トヨタ アクア試乗記・評価 ヤリスに勝る部分とは?
CORISM / 2021年10月7日 18時18分
新型車なのに、今時、足踏み式パーキングブレーキとは・・・
2011年12月の発売から、10年が経過するのを前に、第2世代の新型トヨタ アクアが姿を現した。
ご存じのようにアクアは、エンジンにモーターを組み合わせたハイブリッド専用車だ。ヤリスの陰に隠れ、海外での知名度は低かった。だが、最短で100万台の国内販売記録を打ち立てるなど、日本では絶大な人気を誇っている。
ヤリスの販売が好調だから2代目アクアの登場はないだろう、と噂されていたが、この予想を覆して2代目アクアが登場した。
2代目新型アクアのエクステリアは、誰が見てもアクアと分かる明快なデザインで、フロントマクスも初代アクアに似ている。キープコンセプトだが、初代よりワンモーションフォルムを強調した。
また、ウインドーグラフィックも後方をキックアップさせて躍動感を演出している。
全長と全幅は、先代と全く同じだ。全長は4050㎜、全幅も1695㎜と、小型車サイズに抑え込んでいる。だが、ホイールベースは50㎜延ばされ、2600㎜になった。また、全高も30㎜高い1485㎜に引き上げられている。
大きく変わったのはインテリアだ。センターメーターを採用していたが、2代目アクアはオーソドックスなデザインとした。
ドライバーの前に大きなメーターを据え、中央には10.5インチモニターのディスプレイオーディオをセットした。スマートフォンのナビアプリを使えるから若い人たちにはウケるだろう。収納スペースも増えている。
また、シフトレバーはプリウスと同じようにシフトバイワイヤのエレクトロシフトマチックとした。ところが、パーキングブレーキもプリウスと同じ足踏み式としたのはちょっとガッカリ!! 最近では、軽自動車でも、電動パーキングブレーキを装備したモデルが増えてきているくらいだからだ。
ヤリスより広く、居心地のよい室内
2代目新型アクアのキャビンは、居心地がよくなっている。ヤリスと同じ骨格だが、アクアは6ウェイパワーシートを設定した。1モーターでちょっとタイムラグがあるから操作には慣れを必要とする。だが、細かく調整できるから、オーナーになれば便利な装備だと感じるだろう。
トップグレードのZは、合成皮革とストライプ柄のファブリックシートをオプション設定した。前席は長身の人でもベストポジションを取ることができ、前方の視界もいい。
Zにオプション設定されている、カラーヘッドアップディスプレイも使ってしまうと手放せなくなる。
2代目新型アクアの後席は、広く快適になった。ヤリスよりはるかに広く、日産ノートに迫る広さを確保した。
頭上空間は先代より余裕があるし、膝もと空間も広がった。また、足もとに組み込まれた100V/1500Wのアクセサリーコンセントやセンターアームレストも重宝する。
ただし、サイドウインドーの下端を跳ね上げ、ビラーも太いから斜め後方の視界は今一歩だ。開放感も薄い。
ラゲッジルームは、VDA法で300Lの容量である。開口部はそれほど大きくないし、容量もそれなりだが、フロアの高さを2段階に調整できるのは親切だ。上段に置けばフロアは平らになる。
世界初、バイポーラ型ニッケル水素電池の評価は?
