三菱アウトランダーPHEV試乗記・評価 環境性能の高いラグジュアリーSUVなのに、走りはスポーツカー!
CORISM / 2021年12月4日 19時41分
世界累計30万台に迫る人気SUVがアウトランダーPHEV
パジェロに代わって三菱SUV軍団のリーダーになっているのがアウトランダーだ。
日本では2005年に登場し、新しいファン層の獲得に成功している。その第2世代は、2013年にSUV世界初のプラグインハイブリッドEV(PHEV)を設定した。
i-MiEVで培ったEV技術と長い経験を持つ内燃機関の技術、これにランサーエボリューションやパジェロで磨き続けている4 WD技術を盛り込み、地球にやさしいだけでなく運転するのが楽しいSUVに仕立てたのである。
新たに加わったPHEVモデルは、日本に続いてオーストラリアやヨーロッパ、北米などに送り出された。
接してみると、充電できる4WDハイブリッド車の素晴らしさと楽しさがよく分かる。だからアウトランダーPHEVは累計30万台に迫る販売を記録し、次もPHEVに乗ってみたいと考える人が多かった。
そして登場から9年を経て、第2世代のPHEVを採用した新型アウトランダーがベールを脱いだ。
開発コンセプトは「威風堂々」。キャッチフレーズは「日常はEV、遠出はハイブリッド」としている。
大幅にモーター出力をアップした2代目アウトランダーPHEV
新型三菱アウトランダーPHEVのエクステリアは、力強さと存在感のある堂々とした佇まいを狙った。塊感が強く、遠くから見ても強い存在感を放っている。ダイナミックシールドを進化させたフロントマスクは、2019年の東京モーターショーに参考出品されたMI-TECHコンセプトの顔をモチーフにしたものだ。ちなみに全幅は1860㎜まで広げられた。
メカニズムは、先代アウトランダーPHEVの正常進化版である。モーターを前後に配し、4輪の駆動力と制動力を最適に制御するツインモーター4WDを採用するが、そのモーターの出力を向上させた。
フロントモーターは60kW/137N・m(82ps/14.0kg-m)から85kW/255N・m(116ps/26.0kg-m)に、リアモーターも70kW/195N・m(95ps/19.9kg-m)から100kW/195N・m(136ps/19.9kg-m)へと出力を高めている。
発電用のエンジンは4B12型と呼ばれる2359ccの直列4気筒DOHCだ。アトキンソンサイクル化するとともに、カムのプロフィールとバルブタイミングを制御するMIVEC機構を採用した。
低回転域で効率のよい発電と高負荷領域での燃費向上のために、新たにEGRクーラーやエキゾーストマニホールド一体シリンダーヘッドなどを採用している。
最高出力は98kW(133ps)/5000rpm、最大トルクは195N・m(20.3kg-m)/4300rpmに向上した。トータルのシステム出力は、分かりやすく書くと75psアップの252psだ。システムトルクも4.5Lのガソリンエンジン並みに増強されている。
200㎏車重増。しかし、よりパワフルでEV航続距離も87㎞に伸びた
サーキットでステアリングを握ったのは、新型三菱アウトランダーPHEVの最終プロトタイプだ。先代のアウトランダーより車重が200kgほど重くなっているので心配したが、予想を大きく上回るパワフルな走りを見せてくれた。
アクセルを踏み込んだ瞬間からパワーとトルクが一気に湧き上がり、強烈なGを感じながらスピードを上げていく。パンチのある加速を披露し、コーナーでスピードを落としてからの再加速も俊足だ。モーターの後押しによって立ち上がりは早い。エンジンも高回転の伸びが良くなった。
また、クルージング時は静粛性も高いレベルにある。床下に積む駆動用バッテリーの容量は13.8kWhから20kWへと増やされた。
だから、EVモードで走れる距離も大幅に伸びている。実際の使い方に近いWLTCモードでの1充電航続距離は83kmから87kmとなった。
冷却システムにヒートシンク構造を採用したこともあり、実走行で60km程度はEV走行できそうだ。
SUVなのにドリフトも可能な優れた走行性能
もう1つ特筆したいのは、イノベーティブペダルオペレーションモードの設定である。アクセルペダルのみで加減速できるから、コーナーの多いステージや下り坂で重宝するだろう。便利なパドル式の回生レベルセレクターは、操作するときの質感も高い。
プラットフォームは日産と共同開発したCNF-C/Dだ。サスペンションは、フロントがマクファーソンストラット、リアはマルチリンクである。
ツインモーター4WDをベースにした三菱独自の車両運動統合制御システム、S-AWCも進化させた。
