スバル クロストレック試乗記・評価 キャラ変しきれないモーター*価格、燃費追記掲載
CORISM / 2022年12月1日 11時0分
XVからクロストレックへ、車名変更!
運転しやすいジャストサイズで、走りの実力も高いクロスオーバーSUVのスバルXVは、次期モデルから海外と同じように「クロストレック」を名乗ることになった。
9月15日にワールドプレミアを行い、その概要が発表されている。車名の「CROSS TREX」は、クロスオーバーとトレッキングを掛け合わせた造語だ。
スバルXVは2010年に誕生したインプレッサXVから数えると3世代が世に出た。今度の4代目は「クロストレック」と命名され、新たな4WDの歴史を紡いでいく。
ワールドプレミアから3週間後、幸運にも新型クロストレックの最終プロトタイプのステアリングを握るチャンスに恵まれた。クローズドコースでの制限付き試乗だ。だが、その実力の一端を垣間見ることができたので、ファーストインプレッションをお届けしよう。
地味な存在だったモーターに異変あり!
新型スバル クロストレックのパワーユニットは、伝統の水平対向4気筒DOHCを受け継いでいる。だが、1.6Lエンジンが姿を消し、2.0LのFB型筒内直接噴射エンジンにモーターを組み合わせたパラレル式マイルドハイブリッドの「e-BOXER」だけに絞り込まれた。
ロングストローク設計のFB型ボクサーエンジンは、1995ccの排気量で、パワースペックは最高出力107kW(145ps)/6000rpm、最大トルク188Nm(19.2kg-m)/4000rpmと発表されている。これに10kW/65Nm(13.6ps/6.6kg-m)を発生するモーターを加えているが、基本構成や数値はXVと変わらない。
だが、新型クロストレックの「e-BOXER」は、モーターアシストの特性を変え、無段変速機のリニアトロニックなどの制御にも改良のメスを入れた。
穏やかにスタートすると、モーターだけのEV走行が可能だ。そこからアクセルを踏み込むと瞬発力鋭い加速を見せ、一瞬のうちにクルマが軽くなったように感じる。XVよりモーターの存在感が増し、パワーとトルクが瞬時に立ち上がるからクルマがグッと前に出た。
さらに、キャラ変を望みたいモーター
新型クロストレックは、エンジンがかかったときの不快なショックと微振動も大幅に低減され、エンジンが一段と滑らかになったように感じられる。ドライバビリティと快適性の向上は大きな進化だ。気持ちいい走りを引き出したいならSIドライブでSモードをチョイスすればいい。
e-アクティブシフトコントロールが高回転をキープするように制御するし、コーナーの立ち上がりではモーターアシストを積極的に使って気持ちいい加速を演出してくれる。パドルシフトを駆使しての走りはとても楽しい。
CVTのリニアトロニックは、緻密な制御などによって再加速したときなども不快なラバーバンドフィールは感じられなくなった。電動ブレーキブースターの採用と相まって制動時のブレーキフィールも大幅によくなっている。
クルージング時の静粛性も向上するなど、ちょっと走っただけでも大きな進化を感じ取ることができた。XVと比べ、洗練度と操る楽しさは一歩上を行く。
もう少しモーターの存在感を強く感じられ、パンチ力も加われば、さらに魅力を増すだろう。
剛性感あふれるボディが生み出す、爽快なフットワーク
新型クロストレックで、パワートレイン以上に進化を感じ取れたのが、ハンドリングと乗り心地だ。スバルグローバルプラットフォームを進化させ、レヴォーグなどと同じようにフルインナーフレーム構造とした。
また、構造用接着剤を積極的に採用し、サスペンションメンバーやリアのサブフレームなどの取り付け部の締結力も強化している。サスペンションはフロントがストラット、リアはダブルウイッシュボーンだ。
タイヤは上級グレードが225/55R18サイズ、標準グレードが225/50R17サイズで、どちらも専用開発のオールシーズンタイヤを装着する。ブレーキは4輪ともベンチレーテッドディスクだ。
新型クロストレックで走り出してすぐに気がつくのが、切り初めからリニアで上質な操舵フィーリングである。
この気持ちいいハンドリングには、最新の2ピニオン電動パワーステアリングが大きく貢献しているようだ。感嘆したレヴォーグを凌駕する秀逸な出来栄えで、意のままにクルマが狙った方向に向きを変えた。
ボディもシャシーも剛性感たっぷりで、サスペンションも軽やかに動く。だから、タイトコーナーや連続するコーナーでも余裕を持って、しかも気持ちよく駆け抜けることができる。
オールシーズンタイヤなのに・・・
新型クロストレックのハンドリングとフットワークの洗練度は、ヨーロッパ車に勝るとも劣らない。コーナーでは軽やかにクルマが向きを変え、回り込んだコーナーでも狙ったラインに乗せやすい。ロールの抑え込みも上手だ。
しかも、オールシーズンタイヤで楽しく、正確なハンドリングを実現しているのだから恐れ入った。タイヤを上手に使いこなし、乗り心地がいいのも美点にあげられるだろう。
4輪駆動のAWDに、一日の長を感じたが、FF(前輪駆動)車も素直なハンドリングだ。滑りやすい路面でラフにアクセルを踏むと、トラクション能力に物足りなさを感じる場面もある。
だが、軽快な身のこなしを見せ、一般的な走行シーンで扱いやすかった。また、静粛性や乗り心地など、快適性も高いレベルにあるなど、コストパフォーマンスは高いように思われた。
新型クロストレックは2グレード構成?