パワートレインは、ヤリスと同じように1.5Lの直列3気筒エンジンにモーターを組み合わせた。
注目したいのは、駆動用車載電池に世界で初めてバイポーラ型ニッケル水素電池を採用したことである。従来型のニッケル水素電池と比べ、セルあたり出力は約1.5倍だ。
しかも、先代より1.4倍のセルを搭載しているから出力は約2倍に増えた。体積あたりのエネルギー密度や充放電能力は、ヤリスのリチウムイオン電池より上だというから驚く。
借り出したのは、前輪駆動のFF車だったが4WD車も設定している。首都高速を含め、100kmほど走ったが、ハイブリッドシステムの進化に驚かされた。
バイポーラ型ニッケル水素電池が、気持ちいい走りに大きく貢献しているようだ。ヤリスより応答レスポンスは鋭いように感じられ、モーター走行の領域も広い。
コーナーの出口でアクセルを踏み込むと、瞬時にモーターがアシストし、パワーとトルクが小気味よく立ち上がる。モーターの存在感が増し、丁寧なアクセルワークを心がけると70km/hを超えてもEV走行を行った。
2代目新型アクアの車重は、ヤリスより50kgほど重くなっているが、重さを感じさせない軽快なパワーフィールだ。3気筒エンジン特有の振動も小さくなっている。
また、トヨタのハイブリッド車として初めてワンペダルで走れる「快適ペダル」を採用した。これはパワー+モードで作動するが、ゴーストップの多い街中の走りで大いに重宝する。
素直なハンドリングと優れた静粛性
ドライバビリティはヤリスよりいいし、静粛性も一歩上のレベル。もう少し遮音材をおごってやれば、加速したときの透過音やタイヤノイズも耳障りではなくなるはずだ。停止ホールドできるようになったオートクルーズコントロールも高く評価したい。
ただ、足踏み式パーキングブレーキなので、信号待ちなどでブレーキを踏み続ける必要がないオートブレーキホールド機能はない。
2代目新型アクアのプラットフォームは、新世代のGA-Bが採用されている。FF車は、ストラットにトーションビームのサスペンションを組み合わせた。
当然、ハンドリング性能は驚くほど進化を遂げている。試乗車はオプション設定の195/55R16サイズのBSエコピアEP150を履いていた。それでも、ヤリスほど軽やかな走りを見せるわけではない。
だが、素直なハンドリングを身につけ、後輪の接地フィールも良好だ。電動パワーステアリングは軽くスッキリとした操舵フィールが好ましい。ロールしたときの収まりも速やかで、コントロールしやすかった。
スウィングバルブショックアブソーバーをおごったZは、乗り心地も穏やかである。荒れた路面を駆け抜けてもショックを上手に吸収し、55タイヤと思わせないほど快適だった。
燃費では、ヤリスにはかなわない
2代目新型アクアの燃費は、ヤリスに及ばない。だが、高速クルージングでも街中の走りでも25km/Lを超える良好な燃費を叩き出した。ゴーストップの多い街中の走りでは30km/Lを超えるなど、ノートやフィットより燃費は良好だ。
2代目新型アクアは、コンパクトカークラスのベンチマークになりうる実力を秘めていた。最後に登場したこともあり、コストパフォーマンスは驚くほど高い。
ボトムの「B」グレードは、200万円を切るプライスタグを付けた。トップグレードの「Z」は「G」より17万円高いが、装備内容を考えると買い得である。
ヤリスでは後席が狭いと感じている人や、デザインが子供っぽいと嘆いている人、5ナンバーサイズにこだわっている人には魅力的な1台になるだろう。
<レポート:片岡英明>
2代目新型トヨタ アクア価格
・B 2WD(FF) 1,980,000円/E-Four 2,178,000円
・X 2WD(FF) 2,090,000円/E-Four 2,288,000円
・G 2WD(FF) 2,230,000円/E-Four 2,428,000円
・Z 2WD(FF) 2,400,000円/E-Four 2,598,000円
2代目新型トヨタ アクア燃費、ボディサイズなどスペック
代表グレード トヨタ アクアZ(FF)
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) 4,050×1,695×1,485mm
ホイールベース[mm] 2,600
車両重量[kg] 1,130kg
総排気量[cc] 1,490cc
エンジン型式 M15A-FXE型 直列3気筒
エンジン最高出力[ps(kw)/rpm] 91(67)/5,500rpm
エンジン最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] 12.2(120)/3,800〜4,800rpm
モーター最高出力[ps(kw)] 80(59)
モーター最大トルク[kg-m(N・m)] 14.4(141)
バッテリー 種類/容量(Ah) ニッケル水素/5.0
ミッション 電気式無段変速機
最小回転半径[m] 5.2m
サスペンション前:後 マクファーソンストラット:トーションビーム
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