日産エクストレイル試乗記・評価 可変圧縮比エンジン+e-POWERの相性抜群!
CORISM / 2022年7月24日 12時33分
アウトランダーPHEVと共通のプラットフォームを採用
日産は、SUVのエクストレイルをフルモデルチェンジした。発売を2022年7月25日、FF(前輪駆動)車は秋頃を予定している。新型日産エクストレイルは、4世代目となる。
4代目新型エクストレイルでは、プラットフォーム(車台)を一新。ルノー、日産、三菱のアライアンスにより開発されたCMF-C/Dが採用された。このプラットフォームは、三菱アウトランダーPHEVと共通。ホイールベースも同じ2,705mmとなっている。
プラットフォームは、アウトランダーPHEVと同じでも外観や内装、パワーユニットなど、多くの部分は日産オリジナルとなっている。
VCターボで、静粛性が高く最適な発電が可能となったe-POWER
新型日産エクストレイルには、シリーズハイブリッドシステムであるe-POWERが採用されている。エンジンは、2.5Lクラスを搭載してくるとみられていたが、日産が採用したのは、発電用エンジンとして日産が世界で初めて量産化に成功した可変圧縮比エンジン1.5Lの「VCターボ」だ。圧縮比は、8~14まで自在に可変できる。
VCターボのメリットは、まず静粛性の向上。圧縮比を自在に制御し、低回転で発電するので静粛性が高くなる。また、もっとも熱効率がよい回転域を使うことで、より低燃費化も可能。
さらに、ドライバーがアクセルを深く踏み込んだ時など、モーター側からより大きな電力が必要とされた場合、瞬時に低圧縮で最大ブースト状態に移行。250Nmという最大トルク発電し、モーターが必要とする電力を瞬時に供給する。可変圧縮機能を上手く使うことで、走行シーンに最適な発電が行えるパワーユニットなのだ。
とにかくパワフルで静か!
そして、新型エクストレイルは、後輪に大出力モーターを設置した4WDであるe-4ORCEが採用された。フロントモーターの出力が150kW&330Nm、リヤが100kW&195Nmとなっている。リヤモーターは、軽EVのサクラやeKクロスEV、アウトランダーPHEVのリヤモーターと同じ。このあたりで、上手くコストダウンを図っている。
この前後2基のモーターと、左右のブレーキを統合制御するe-4ORCE。4輪の駆動力を最適化することで、雪道での走破性や山道でのハンドリング、色々なシーンで気持ちよく快適な走りを提供する。
この新型エクストレイルの走りは、刺激的な部分と上品さを併せ持つ。試乗場所は、日産のテストコース。アクセルとグッと踏み込むと、瞬時にモータートルクが立ち上がりシートバックに体を押し付けられるよう加速が始まる。
もちろん、全開加速中なのでエンジンも瞬時に始動。しかし、エンジンは前方遠くにいる感じで静粛性が高い。そんな静粛性を保ったまま、ドンドンと加速していく。風切り音も上手に抑えられていた。
加速フィールは、100㎞/hくらいまでならあっという間。130㎞/h前後から、やや加速感は頭打ちになるが、それまでは速い!