これまでは、前後輪の駆動力配分と前輪左右のトルク配分を行なっていたブレーキAYCに、後輪左右のトルク配分を加えたのである。電動パワーステアリングもデュアルピニオン式とした。タイヤは18インチもあるが、主役は255/45R20だ。試乗車はブリヂストンのオールシーズンタイヤ、エコピアH/L422プラスを履いていた。
試乗コースはサーキットだったが、走らせると驚きの連続である。パワーステアリングはクイックな切れ味で、狙ったラインに狂いなく乗せることができた。その軽やかな走りは、背の高いランサーエボリューションといえる味わいだ。
ドライブモードは、7つのモードに増えている。とくに、スポーツモードに代えて登場したターマックモードは、しっかりした操舵フィールになり、身のこなしが軽やかだ。
コーナーの出口で早くアクセルを開けられるから狙ったラインに乗せやすかった。FR車のような気持ちよさで、意のままの走りに腕が上達した気になってしまう。
今回はオンロードだったが、他のモードも試してみた。興味深かったのはグラベルモードだ。オフロード向きのモードだが、速い走りではグッと内側に切れ込むオーバーステアの特性が顕著に現れる。ドリフト走行も可能で、振り回す楽しさは格別だ。
ハードに攻めると、ロールは許すものの腰砕けになることはない。速やかにロールは収まるし、サスペンションもグッと踏ん張ってくれる。運転していて、車体姿勢の変化をつかみやすいのも美点と言えるだろう。雪道では痛快な走りを楽しめるはずだ。
3列7人乗りも用意
新型三菱アウトランダーPHEVのインテリアは、広さを感じさせる洗練されたコーディネイトで、質感も高められている。ソフトパッドを多くの部分に採用し、ステッチも上手にあしらった。
インパネは、水平基調のシンプルなデザインだ。スッキリとまとめられ、ドライバーの前には12.3インチの大きなフルカラー液晶ディスプレイを組み込んでいる。
トップグレードの「P」はヘッドアップディスプレイも標準装備だ。シフトレバーの奥にあり、押しづらかったP(パーキング)レンジのスイッチがシフトレバーの上面に移され、操作性は大きく向上した。
ファンにとって朗報は、3列目のシートを持つ7人乗り仕様を設定し、主役の座に据えたことである。
3列目の空間はそれほど広くない。だが、いざという時には重宝するだろう。ちなみに「P」グレードのシート表皮は、3列目までブラックとサドルタンのセミアリニンレザー、「G」は人工皮革と合成皮革のコンビシート、ボトムで5人乗り仕様だけの「M」はファブリック素材だ。
3列目のシートを畳めば600L以上の荷室スペースが出現する。運転支援技術はナビリンク連動のマイパイロットを採用した。SOSコールの導入も嬉しい。
ライバルはRAV4 PHV?
最大のライバルは、価格帯と性格が近いトヨタRAV4 PHVだ。アウトランダーはトップグレードの「P」でも割安感があり、しかも7人が乗れる。
パワフルさとEV航続距離は、RAV4 PHVが一歩上を行く。また、シートヒーターに加え、夏場に快適なベンチレーションシートも装備する。
ただし、アウトランダーPHEVは200Vの普通充電だけでなく急速充電器を使うことが可能だ。
新型三菱アウトランダーPHEVは、渾身の力作。見た目は、高級感あるラグジュアリーSUV。実用性も高い。しかし、その走行性能は、まるでスポーツカー。SUVファンならずとも注目してほしい。
<レポート:片岡英明>
三菱アウトランダーPHEV価格
・M 5人乗り 4,621,100円
・G 5人乗り 4,904,900円
・G 7人乗り 4,996,200円
・P 7人乗り 5,320,700円
三菱アウトランダーPHEV燃費、スペックなど
・代表グレード:三菱アウトランダーPHEV Pグレード
・全長×全幅×全高 4710×1860×1745mm
・ホイールベース 2705mm
・トレッド前 / 後 15900/1600㎜
・最低地上高 200mm
・最小回転半径 5.5m
・タイヤサイズ 255/45R20
・車両重量 2110㎏
・乗車定員 5 名
・駆動方式 4WD
・モーター 搭載数 2 基 (フロント 1、リヤ 1)
・モーター最高出力 フロント:85kW、リヤ:100kW
・モーター最大トルク フロント:255N・m、リヤ:195N・m
・バッテリー
種類 リチウムイオン電池
総電圧 350V
総電力量 20kWh
・エンジン
4B12型 2.4L 4気筒 MIVEC ガソリンエンジン
最高出力98kw/5000rpm、最大トルク195N・m/4300rpm
・ハイブリッド燃料消費率(WLTCモード) 16.2㎞/L
・充電電力使用時走行距離 85.0km/L
・サスペンション形式(前:後) マクファーソンストラット:マルチリンク
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