新型クロストレックは、今の段階でグレード名を明らかにしていない。だが、標準グレードと上級グレードがあることは、試乗時に判明している。
外観の違いはオールシーズンタイヤとアルミホイールが17インチと18インチになることで、上級グレードにはグリルなどに加飾が加えられ、LEDコーナリングランプも装備する。最低地上高は、XVと同じように200㎜を確保した。悪路や雪道に乗り入れてもSUVと互角に走れるだけの実力を秘めているはずだ。
ボディサイズをほぼ維持しながらSUVらしいたくましさをアップ
新型クロストレックのエクステリアデザインは、誰が見てもXVの後継と分かる。正常進化だが、抑揚の効いたパネル面によって迫力と風格を増し、XVとは違うことがはっきりと分かる。
切れ長のヘッドライトとブラックアウトされたヘキサゴングリルはXVより凛々しい。精悍な顔立ちになり、サイドビューも張りが強くなっているなど、たくましく変貌した。
フェンダーなどに被せた樹脂製のクラッディングパネルも力強いデザインだ。リアビューではフォレスターのようにボクサーエンジンをイメージしたリアコンビネーションランプの造形が目を引く。
うれしいのは、新型クロストレックのボディサイズが変わっていないことである。全長は5㎜短くなり、全幅とホイールベースはXVから変わっていない。レス仕様も設定するが、ルーフレールは脚付きタイプに変更された。パーツを切り取っても遠くから強い存在感を放っているのが分かる。これが、XVと大きく違うところだ。
三つ目のアイサイト?
新型クロストレックのインテリアは、兄貴分のレヴォーグと似たテイストでまとめた。ドライバーの前に2つの大型メーターを並べ、その隣に縦型の11.6インチ大型モニターを備えたセンターインフォメーションディスプレイを配している。
センターコンソールの土手も高くなり、シフトレバーも操作しやすいなど、ドライバーオリエンテッドの雰囲気が強まった。質感はそれなりだが、メーターなどは見やすい。
大きな進化を遂げたのがシート。構造を一新し、シートレールを車体フレームに直付けしたフロントシートだ。仙骨を押さえて骨盤を支え、コーナリング時には頭の揺れを抑え込んでいる。
運転支援システムのアイサイトは、アイサイトXのようにハンズオフ機能はないが、性能的には大きく進化させた。
従来型の約2倍の画角(レヴォーグと同等)を誇る新型ステレオカメラに加え、2輪車や歩行者までも認識する広角の単眼カメラを中央に配置している。カメラは計3つになり、それぞれの得意な部分を生かし予防安全性能を高めている。今回は試す機会がなかったが、XVのアイサイトより高性能だ。
この新型クロストレックは11月上旬に日本で正式発表を行い、年明けから発売を開始すると言われている。新型クロストレックの販売価格は未定だが、標準グレードは戦略的にも300万円を切ってくるはずだ。正式発表が待ち遠しい。
<レポート:片岡英明>
*2022年12月1日価格追加
スバル クロストレック価格
・クロストレックTouring FF 2,662,000円/AWD 2,882,000円
・クロストレックLimited FF 3,069,000円/AWD 3,289,000円
スバル クロストレック燃費
・クロストレックFF燃費(WLTCモード):16.4㎞/L
・クロストレックAWD燃費(WLTCモード):15.8㎞/L
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新型スバル クロストレック燃費、ボディサイズなどスペック
代表グレード クロストレック上級グレード 4WD
全長×全幅×全高 mm 4,480×1,800×1,575
ホイールベース mm 2,670
トレッド(前/後) mm 1,560/1570
最低地上高 mm 200
車両重量 kg 1,560
エンジン型式 FB20
エンジンタイプ 水平対向4気筒 DOHC16バルブ
総排気量 ㏄ 1,995
最高出力 kW(ps)/rpm 107(145)/6,000
最大トルク N・m(kgm)/rpm 188(19.2)/4,000
モーター型式 MA1
モーター最高出力 kW(ps)/rpm 10(13.6)
モーター最大トルク N・m(kgm)/rpm 65(6.6)
電力用主電池 リチウムイオン電池
駆動方式 4輪駆動(4WD)
トランスミッション CVT
サスペンション 前:ストラット 後:ダブルウイッシュボーン
タイヤ 前後 225/55R18 オールシーズンタイヤ
最小回転半径 m 5.4
燃料消費率 WLTCモード ㎞/L 15.8
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