自然な制御が売りのe-4ORCE
そして、カーブを曲がるために、ブレーキング。先代エクストレイルハイブリッドより少し良くなったものの、ゴムを踏んでいるような頼りない感じが足裏から伝わってくる。ブレーキフィールは、未だ物足りなさを感じる。
ブレーキングしながら、ゆっくりとステアリングを切り始めると、穏やかに新型エクストレイルは向きを変える。とくに、スポーティな印象はないが自然で運転しやすい。
日産は、ハンドリングでもe-4ORCEは大きな役割を担っているとしている。確かに、減速時にフロントが大きく沈み込むことが少なく姿勢よく減速するのは分かった。
しかし、その他のカーブではe-4ORCEが効いているのか効いていないのか、あまり感じ取ることができなかった。エンジニアに聞くと「むしろ、制御が感じ取られるようではダメ」だそうだ。あくまで、自然な制御を目指したという。
ただ、滑りやすい道では、100kW&195Nmという大出力モーターが威力を発揮しそうだ。国産SUVでは、アウトランダーPHEVと同じ出力。アウトランダーPHEVでは、リヤタイヤを豪快にスライドさせて走ることも可能だった。恐らく、新型エクストレイルも同じようなテイストになっている可能性が高い。雪道などでの楽しい走りにも期待したい。
もっとヒラヒラ感が欲しい
新型エクストレイルは、乗り心地も良好。車体剛性は40%、サスペンション剛性は55%、ステアリング剛性は50%もアップした。この強固なボディによりサスペンションがしなやかに動く。柔らかめなサスペンションセッティングにより、ラグジュアリーSUV的な乗り心地になっていて快適だ。
ただ、大きく重いリチウムイオンバッテリーを床下に置き重心高が下がっているアウトランダーPHEVと比べると、クルマの動きがやや鈍い。
とくに、S字カーブでは、車体の傾きが大きく、クルマの姿勢が元に戻るまで時間がかかる。ヒラヒラとカーブを抜けていくような軽快感はない。高速域のカーブでも同様な印象を受けた。日産の最新モデルは、乗り心地重視系が多い。ただ、背の高いクルマであるならば、もう少し、締まったサスペンション設定でもよいのでは? と、感じた。
似ているようで似ていないフロントフェイス
新型日産エクストレイルのフロントフェイスデザインは、少しアウトランダーPHEVと共通する部分がある。大きな顔に大きなグリルの組み合わせで、上部に薄型ヘッドライトを装備。両車同じ流行りのデザイン手法がとられている。だからと言って、それほど似ていないところがポイント。ボディの骨格は同じなので、差別化するのに苦労した部分だろう。
リヤコンビネーションランプは、先代エクストレイルから継承されたようなデザイン。無垢のインナーレンズには、日本の伝統的な切子パターンからインスピレーションを得た精密でキラキラと光り輝く加工が施され、上質さを演出している。
インテリアは、広がり間のあるスッキリとしたインパネデザインとなった。操作系は、センターコンソール付近に集中して扱いやすさをアピールする。メーターは12.3インチのカラーディスプレイを装備した。また、各部にソフトパッドを装備。全体の質感も高めている。
日産エクストレイルのお勧めグレードは?
新型日産エクストレイルには、4WDのe-4ORCEの他にFF(前輪駆動)も用意されている。エクストレイルらしさを楽しみたいのなら、やはりe-4ORCEを選択したい。
グレードは、エントリーのS、中間のX、上級のGと分けられる。7人乗りが欲しいというのであれば、Xしか選択肢がない。
Sグレードは、装備がシンプル過ぎるので除外。XかGかという選択肢になる。予算に余裕があるのなら、ほぼフル装備状態のGがお勧め。
さらに、ボーズサウンドシステムやナッパレザー、パノラミックガラスルーフなどのオプション装備を付けたいのなら、Gがベースでないと装着できない。
Xだと、好みによって複数のオプションをプラスすることで、なっとくできる仕様にすることが可能。予算が厳しいのならXをベースに考えるとよい。必須オプションは、SOSコールやインテリジェントアラウンドビューモニター、12.3インチディスプレイ、運転席パワーシートといったところだ。
新型エクストレイルの価格設定は、なかなか絶妙。最上級グレードのG e-4ORCEの価格は約450万円。RAV4ハイブリッドと比べると、やや高価。しかし、ハリアーハイブリッドと比較すると、少し安価な設定。今後の販売状況が楽しみな1台だ。
<レポート:大岡智彦>
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日産エクストレイル価格
■e-4ORCE(4WD)
・S e-4ORCE 3,479,300円
・X e-4ORCE 3,799,400円
・G e-4ORCE 4,499,000円
・X e-4ORCE 3,930,300円(7人乗り)
■FF(前輪駆動)
・S 3,198,800円
・X 3,499,100円
・G 4,298,800円
日産エクストレイル 燃費、ボディサイズなどスペック
代表グレード:エクストレイルG e-4ORCE
ボディサイズ[mm]: 4,660×1,840×1,720
ホイールベース[mm]: 2,705
最低地上高[mm]: 185
最小回転半径[m]: 5.4
車両重量[kg]: 1,880
総排気量[cc]: 1,497
エンジン種類:KR15DDT型 直3 DOHCターボ
エンジン最高出力[kW/rpm]:106/4,400-5,000
エンジン最大トルク[N・m/rpm]: 250/2,400-4,000
フロントモーター最高出力[kw]: 150
フロントモーター最大トルク[N・m]:330
リヤモーター最高出力[kw]: 100
リヤモーター最大トルク[N・m]:195
WLTCモード燃費[km/l]: 18.4km/l
バッテリー 種類:リチウムイオン
サスペンション前/後:ストラット/マルチリンク
タイヤサイズ:235/55R19
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