/1700~5500(セダン&ハッチバクCVT)、240/1900~5000(ハッチバック6MT)
サスペンション:ストラット(前)/マルチリンク(後)

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