レクサスNX試乗記・評価 高級車なのに、未だ純ガソリン車の設定は必要か?
CORISM / 2022年2月20日 12時12分
4つものパワーユニットを用意した新型レクサスNX
プレミアムなクロスオーバーSUVの先駆けとして、ブームに火をつけたのがレクサスRXだ。その下のポジションにレクサスは、魅力的なクロスオーバーSUVを仲間に加えた。それが2014年に登場した「レクサスNX」である。
発売されるや好調に販売を伸ばし、瞬く間にレクサスの柱の1つにのし上がった。このレクサスNXが21年秋に第2世代に生まれ変わり、パワートレインを4種類に増やしている。
新世代のGA-Kプラットフォームを採用し、これに2.5Lの直列4気筒DOHC純ガソリンエンジン、4WDのFスポーツには2.4LのDOHCターボ、主役を張る350hには2.5Lエンジンに電動モーターのハイブリッドTHS-Ⅱ、そしてレクサス初となるPHEV(プラグインハイブリッド)の450h+を設定した。
レクサスとしては初出しのメカニズムが多いし、バリエーションも豊富だ。レクサスの意気込みが伝わってくる。
速さは無いが、バランス重視のNX250
まずは、ベーシックなNX250バージョンLのステアリングを握った。2487ccのA25A-FKS型直列4気筒エンジンは、レギュラーガソリンを指定して最高出力148kW(201ps)/6600rpm、最大トルク241N・m(24.5kg-m)/4400rpmを発生する。燃費値は13.9㎞/L(FF、WLTCモード)と優秀だ。
同じエンジンを搭載するRAV4には、アイドリングストップ機能が装備されていない。NXでは、こうした選択をしなかったのは正解。同じトヨタという会社なのに、車種によってカーボンニュートラルへの考え方が異なる結果となっている。
先代では、6速だったATは新型NXでは最新の8速ATとなった。ロングストローク設計だが、高回転まで気持ちよく回り、実用域のトルクにも不満はない。静粛性が高く、振動も上手に抑え込んでいる。4WDでも活発な走りを楽しめる。
プラットフォームは、ハリアーやRAV4のGA-Kを発展させ、各部を補強して剛性を高めた最新作だ。サスペンションは、FF(前輪駆動)、4WDともにフロントがストラット、リアはダブルウイッシュボーンである。
先代のタイヤは18インチだったが、新型は235/50R20サイズのランフラットタイヤを履く。NX250はパワーに対しシャシー性能が優っており、ハンドリングは素直だ。可変ギア比を採用したパワーステアリングの採用もあり、思いのほかスポーティな味わいがある。
パワフルでフットワークもよいNX350
NX350は、4WDのFスポーツだけの設定とした。可変冷却システムを採用した新設計のT24A-FTS型2.4L 4気筒DOHC直噴ツインスクロールターボは、最高出力205kW(279ps)/6000rpm、最大トルク430N・m(43.8kg-m)/1700〜3600rpmを発生する。
ツインスクロールターボは低回転から過給が俊敏で、パンチのあるトルクが湧き出した。アクセルを踏み込むと3000回転あたりからパワー感がグッと増し、5000回転を超えても勢いは止まらない。気持ちいい伸び感を見せるが、加速していくときに直噴エンジンならではの燃焼音も少しだけ耳に入ってくる。
Fスポーツは減衰力可変サスペンションのAVSに加え、パフォーマンスダンパーも装備した。
4WDシステムは、RAV4で好評のダイナミックコントロール4WDをNXの車格と性格に合わせてチューニング。リアにはGRヤリスのデフユニットを組み込んだ。ブレーキは、フロント、リアともにベンチレーテッドディスクを採用する。
その走り味は、4WDであることを忘れさせる軽快で気持ちいいハンドリングだ。軽やかな身のこなしと冴えたフットワークに加え、驚くほど優れた追従性を披露した。
舵を与えると軽やかにクルマが向きを変え、路面からのインフォメーションも正確だ。優れた路面追従性を身につけ、荒れた路面でも狙ったラインに正確に乗せることができる。燃費はそれなりだろうが、ボトムのNX250系からの伸び代は驚くほど大きかった。
世界トップレベルの超低燃費性能を誇るNX350h
日本では主役の座にあるハイブリッド車は、2.5Lのガソリンエンジンにモーターの組み合わせだ。先代は300hだったが、最新モデルは350hを名乗っている。このことから分かるように大幅にポテンシャルを高めた。
エンジンは140kW/243N・m(190ps/24.8kg-m)を発生し、モーターの出力も134kW/270N・m(182ps/27.5kg-m)の高出力だ。
NX350h Fスポーツ(FF)の燃費は、20.9㎞/L(WLTCモード)と優秀。この超低燃費性能は、世界トップレベルの実力だ。
ハリアーより100kgほど重くなっているが、走りの軽快感は損なわれていない。先代よりモーターアシストの存在感が増し、アクセルを踏み込むと鋭いレスポンスとともにクルマがグッと前に出た。穏やかなアクセルワークを行えば、EV走行できる領域も広がっている。
アクセルを強く踏み込むとエンジンがかかるが、ノイズも耳障りではない。車格にふさわしい静粛性を実現している。重さを意識させない軽やかなフットワークと扱いやすい素直なハンドリングも好印象だ。
88㎞のEV航続距離を実現した450h+は、猛々しい走りも可能!
