ポルシェ タイカン クロスツーリスモ試乗記・評価 スポーツカーなのに色々使えるマルチなEV
CORISM / 2022年3月8日 18時18分
ガソリンエンジン車を凌駕する圧倒的な存在感
ポルシェ初のEV(電機自動車)であるタイカン。最初にタイカンの事を知った時は、スポーツカー・メーカーであるポルシェが作るEV、そして4ドアである事に現実感がなく、遠い未来の車だと思っていた。
しかし、大きく幅広く、そして低く構えた迫力あるタイカンを目の前にすると、その存在感に驚いた。と、同時にエンジン車を上回る高性能、高級感のあるインテリアはポルシェブランドに相応しく他メーカーのEVとは明らかに違っていた。
居住性・使い勝手を重視したスポーツEV
日本でタイカンの納車が始まって一年も経過しないうちに、派生バージョンが追加された。今回の試乗は、その“派生モデルであるタイカン クロスツーリスモだ。
クロスツーリスモは、タイカンのスタイルはそのままにルーフラインを変更し後部座席のヘッドルームを広く取り、大きなテールゲートを採用した。いわゆるシューティングブレークと呼ばれる、スタイル重視のワゴンである。
スタイル重視と言っても後部座席の居住性だけではなく、ラゲッジコンパートメント容量は1.200Lにまで拡大。車高も高めにして、ラフロードの走行も考慮している。EVでも多様性が備わった欲張りモデルである。
私的には、4ドアクーペスタイルである標準のタイカンのスタイルが好きだ。だが、リヤシートの居住性を重視する人や、アウトドアのレジャーを考えるならクロスツーリスモの方が良いだろう。
ポルシェとしては、バーゲンプライス?
タイカン クロスツーリスモは全長4,974mm、全幅1,967mm、全高1,409mm(タイカンは1,378mm)、ワゴンとしては最大級の大きさを誇る。アウディA7スポーツバックと、ほぼ同サイズだ。
足回りは、アダプティブエアサスペンションが標準採用され、試乗車にはオプションのオフロードデザインパッケージが装備され、最低地上高を最大3センチ増やす事が可能である。
タイカン クロスツーリスモは、全て四輪駆動モデルでフロントアスクル上に1基、リアアスクル上に1基の合計2基の電気モーターを搭載している。最高出力476PS、最高速度220km/h。スタートから100km/hまで5.1秒、航続距離は走行状況によりが400km前後。(ターボは最高出力680PS、最高速度は250km/h、0-100km/h 3.3秒)。車両価格は1341万円と高価ではあるが、ポルシェ+EV+フル4シーター+4輪駆動を考えればバーゲンプライスかもしれない。
しかしEVでは、必要性の高いシートヒーターでさえオプションであるのは物足りない。試乗車のオプション価格は500万円を軽くオーバーし、車両総額1,864万円になる。やはり、ポルシェは高嶺の花である。
EVでもポルシェらしさは健在なクロスツーリスモ
タイカン クロスツーリスモは、存在感あるエクステエリアだけでなくドアを開けた瞬間から、ポルシェの世界が広がっている。運転席に乗り込みドアを閉めると何とも言えない、車外とは少し空気が異なる、独特の高級感が漂っている。
また、その空気は、走らなくても他のポルシェ同様に車の高い剛性を感じ、走り出してもその期待を裏切らない。
運転席の目の前に広がるメーターは、16.8インチのフルディスプレイであるが911から続く丸型メーターの伝統あるアナログ的デザインを残している。助手席の前にこれもオプションであるが「パッセンジャーディスプレイ」があり、その表示を見ていると助手席にいても自分も運転に参加しているように感じる。
また、スポーティかつ近代的なインテリアは、数値以上に広く感じ、高級サルーンと言っても良い豊かな広がりに繫がっている。
タイカン クロスツーリスモは、アクセルペダルの右足に少し力を加えると無音のまま軽々と動き出す。試乗時、ポルシェのスタッフに見送られたが、その顔は心配そうな顔である。運転している私は、片手を上げて挨拶し笑顔でスタートしたが、大柄なボディ、慣れないEVはストレスで、内心は心配でいっぱいであった。
その心配も無用だった。数百メートルも走ると、直ぐに車との一体感が生まれ楽しみに変わった。遊びの少ない正確なステアリング、タイヤは19インチで太くて重いがガッチリした塊のようなボディに支えられた上質な乗り心地、高性能のブレーキもペダルから感じ取れる。
タイカン クロスツーリスモは、総容量93.4 kWhという大容量の大型バッテリーを床下に設置していて、低重心化。車重は2,245kgもあるのに、ハンドリングは軽やか。エアサスペンションは、ロールやピッチングは少なく車体はフラットな姿勢を保つ。
さらに、どのスピード域でも静かな室内、狙ったラインを涼しい顔でトレース出来る正確なステアリングを握っていると、自分でも気がつかないほど、いつのまにか高いスピードが出ている。スピードメーターの確認を頻繁にするか、アクティブクルーズコントロールのスイッチを入れて周囲の流れに身を任せないと運転免許証が何枚も必要となる。
高速道路の進入路では、アクセルペダルを踏み込むと十分に速い。だが、以前タイカン・ターボに試乗した時に味わった戦闘機の離陸のような凄い加速ではない。全体的に穏やかで乗りやすい。暴力的加速も良いが、日常になるならタイカン クロスツーリスモの方が多くの人が扱いやすいと感じるだろう。
時間、お金に余裕がある人にピッタリ?
時代はカーボンニュートラル。全自動車メーカーが、イッキにEVへと舵を切り始め、そのスピードは想像以上に速い。
今まで、モーターはパワー差はあってもエンジンの様に個性が無いかと考えていた、だが、タイカンはEVでもポルシェの一族だと感じた。車の挙動、乗り心地、加速・減速、そして室内の空気感さえ911の延長線上にある。SUVのカイエンがあり、そしてEVのタイカン クロスツーリスモもある。
航続距離はエアコンをガンガン使って、ポルシェらしく楽しんで運転すると300kmも走ることは厳しいかもしれない。だが、日帰りドライブなら充分に快適で楽しめる。タイカン クロスツーリスモを購入するような人は、ガレージに911など他のスポーツカーなどもあるだろう。長距離を走るならその車に乗れば良い。
時間に余裕があるか、複数台数を所有出来る人にはタイカンクロスツーリスモは期待を裏切らないだろう。ポルシェが好きで、全てに余裕がある人には特にお勧めをしたいモデルだ。
<レポート:丸山和敏>
ポルシェ タイカン4クロスツーリスモ価格
・タイカン4クロスツーリスモ 13,410,000 円
ポルシェ・タイカン4クロスツーリスモ航続距離、出力、ボディサイズなどスペック
ボディサイズ:4974×1967×1409mm
ホイールベース:2904mm
車重:2245kg(DIN)
駆動方式:4WD
システム最高出力:380PS(280kW)※オーバーブースト時476PS
バッテリー総容量: 93.4 kWh
バッテリー正味容量: 83.7 kWh
一充電走行距離:360km
充電時間(普通充電、11kW AC、0-100%充電状況の場合): 9.0 時間
充電時間(急速充電、50kW DC、0-80%充電): 93.0 分
最高速度: 220 km/h
0 - 100 km/h加速 (ローンチコントロール時) :5.1 秒
0 - 160 km/h加速 (ローンチコントロール時) :10.1 秒
0 - 200 km/h加速 (ローンチコントロール時) :15.6 秒
フレキシビリティ(80-120km/h) :2.6 秒
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