レクサス初のPHEV(プラグインハイブリッド)になる450h+は、4WDだけの設定で、フラッグシップとして登場した。
基本的にはRAV4のシステムを踏襲しているが、ほんの少し性能を高めている。4WDシステムは、モーター駆動のE-Fourで、積極的に後輪に駆動を配分する味付けとした。
電気が十分に蓄えられていれば、350hよりはるかにモーター走行の領域は広く、滑るように上質な走りを満喫できる。
パワフルさも一歩も二歩も上を行く。車重は2トンを超えているが、それを感じさせない猛々しい加速を見せつけた。もちろん流すような走りのときは穏やかでエレガントだ。
ハンドリングは、他のNXより重厚な雰囲気で大人の香りを漂わせている。ホットな走りでは、重量を意識させるロールを感じた。だが、バッテリーなどをフロア下に積み低重心化。E-Fourの制御も絶妙だから、破綻することなく狙ったラインに乗せることができる。20インチのランフラットタイヤも上手に履きこなし、しなやかな乗り味だ。
レクサスNXは、急速充電器に対応していない。この点は、賛否両論ある。だが、WLTCモードで88kmのEV航続距離を実現しているから、日常的な使用では、ほぼEVとして走れ、ほとんどガソリンを使うことがないだろう。
ライバルと目されるヨーロッパのクロスオーバーSUVと比べても秀でているところは多く、輸入車にはない魅力も数多く見つけられた。街中から雪道まで走りを楽しめるオールラウンダーで、ハイブリッド勢だけでなくターボ搭載のNX350の実力も侮れない。
<レポート:片岡英明>
レクサスNXは、誰もが認めるプレミアムブランド。しかも、カーボンニュートラルを目指す日本メーカーとして、さらにハイブリッド車先進国である日本で純ガソリンエンジンの設定が必要なのか? という疑問も感じる。
ただ、どのパワーユニットも非常に出来がよい。カーボンニュートラルというキーワードが無視できる人であれば、選択肢が豊富で、より自分好みのNXを選ぶことができる。
新型レクサスNX価格
・NX450h+ AWD “version L” 7,140,000円/“F SPORT” 7,380,000円
・NX350h FF 5,200,000円/AWD 5,470,000円
・NX350h “version L” FF 6,080,000/AWD 6,350,000円
・NX350h “F SPORT” FF 6,080,000円/AWD 6,350,000円
・NX350 “F SPORTF SPORT” AWD 5,990,000円
・NX250 FF 4,550,000円/AWD 4,820,000
・NX250 “version L” FF 5,430,000円/AWD 5,700,000円
新型レクサスNX燃費、ボディサイズなどスペック
代表車種:レクサス NX350h F SPORT(FF)
ボディサイズ:全長4660×全幅1865×全高1660mm
ホイールベース:2690mm
トレッド前/後:1605/1625mm
最小回転半径:5.8m
最低地上高:185mm
車両重量:1750kg
エンジン:A25A-FKS型 直列4気筒DOHC
総排気量:2487cc
最高出力:140kW(190ps)/6000rpm
最大トルク:243Nm/4300 – 4500rpm
フロントモーター最高出力/最大トルク:134kW(182ps)/270Nm
トランスミッション:電気式無段変速機
燃費:20.9㎞/L(WLTCモード)
サスペンション前/後:マクファーソンストラット/ダブルウィッシュボーン
ブレーキ:前後ベンチレーテッドディスク
タイヤ:前後235/50R20
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